映画レビュー

【映画レビュー】三浦春馬の最後の主演作『天外者』彼の熱演に胸熱くする



(C) 2020 「五代友厚」製作委員会

こんなことを言ったら身も蓋も無いが、史実の映画はあまり好きではない。映画は虚構であればあるだけいい。この映画のように、偉大な人物の人生を描くには二時間では足りないからだ。
その偉業の中で、どのエピソードにスポットを当てるのか? その人物のどんな性格の側面を描くのかの抽出のセンスが問われる。例えばカンバーバッチ主演の『エジソンズ・ゲーム 』というエジソンを描いた映画があった。あの映画は発明王の、電力発明の部分は描いていない、エジソンの人間性すべてを描いていない。電力を大衆に売る権利闘争にスポットを当てた映画だった。だから、内容が濃かった。

恥ずかしながら私は日本史に疎いのだが、今回初めて知った三浦春馬演じる五代友厚という人物について、確かに日本の産業の近代化においては多大なる貢献をした偉大な人物なのだろうが、この映画だけでは、その功績の広さがゆえに、彼の人物像をじっくりはかり知るには至らなかった。



五代が利発そうな聡明で真のある人物であることは表面的に分かったが、彼がどんなに苦労したか、その血肉が通ったシーンは無かった気がする。人物を描かずに史実を手短にまとめる作業で終始してしまった感があり、大河ドラマのダイジェスト的な印象なのが残念だった。

ただ言えるのは、その中でも台詞に血肉を通わせる熱量でぶち当たった、三浦春馬の名演には圧倒されたということだ。今まで何度も彼の姿を画面を通じて見てきた、五代のように清廉潔白で愛情深い性格、まさしく五代役は三浦春馬あってこそ成り立つと感じた。『君に届け』などの王子様キャラから、このような重厚な配役までこなす稀なる存在。物凄い才能。30歳にして画面映えする美しさは変わらず、さらに役者としてもこれからの成長が垣間見れた強いまなざし。堂々たる台詞回し。これが最後の主演作というのが本当に悲しい。無念である。しかし、これだけの役者がいたんだという記録、彼が残した作品は語り継がなければならないという使命感を覚えた、本作が三浦春馬を語るに欠かせない作品であることは間違いない。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。



◆関連記事◆

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 【追悼】アメコミ界の巨匠スタン・リー逝去~映画カメオ出演を振り返る~
  2. 何故「バルス現象」は起きるのか?その理由は日本特有の国民性と風土にあった!
  3. 【大混戦】#TimesUp運動の影響で本年度オスカー主演男優賞はティモシー・シャ…
  4. ロッキンにサザン13年ぶりの降臨!昨年の桑田ソロに引き続きフェスに出る意味とは!…
  5. 【ライヴレポ】ワンオク初の東京ドーム公演で見た“世界基準のバンドの風格”に圧倒さ…

関連記事

  1. 映画レビュー

    『ハンターキラー 潜航せよ』もはや映画で米露が争う時代は過ぎた

    ロシアとアメリカの軍潜水艦が爆撃される事件が発生と聞けば「20…

  2. 映画レビュー

    『デッドプール2』ブラックな笑いと過激描写が続編で増し増しで強引に続編成立

    前作で度肝を抜かされたブラック・ユーモアが続編となって何割か増し増…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】帝一の國

    漫画原作というか邦画そのものに面白みを感じない自分が絶賛したい…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】劇場版 動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージ from …

    「ジュウオウジャーVSニンニンジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝…

  5. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ゴースト・イン・ザ・シェル

    囲碁の名人が人工知能に負けたというニュースを見て、人類はこのま…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ライブレポート

    METROCK 2017 1日目完レポ
  2. 邦楽

    CDJ1819で大量発生した「あいみょん地蔵」で垣間見えた若いマナー違反客の現実…
  3. 音楽

    PSY「江南スタイル」が持つYOUTUBE再生回数1位の記録を破ったのは!?【最…
  4. ニュース

    【歌姫から伝説へ】安室奈美恵に25年分の感謝を!さよなら、ありがとう安室ちゃん!…
  5. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 4日目ライヴレポート
PAGE TOP