ライブレポート

サンボマスター vs My Hair is Bad 男どアホウ夏の陣!日本ロック界最高潮のエモい対バンを観た!

© ROCKinNET.com

ロックバンドは熱い存在だ。時代を讃え、時には憂い、己の内たる秘めた思いを高らかに叫ぶ。世の中を音楽で本気で変えようとか、そんな大それた思想の有無は関係なく、それでも基本的な共通項としての根源テーマは「愛と平和」である。そんなメッセージを歌って叫んで、聴衆の心を突き動かすことが出来るロック・シンガーなんてそうそういない。誰もがギター持って「LOVE&PEACE!」って叫べばいいもんじゃない。情熱的な人間性が深く関わっているのだと思う。そんなバンドのパフォーマンスを観ると俺は涙を流すことがある。長いライヴ人生で、たった二回だけ。それが、サンボマスターとMy Hair is Badの二組である。容姿も、曲調も、キャリアも、年代も異なる、この二組の共通点は、正しく「熱さ」にある。そんな、両者が相見えて対バンするというのである。この歴史的共演を観ないわけにはいかない、ある種の義務感で足を運んだ。

異常だった今年の猛暑の暑さがまだ残る、2018年9月8日の新木場スタジオコースト。
サンボマスターがバンドライフのひとつとして続けている「男どアホウ サンボマスター2018~夏の選手権~」である。
結論から言えば、胸いっぱいの感動で満腹になった。
最強にアツくてエモかった。ロックが好きであることを肯定してくれるような、自分の存在自体を肯定してくれるような、そんな熱い対バンだった。

冒頭でサンボの木内(Dr)が開会宣言をする。日大ラグビー部の監督が選手に言った「やらなきゃ意味ないよ」や、日本ボクシング連盟会長の山根氏の「私は歴史の男」など立て続けに起こるスポーツ界の不祥事をネタに、幕を開ける。続いて始球式に登場したのは10-FEETのKOUICHI(Dr)の登場に会場はさらに湧く。後でサンボの山口(Vo/G)がちょっと出ただけで大歓声だと嫉妬めいた冗談を口にしていたが(笑)

Copyright © My Hair is Bad. All Rights Reserved.

先攻はMy Hair is Badが、後攻はサンボマスターが登場した。
両者ともに、セトリは毎度のものと差は無かったが、今日も心に満ち溢れる多幸感で涙が溢れた。マイヘアは、「アフターアワー」で幕を開け「ドラマみたいだ」「真赤」「元彼氏として」と人気曲を連投、そして今年、初のロッキンでの最大規模グラス・ステージでも披露されなかった「戦争を知らない大人たち」が聞けたのが良かった。晩夏に郷愁的な歌詞とメロディが何とも言えない哀愁を漂わせる。
何よりも、マイヘアにはサンボに対する並々ならぬ想いがあることも窺い知れた。椎木(Vo/G)が山口に「どうしたら、そんなカッコ良いバンドになれるか?」という問いに対してアドバイスを貰った時の言葉が忘れられないそうだ。内容は公言しなかったが、椎木の胸の内にしまった言葉には相応の激励があったに違いないと想像する。そんな若手のバンドが、こうしていてくれることに安堵と感謝しかない。

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椎木はこの日恒例の語りで「人工芝みたいな作られた偽物のバンドは要らない! 土臭い、本物になりたいんだ。」と叫んだ。ここ数年でロック・バンドの定義が変わってきたように思える。タイアップ付けて、ライヴハウスよりも地上波のテレビに積極的に出て、大きな箱を目指す。それを否定することはしないが、今日ここで観た二組のような、等身大の実直な人間的なロックではない。ギョーカイに作られたバンドと人気。虚構感が半端ないバンドがフェスの大半を占める。ポップなのかロックなのか人それぞれの定義だから構わないんだけど、よく分からないジャンルレスな音楽。それとは異なった、もし、本物のロックとは何か?と定義するとしたら、今日のこの日のライヴの光景が答えなんだと思った!

www.sambomaster.com/2017/

サンボはサンボで得意芸である超絶盛り上げライヴを展開した。いつどこで観ても、箱や動員の大きさに関係なく、ひたすらに熱い山口のバイタリティーは何処から来るのだろう? 脱帽である。「世界をかえさせておくれよ」「光のロック」と続き、懐かしい「青春狂騒曲」が珍しく聴けて(昨年2017年秋の武道館でもやったか)テンション激アゲである。と、否応にも盛り上がるお馴染みの曲を連投し、「ラブソング」では今年多かった自然災害への慰安と追悼の願いが込められていた気がする。いろんな感情が入り乱れて、心が浄化されたような気分だった。「何かに打ちのめされた時、思い出せよ。おめぇたちの居場所はそこじゃねえって。ここだって。また会おうな。また生きて会おうな!」と言い、「できっこないを やらなくちゃ」「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「輝きだして走ってく」とラストスパートで終盤を迎える。

アンコールでは自分の曲をやるよりも緊張すると、マイヘアの「いつか結婚しても」をカヴァー。緊張でうまくスタートできない山口に近藤(Ba)が「ドラムの木内君が合わせてくれるから大丈夫ですよ」と言ったようで、そのことに爆笑していた山口であったが、これが、もう、度肝を抜かれるとはこういうことのなのかって程の出来栄えだった。椎木がどうのってことではなく、完全にサンボマスターの曲になっていたし、よりエモくなっていた。オリジナルを凌駕した、こんな優れたカヴァーが聴けることなんて、そうそうない。

感動と興奮で疲労困憊の身体を引きづりながら岐路についた。ロックの未来を垣間見たような幸せが自分を覆っていた気がする。また、彼らに会おう。それが仕事や日々の困難を乗り越える糧でもいい、そう思えるような対バンを見せてくれた両者に感謝しかない。

 

●My Hair is Bad セットリスト
M-1 アフターアワー
M-2 熱狂を終え
M-3 運命
M-4 ドラマみたいだ
M-5 真赤
M-6 クリサンセマム
M-7 元彼氏として
M-8 フロムナウオン
M-9 戦争を知らない大人たち
M-10 いつか結婚しても
M-11 告白

●サンボマスター セットリスト
M-1 世界をかえさせておくれよ
M-2 光のロック
M-3 青春狂騒曲
M-4 ミラクルをキミとおこしたいんです
M-5 ロックンロール イズ ノットデッド
M-6 オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
M-7 そのぬくもりに用がある
M-8 ラブソング
M-9 YES
M-10 世界をかえさせておくれよ
M-11 できっこないを やらなくちゃ
M-12 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
M-13 輝きだして走ってく
En-1 いつか結婚しても [My Hair is Bad カヴァー]
En-2 可能性

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

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