犯罪映画とは言え『狼たちの午後』のようなアンチヒロイズムを描くわけでも無く、体制に争う風刺も無いので、どこに自分の感情を置きながら見たら良いか分からないまま終わった映画だった印象だ。
なんせ、主人公に感情移入できない。倹約的を是とする自分の倫理観にない行動をする、しょうもない男だけに、いちいち行動が危うく緊迫感が半端ない。ギャンブルで蔵建てた人間はいないんだぜと言いたかった。
いや、映画に出てくる人間が全員、道徳的で良心的なら、わざわざ映画にする必要は無い。そんな映画なんてヘドが出るほど退屈だろう。共感できないぶっ飛んでる人物を描いた映画の方が面白いに決まってる。けど、それって結局はどんなにぶっ飛んでても、その人間なりの”どうしようもない”生き様の美学みたいなものが無いと言動に説得力がないわけだ。人から担保で貰った高級時計を、すぐに質に入れて換金してしまうとか、バカじゃん? それのどこに美学があろうか? 自分で自分の首を絞めてる事にすら気付かないギャンブル依存の、どうしようもない人生を描いただけじゃ映画じゃ無い。
そんな、頭イッちゃってるオッサンの奇行を傍観する以上の楽しみ方?が無かった。それを哀れみの目で見たら良いのか、面白おかしく見たら良いのかも分からないまま。
『リービング・ラスベガス』でケビン・コスナーがアルコール依存症の男を演じた。酒で底辺まで墜ちた人間を迫真の演技で見せたが、それだけじゃなく、あの映画は、そんな駄目男を愛した女性を描くことで、危うい愛を描いていた。物語に芯があったから見るに堪え得た。けど、この映画には宝石を騙して売りつける以上のドラマが無いのだ。
コメディ王のアダム・サンドラー、シリアスな彼を見れる日を待ち望んでいたが、こういうんじゃない。確かに、従来のイメージは覆してたけど。アダムの怪演はオスカー級だったと思う。そこだけは及第点。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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