映画レビュー

【映画レビュー】『アンカット・ダイヤモンド』アダムの好演光るも、どうしようもない主人公に共感できず戸惑う・・・・・・




© Netflix


犯罪映画とは言え『狼たちの午後』のようなアンチヒロイズムを描くわけでも無く、体制に争う風刺も無いので、どこに自分の感情を置きながら見たら良いか分からないまま終わった映画だった印象だ。

なんせ、主人公に感情移入できない。倹約的を是とする自分の倫理観にない行動をする、しょうもない男だけに、いちいち行動が危うく緊迫感が半端ない。ギャンブルで蔵建てた人間はいないんだぜと言いたかった。



いや、映画に出てくる人間が全員、道徳的で良心的なら、わざわざ映画にする必要は無い。そんな映画なんてヘドが出るほど退屈だろう。共感できないぶっ飛んでる人物を描いた映画の方が面白いに決まってる。けど、それって結局はどんなにぶっ飛んでても、その人間なりの”どうしようもない”生き様の美学みたいなものが無いと言動に説得力がないわけだ。人から担保で貰った高級時計を、すぐに質に入れて換金してしまうとか、バカじゃん? それのどこに美学があろうか? 自分で自分の首を絞めてる事にすら気付かないギャンブル依存の、どうしようもない人生を描いただけじゃ映画じゃ無い。
そんな、頭イッちゃってるオッサンの奇行を傍観する以上の楽しみ方?が無かった。それを哀れみの目で見たら良いのか、面白おかしく見たら良いのかも分からないまま。
『リービング・ラスベガス』でケビン・コスナーがアルコール依存症の男を演じた。酒で底辺まで墜ちた人間を迫真の演技で見せたが、それだけじゃなく、あの映画は、そんな駄目男を愛した女性を描くことで、危うい愛を描いていた。物語に芯があったから見るに堪え得た。けど、この映画には宝石を騙して売りつける以上のドラマが無いのだ。

コメディ王のアダム・サンドラー、シリアスな彼を見れる日を待ち望んでいたが、こういうんじゃない。確かに、従来のイメージは覆してたけど。アダムの怪演はオスカー級だったと思う。そこだけは及第点。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。



◆関連記事◆




 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. ロック・イン・ジャパン2017 2日目ライヴレポート
  2. 「時代遅れのRock’nRoll Band」を聴く
  3. 【フジから若者が消えた?】フェスの“聖地”フジロックが中高年化している問題。若者…
  4. 2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
  5. パリピが日常悩んでる嫌なことって何?ストレス溜めない極意がULTRA JAPAN…

関連記事

  1. 映画レビュー

    先進国ニッポンの歪みを見事にえぐった今観るべき傑作『万引き家族』

    是枝監督作品は優しさに満ち溢れている。絆や愛情とは何かという根本テ…

  2. 映画レビュー

    『亜人』日本漫画の過激性という欠点をハリウッド的なアプローチで見事にカヴァー

    興味深かったのは、この映画には善悪が無かったことだ。不死身の体であ…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】キングコング:髑髏島の巨神

    映画を愛する映画馬鹿が振りかぶって作った、賛辞を持って「馬鹿だ…

  4. 映画レビュー

    『メリー・ポピンズ リターンズ』は果たして本当に必要な続編だったのだろうか?

    王者ディズニーに禁句なし。名作アニメの実写化すれば軒並みヒットさせ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. 映画レビュー

    勝手に選ぶ今年良かった映画TOP10 2017大発表!
  2. ハリウッド

    【実は悪事を働いていない?】『美女と野獣』の悪役ガストンから読み解く、強さを求め…
  3. 邦楽

    月曜から夜遊びでマツコから「非イケメン宣言」受けたMy Hair is Bad椎…
  4. ライブレポート

    ROCK IN JAPAN 2018 4日目(2018/08/12)ライブレポー…
  5. ハリウッド

    今夏最大の話題作『パワーレンジャー』に同性愛描写で再び波乱の予感
PAGE TOP