ハリウッド

世界各国で記録的ヒットの『ブラック・パンサー』は何故ここまでの現象になったかを勝手に分析!




© Marvel Studios 2018


アメリカのみならず世界各国で『スター・ウォーズ』並みにヒットを記録している、マーベル最新作『ブラック・パンサー』。遂に今週の木曜日から日本でも公開される。ワクワク感が半端ないので、いてもたってもいられず、今回は、この映画が何故ここまでヒットしたのか?について考察していきたい。

黒人俳優ばかりが主要人物に起用された超大作

まず、この映画の最大の特徴は、主人公のチャドウィック・ボーズマン(H・フォード共演の『42~世界を変えた男~』でアメリカで黒人初のメジャーリーガーを演じた)はじめ、主要キャラが全員黒人俳優であるということだ。今まで、黒人俳優が主にキャスティングされる映画といえば、反差別を謳った社会派ドラマや、コメディばかりだったが、こういったヒーローものの超大作では珍しいことだ。普遍的なヒロイズムを演じるのには、もはや人種を意識する時代ではないという潜在意識を植え付ける映画と位置付けると、重要な意味合いを持つ作品には間違いない。
黒人俳優という表現も、もはや時代錯誤であることも認知している。アフリカ系アメリカ人と記すべきではあるが、ここでは差別的意味合いは当然ないとし、このような表現で統一している。

オークランドという舞台設定の意味と「ブラックパンサー党」の歴史

特に、冒頭に出てくるアメリカの街がカリフォルニア州オークランドなのも、偶然ではない。オークランドは、1960年代に、反人種差別、革命的社会主義などをうたう「ブラックパンサー党」が結成された場所でもある。このブラックパンサー党は、武装によって黒人を差別から守ろうとした組織であり、当時のアメリカの体制から危険視されるようになり、主要党員はFBIや警察などから弾圧を受け、次第に弱体化していく。(『大統領の執事の涙』(2014)では主人公も運動に参加するが、あまりに暴力的で脱退する様が描かれていた)「非暴力」を掲げるキング牧師などの表向きな反差別運動とは異なり、マルコムX殺害から始まる、このブラックパンサー党の活動は、知られざる裏歴史とも言えよう。

[PR]

60年代の人種差別闘争下における共通意識

(C) Marvel Studios 2018


勘違いしてはいけないが、この政党と本作は何の関係性も無い。ただ、原作のコミックも、同時代の60年代に発表されたものであり、どこか時代の空気感によって、無意識的な共有思想は反映されているとは思う。ただ、まだ差別が横行していた時代に刊行されたコミックとしては、いかに画期的であったかということは垣間見れよう。それが、このような大作映画として世に放たれ、初週末の興行収入5位を記録するというのは隔世的で感慨深い。この画期的な試みこそが、単なるマーベル作品という認識を超えた、2018年の世界の人種差別に対する違和感のメタファーとして、ヒットと言う形に表れたのではないか。


トランプ政権と保守化が進む世界にうごめく違和感

このように、本作が世界的ヒットを記録したことの意味・・・・・・個人的には、トランプ政権下の反動と捉えている。大統領の資質や存在を問い、賛否の意見でアメリカが分裂しているまま、トランプ政権は発足から1年を過ぎた。依然として、トランプ大統領の差別的な態度は変わらず、白人警官による非武装な黒人への暴力が多発するなど、映画『デトロイト』鑑賞レビューでも述べたが、ニクソン政権時の人種間の亀裂同様のことが、50年後の現代でも起こっている。もちろん、それを黙認するほど、アメリカは腐ってはいない。人種差別に関しては、今まで以上に、人々の意識下に表れているのは確かである。#metoo運動や、LGBT結婚合法化など、大きく社会がうごめいている2018年に本作が公開され、ヒットを記録したことの意味は、保守化の進む世界各国の中で起きた、こうした大きな時流の変化の中で起きたリベラルな摩擦と捉えている。ここで意味するリベラルとは日本で捉えられいる某野党の指針とかではなく、多様性の甘受にニュアンスは近い。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。



[PR]





 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 半漁人の勝利!90回目のオスカー発表!
  2. 『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由
  3. ポール東京ドーム初日を観た!
  4. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…
  5. ELLEGARDEN復活ライヴを観る!10年の活動休止の先にあった変わらない尊さ…

関連記事

  1. アカデミー賞

    今年のオスカーの主役、実はマット・デイモンだったんじゃないか説

    司会がジミー・キンメルと聞けば、自ずと頭をよぎるのがマット…

  2. 日記

    映画『セッション』に関する菊地vs町山の喧嘩が下らなすぎる問題

    どうでもいいっつっちゃーどうでもいいのだが・・・俺自身…

  3. 映画

    主演映画の元ネタ女性から告訴も、今ジェニファー・ロペスが熱い!

    ハーフタイムショーで各方面から大喝采を浴びるま…

  4. ハリウッド

    2019年に最も話題になったツイートは「卵」?

    早いもので2019年も師走の中盤。映画や音楽などいろいろと話題…

  5. ハリウッド

    『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由

    誰だ、実写化を許したのはッ!『君の名は。』がハリウッドで実写化…

  6. ハリウッド

    ブラッド・ピットに会う

    ブラッド・ピット、この冬の超話題作『フューリー』を引っ提げ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 映画

    『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている
  2. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 4日目ライヴレポート
  3. ライブレポート

    【ライヴレポート】ポール・マッカートニー(2018/11/1@東京ドーム)
  4. 映画レビュー

    『アベンジャーズ/エンドゲーム』 映画史に残る大傑作にして娯楽の頂点だ!
  5. ハリウッド

    2018年も大活躍間違いなし“次世代イケメン俳優”を青田刈り!
PAGE TOP