映画レビュー

『メリー・ポピンズ リターンズ』は果たして本当に必要な続編だったのだろうか?

(C)2018 Disney Enterprises,Inc. All Rights Reserved


王者ディズニーに禁句なし。名作アニメの実写化すれば軒並みヒットさせるし、安定のマーベルもハズレ無し、スター・ウォーズ量産による価値下落の危惧さえ除けば、正しく絶好調だ。あの『くまのプーさん』さえも突拍子もない発想で実写化するなど、企画力もズバ抜けて冴えているように感じる。出す映画出す映画、驚きの連続なわけだが、まさか『メリーポピンズ』の続編をやるなんて誰が想像したことだろう。実に半世紀ぶりの続編である。よく解散したバンドが再結成したら当時の輝きを失っていてガッカリするなんてパターンがあるけど、続編を作るというのは、そういった危険性も含んでいる。何でもやりゃ~いいってもんでもない。

果たして、『メリーポピンズ』の続編は必要だったのか? アンドリュースのメリーポピンズは完璧過ぎた。ここに手を加える必要性は感じない。しかし、当然、半世紀も年月が経過していれば俳優の老化は真逃れない。80歳を超えるジュリー・アンドリュースに再び飛んだり跳ねたり踊れというのは酷な話。勇気を出して、オリジナルに見劣りせずにカヴァーしたエミリー・ブラントが見事だった。彼女は、半世紀前の元祖は一度しか観ていないと言っていたが、逆に元祖の呪縛に捉われない自由気ままさが良かったのかも知れない。気品溢れながらも、どこかお茶目なメリーポピンズ像を現代に再現させたのは見事だった。

[PR]


けど、この続編は前作から20年後の時代設定である。ここにわざわざ続編作る必要性を感じない。どうせなら、2010年代にメリーポピンズが現れたらどうなるかの方が見たかったからだ。彼女は現代をどう憂い、どう夢を語ったのかが見たかった。だから、続編というよりも、所詮は企画物レベルの印象を超えられなかったのは、そういう部分である。
『メリーポピンズ』という物語は、貧困が常に根本的な問題として描かれている。オリジナルも大恐慌時代が舞台設定だった。だからこそ、アニメーションと実写の融合で描かれるファンタジーの世界に居心地の良さを覚える。そこは踏襲されていたようだった。CGアニメ全盛において久々に手書きのディズニーアニメーションを観ることが出来た喜びもあった。

オリジナルの楽曲があまりに名曲揃いなことも、続編を作るべきではないと感じた理由だ。「Chim Chim Cher-ee」「A Spoon Full of Sugar」「Supercalifragilisticexpialidocious」など、誰しも耳にしたことがあるだろう人気曲に肩を並べるほど楽曲を浸透させなければならないが、どうもそれは達成できてないように感じた。無理もない。映画楽曲が浸透するなんて、そんな容易なことではないんだから。どんなに人気歌手でも過去の代表曲より新曲が浸透し辛くなってくるのと同じだ。今回の楽曲自体は素敵だと思ったが、それと浸透力は異なるし、何よりキャッチーさに欠ける気がした。大衆曲としてはオリジナルの『メリーポピンズ』は名曲が数多く存在するディズニー映画音楽の中でも群を抜いて優れた部類に入ると思う分、やはり厳しい。ミュージカルだけに結構な致命的だとも思った。今回は無難にまとまったと思われるが、触らぬ名作に祟りなしと肝に銘じてもいいカモなんて感じたけどね。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]






[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 【全曲レビュー】桑田佳祐の最新作『がらくた』が凄過ぎた!大衆音楽ここに極まり!
  2. RADWIMPS「HINOMARU」が物議!ポップ・ソングの右傾化に不自然さを感…
  3. ノエル兄貴「ロックが衰退したのは『フレンズ』が原因」と独自の分析を披露!
  4. 世界で大ヒット中の映画『スパイダーマン:ホームカミング』の主人公トム・ホランドの…
  5. 【大混戦】#TimesUp運動の影響で本年度オスカー主演男優賞はティモシー・シャ…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】帝一の國

    漫画原作というか邦画そのものに面白みを感じない自分が絶賛したい…

  2. 映画レビュー

    『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 』はジョジョ素人からすればサッパリだった

    少年ジャンプ全盛期に少年期を送ったので、ジョジョは正にドンピシャの…

  3. 映画レビュー

    『メアリと魔女の花』が駄目だった理由は完全に宮崎駿から解放されてなかったからだ

    アニメ映画というのは少なからず何か心に残るシーンと言うものがあろう…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ジェイソン・ボーン

    (C) Universal Picturesこの映画を作る意味…

  5. 映画レビュー

    帰宅部の高校生観て何が楽しいんだよ?虹色のはずなのに虹色じゃなかった『虹色デイズ』

    中川大志が主演じゃないという前提条件を把握してないと戸惑うことにな…

  6. 映画レビュー

    『怪盗グルーのミニオン大脱走』子供が笑えばOK!それ以上でも、それ以下でもない!

    こういう映画は子供が楽しめれば全部OKだと思っている。だから、各映…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ハリウッド

    『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  2. ニュース

    【フジから若者が消えた?】フェスの“聖地”フジロックが中高年化している問題。若者…
  3. ハリウッド

    【実は悪事を働いていない?】『美女と野獣』の悪役ガストンから読み解く、強さを求め…
  4. 邦楽

    毎年恒例の大発表!俺が勝手に選ぶ素晴らしき邦楽たち2016!
  5. ニュース

    アリアナ・グランデのライヴ会場で起こった爆発テロについて
PAGE TOP