映画レビュー

シリーズのある種の頂点に達した『クリード 炎の宿敵』に胸が熱くなる!

(C) 2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.


ロッキーが何故アカデミー賞に選ばれて映画史に燦然と輝く名作になったのか。今更ここで言わなくても、んなこと知っとるわい!と言われてしまうだろうが、ベトナム戦争の敗北によって自信を喪失した大国が再び威厳を取り戻し立ち上がらせるきっかけでもあったわけだ。おそらく当時のアメリカ人は自国の強さをロッキーに見立て、本物さながらの試合のシーンに身を乗り出し歓喜の雄叫びを上げんばかりに興奮したことだろう。
なんとなく、それが想像ついたのは、この映画を観て同じような、当時のアメリカ人の興奮に近いものを感じたからだ。思わず、拳を握りしめ身体を揺さぶりながら夢中になって見入ってしまった。特段シリーズのファンでもないのだが、何十年間に渡って脈々と紡がれてきたロッキーの一大叙事詩のバックグラウンドの壮大さが物語に奥深さを与えていた。これは単なるボクシング映画ではなく、親の遺恨を背負った宿命の物語だ。平然と見れるわけがない。様々な想いが頭の中を駆け巡り、胸が熱くなった。

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ロッキーは続編が続けば続くだけ、ソ連の戦闘サイボーグが出てきたりと、なんだか少年ジャンプのような世界観になってリアリティを失って行った(特に四作目なんか酷いもんだった)。しかし、正当な続シリーズである『クリード』によって人間ドラマとして感情の豊かさや、人間らしさを取り戻した感があり、続シリーズの二作目の本作で、これまで残されてきたシリーズの諸問題が誤魔化しなく解決され、真の決着が付いたような腑に落ちる大団円も感じた。感動もひとしおだ。

今更スタローンの演技下手を指摘するなど野暮ったらしく、逆にロッキーの棒読み台詞はもはや味であり、あれでこそロッキーなんだと言わんばかりだ。主人公の黒人青年(『ブラック・パンサー』での好演も記憶に新しいマイケル・B・ジョーダン)が婚約者にプロポーズする際に、ロッキーがエイドリアンに求婚した時どうしたかを尋ねるものの、「大昔のことだ」と言うロッキーの言葉にはそれこそ人生の重みすら感じてしまった。このような、ちょっとした台詞の背景に壮大な時間の経過と幾多の物語があるものだと感じる。ロッキーも年を取った。それだけ年月が経ったのだ。やはり時と言うのは偉大で普及の名作を映画の最新作で語り継いでいくことの重みを感じずにはいられなかった。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

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