映画レビュー

人種差別の本質を鋭くエグるリー監督最高傑作『ブラック・クランズマン』

(C) 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.


時たま衝撃を得る映画を観ることがある。自分が理解していると勘違いしていた事柄の、そうではなかった事実が暴かれる時だ。『グリーンブック』が今年のアカデミー賞を獲得した時に、黒人への寛容的なメッセージが込められた映画への評価が嬉しいと呑気に言っていた自分を恥じたい。そんな悠長なことを言ってられない現実がそこにはあったからだ。

浮世離れした設定のみに興味津々で観ると脳天撃たれるだろう。そんな柔い映画ではないから。主人公の黒人警官がSWで暗黒面に落ちたユダヤ人警官とバディを組んで白人に成りすましてKKKに潜入捜査を行う。いつ正体が判明しないか、終始そのサスペンスに緊張が走る。コミカルな描写もあり、その中で黒人の発音の特徴、白人の発音の特徴まで触れる。我々には理解しがたい微小な違いであるが人種間というのは、こんな僅かな差が成立すると思うと本当に複雑なんだなと改めて感じる。

KKKは「アメリカファースト」と幾度となく叫んでいた。それが正義と揺るがんばかりに。劇中で引用される1915年公開の無声映画『國民の創生』で描かれていることそのもの。《勤勉な黒人と、彼らを雇う白人は上手く調和してたのに、一部の過激な黒人のせいでアメリカが分断されてしまった。それを統一しようじゃないかという思想》それが「アメリカファースト」。残念ながら、こんなとんでもない思想を時の大統領も掲げ、政策にもなっている・・・・・・表向きはここまで。実際は、そのためなら、黒人をぶん殴っても何しても構わない。自分たちの正義を掲げるためだからとなる。

劇中、『國民の創生』を観ながら黒人への嫌悪感を露わにするKKKの異常性に恐怖を感じた。醜悪さそのものだった。同時に、「バナナ・ボート」でも知られる大御所ハリー・ベラフォンテが旧友がリンチされたエピソードを語るシーンがクロスされる。ド直球なメッセージ性に容赦は無かった。何も槍玉に挙げるつもりは無いのだが『グリーンブック』のような、レストランに立ち入り禁止されるレベルの描き方では無い。存在そのものの否定以上の憎悪の描写に、人種差別の本質を肌で感じることが出来たのだ。差別されている側にしか理解できない物事の側面の描き方であると感じる。人間ってのは、ここまで醜く成り得るのかと、不愉快極まりなかった。

[PR]


とにかく、リー監督の熱量が半端なかった。一貫して黒人差別への怒りを映画を介して主張し続けてきた監督の集大成的作品と言っても過言ではない。
何故キャリア数十年にして今このような高みに来れたのか、紛れも無く今のアメリカが過剰にまで差別が横行?暴走しているからだ。今こそ怒りを表明するタイミングだったからだ。
映画でも、その怒りは最後に爆発する。潜入捜査が成功し、黒人警官がKKKのお偉方を欺いたカタルシスでスカッとした気持ちで幕を閉じたと思いきや、その直後に実際の映像で黒人デモの中に車が突っ込んでいく様子や、KKKが過激化する様子が映し出される。百聞は一見にしかずだ。ボディーブローを喰らったように、事の深刻さに唖然とする。

ハリウッドが本気で人種差別を問題視したいのならば、この映画にこそ作品賞を与えるべきだったと思う。何も解決されていないのだから。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]



 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
  2. 今年2018年のサマソニがガラガラの異常事態!~その原因を探ってみた
  3. 【大混戦】#TimesUp運動の影響で本年度オスカー主演男優賞はティモシー・シャ…
  4. 『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  5. アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!

関連記事

  1. 映画レビュー

    『君の膵臓をたべたい』が駄目な理由は物語構築上で最もしてはいけない禁句を犯しているから

    日本中に悲恋ブームを巻き起こしたセカチュー。難病モノとカテゴラ…

  2. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】モアナと伝説の海

    冒険活劇として一級品だった。まるで『マッドマックス 怒りのデスロー…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】クリミナル 2人の記憶を持つ男

    スーパーマンの父親役から目立った作品にはご無沙汰だったケヴィン…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】日本で一番悪い奴ら

    (C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会綾野剛の圧倒的勝…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 日記

    アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  2. 邦楽

    松任谷由実「恋人がサンタクロース」がクリスマスは恋人と過ごす日という社会的呪縛を…
  3. グラミー賞

    今年のグラミー賞で明確になった黒人音楽(RAP/HIPHOP)劣勢の事実と、ブル…
  4. ニュース

    またもコンサート会場が狙われる「米国史上最悪の銃乱射事件」から音楽ライヴ運営の将…
  5. ニュース

    遂にNYタイムズ誌まで?ガキ使の黒塗りメイク批判は行き過ぎだと思う理由!
PAGE TOP