ノエル・ギャラガーやBECKといったギター・ロックの大御所がヘッドライナーを務め、近年EDM集会になっていたが久々にロック・フェスとしての威厳を取り戻した感があった今年のサマソニ。ノエルがオアシスとして出演して以来13年ぶりのサマソニ凱旋で素晴らしいアクトだったのも記憶に新しい。東京会場の初日に参加したのだが、個人的には凄く楽しかったし、いい音楽体験が出来たと思っているのだけども、とにかく人がいなかった。もう快適で快適で。食事もトイレも並ばない。人混みに押し潰されることもない。到着後、何となく例年と比べて空いてるなという感覚が現地にいても、肌で分かるレベルではあったんだけど、後に投稿された下記の写真を見て唖然とする。
今年のサマソニ東京会場2日目ヘッドライナーのアンコール前の光景。人いなさ過ぎ!酷暑が悪いのか?BECKに興味が無いのか?とにかくフェス創生期から見てきた者からすると、あまりにショッキングで異様な光景。 pic.twitter.com/iApiRoIGcq
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) 2018年9月3日
2日目のヘッドライナーであるBECKのアンコール前の光景だ。ガラガラどころの騒ぎではない。撤収スタッフの方が多いんじゃないかというレベルの異常な空き様。確かにBECKはキャリアも長い。けど、ここまで興味を持たれないアーティストであろうか? 2015年の第57回グラミー賞授賞式で最優秀アルバム賞をBECKが獲ったことがあった。カニエ・ウエストが壇上に上がり何も言わずに降りるハプニングがあったが、この時に、アメリカのteenの間で「BECKって誰?」という声があったことも話題となったのを覚えている。要はEDMブームも沈静化し今のアメリカで流行しているのはラップに他ならなく、それらが認められないことの痛烈な批判なのかも知れないけど、ロックが低迷しBECK自身のキャリアにおいても昔程のヒット曲が無いのは事実で、知名度が低いのも分からなくもなく、知らないなんてのも冗談抜きに本気なのかもしれない。それが洋楽低迷の日本なら尚更のことだ。
けど、自分なんかはサマソニと言えば夏の風物詩になっていて。それこそ、続く限りは爺になっても来たいと思っているフェスだし。先日発表された「世界のフェス・ランキング」でも、3位のフジロックと、(70位くらいであったが)サマソニしかランクインはされなかったことを考えれば、日本が世界に誇れる音楽フェスであると言えよう。それにしては、世界的アーティストの顔に泥を塗るレベルで人が集まらなかった。
何故だろうか?
暑かったからか?
今年は酷暑だった。それが都市型フェスでもあるサマソニを遠ざける要因になったか。多少は気温も関係してくるだろうが、なんせサマソニは幕張メッセでも開催されるので屋内ステージにいれば解決する。事実、個人的には、そうやって夕暮れまで屋内で過ごす年もあった。
チケットの値段が高い?
今年のチケット代は16,000円とサマソニとしては通常価格だった。特別に高額化されてはいない。昨年は17,500円だったから、むしろ安くなっているのだ。これも違う。
最近の若者は洋楽を聞かないから?
これは業界全体を取り囲む傾向としてはあろう。しかし、洋楽低迷とは言えど、洋楽ファンは相応に存在はしている。今年は、ブルーノ・マーズや、ハリー・スタイルズ、チャーリー・プースなどが来日してはチケットが即日ソールド・アウトしている。アーティストにも因ろうが、洋楽自体の興味が薄れているとは思えない。
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やはり、メンツの需要が無かった。これしか考えられない。
サマソニと言えば、聖地のフジロック、大衆食堂のサマソニ、見本市のロッキンと言われるように、多ジャンルのアーティストを呼んでナンボの世界。ある時は少女時代が来たり、ある時はTOKIOが来たり、創生当初とは違ってロックに捉われなくなっていき、ジャンルレスなイベントと化した。そして、2015年のZEDDのパフォーマンスが好評を呼んだことで、その後のサマソニの様相が変わった。ちょうど、日本にULTRAが初上陸したこともあり、EDM熱が上がっていた頃だ。
ZEDDがすこぶる盛り上がったことで、その後、必ずDJ枠が設けられるようになり、それから4年、サマソニがEDM集会の側面を持った。昨年はカルヴィン・ハリスがヘッドライナーとして呼ばれ、今年もMarshmelloが出演している。EDMやポップを好む客層が定着したために、今年のロック界の大御所のブッキングと、需要と供給のバランスが崩れたのだ。これは、サマソニ自身が陥った決定的なミスなのである。誰が来ても客は集まるが、実はそうじゃなかったのだ。
これを実証しようと思う。
まずは、サマソニの総動員数の推移を見てみたい。
SUMMER SONIC 観客動員数
開催年 合計動員数 東京会場(各日) 大阪会場(各日)
2000年 68,000
2001年 101,000
2002年 136,000
2003年 137,000
2004年 155,000(5ステージ制に)
2005年 166,000(7ステージ制になりほぼ現在の規模に)
2006年 180,000
2007年 200,000
2008年 190,000
2009年 246,000(10周年で3日間開催)
2010年 158,000
2011年 205,000 60,000/60,000 45,000/40,000
2012年 203,000 60,000/60,000 83,000(2日間)
2013年 230,000 65,000/65,000 50,000/50,000
2014年 165,000 55,000/50,000 30,000/30,000
2015年 182,000 58,000/52,000 35,000/37,000
2016年 194,000 55,000/65,000 38,000/36,000
2017年 150,000 95,000(2日間) 55,000(2日間)
2018年 138,000 40,000/40,000 30,000/30,000
上記の近10年間をグラフ化してみる。
10周年で3日開催した2009年をピークに減っては来ている。洋楽フェスが苦戦している傾向にあると報じられたのは、この頃からだ。翌年はロッキンと日程が丸被りになり競合してしまい大幅減。(そもそもがサマソニ側が野球関係で会場を借りれずにロッキンと日程を被せざるに至ったこと、フジ、サマソニ、ロッキンの三者連名で発表されている。)それから2012年~2014年は順当な推移を見せるも、2014以降を境に動員数は正直あまり伸びていないことが一目瞭然に分かる。
2013年はQUEENが来た年だ。伝説のバンドを観るためにご高齢の方も多く、非常に幅広い観客が集まっていた年だった気がする。その年は、別日にミスチルも出てたことでチケットが一気に売り捌かれた。同時にミスチル地蔵問題も起きたが。(ミスチル出番前のスマパンのビリーが「前座を見に来てくれてありがとう」と嫌味を言ったくらいにスタジアムをミスチルファンが占拠する事態となった。)ただ、それ以降、洋楽優遇のサマソニが、日本勢も呼びそれなりの順番に出番を置くなど、ちょっとした変化が見られるようになる。2016年のサカナクションは、トム・ヨークの申し出があったとは言え、ヘッドライナーであるレディオヘッド前に登場した。
それ以降は、微増減をしながら、2018年のサマソニ19年の歴史で史上5番目に低い動員となった。しかも、下位の4年は、まだイベントが定着せず、ステージ数も今の半数の初回~4回目であるから、実質上の最下位なのである。
では、本当にサマソニは誰が来ても客が集まるわけではないのか? ヘッドライナーを基準に検討したいと思う。まず、ここ10年のサマソニでヘッドライナーを務めたアーティストの人気度を調べたいと思う。何を以って人気があると決めつけるのか? これは諸説あるだろうが、ここではYOUTUBEでの楽曲再生回数の平均値を使いたい。日本だけの数値ではないにせよ、世界の成績は日本の洋楽ファンにも当てはまると強引に定義づけ、あくまで傾向を推し量るものとして参照にしいたい。ただ、結構ザックリとした平均数値なので、まあまあ適当に見て頂きたい。黄色はロック勢だ
こう見ると、まずはロック勢が多いものの、やはり他のジャンルのアーティストと比べると人気度が低い。ザ・ヴァーヴとか、マイ・ケミカル・ロマンスをヘッドライナーにする冒険もする一方で、レッチリ、グリーン・デイ、レディオヘッド、QUEENなど人気度の高い手堅いロック・バンドも呼んでいるのは流石である。にも、関わらず、徐々に再生回数が低くなっていってる傾向にあることが分かる。やはり2013年頃から世界的な人気度や、インパクトの低いヘッドライナーになっていってるのが分かる。毎年サマソニに行き各々のステージを観ている者としては、素晴らしいパフォーマンスであることは確証済ではあるのだけれども。
この再生回数を各々の年の二組の大体の平均値として折れ線グラフ化し、動員推移のグラフと照らし合わせてみると・・・・・
2013年・2017年だけ特殊ではあるものの(2013年は、おそらくヘッドライナー以外の要因があったからで間違いなくミスチル効果だと思う。)、遠からずもピッタリではないが、結構、人気度と動員が比例しているのが見て分かるではないか?
結論としては、サマソニは毎年年明けに発表されるヘッドライナーの人気度によって、その年の動員が大きく左右されるということである。どんなミュージシャンが来ても客が来るわけではない。すなはち、常連客が少なくなっているのだ。ここまで長年シーンをリードしながらやってきたフェスとしては「まさかの」現象なのである。
じゃあ、誰を呼んだらいいわけ?
サマソニは来年20周年である。3日間開催が決定しているが、今年の様子を見ていると不安材料が残るのも無理はない。2020年は東京五輪開催に伴い、サマソニ開催を見送るとの噂もあるし(オーガナイザーの清水氏も言及している)、その後にサマソニが行われないという聞き捨てならない噂まである。だからこそ、来年は絶対に成功しなければならない!
そこで提案したいのは
ジャスティン・ビーバー(そろそろ来日ドタキャンの償いをさせる)
アリアナ・グランデ(前回の出演時も人気だったし今や時代のディーヴァ)
ブルーノ・マーズ(ただ、来日公演で馬鹿なモデルがブルーノを背にインスタ撮って激怒)
ハリー・スタイルズ(まだ出演したことないし客を呼べそうだし)
サザンオールスターズ級の手堅い邦楽勢(ミスチル効果も絶大だったし)
ELLEGARDEN(今年の復活ライヴもクリエイティブマンが主催だったから)
洋楽は時流に従ってポップやR&B勢に頼ってしまってもいいかも知れない。あくまで優先はイベントの成功。来年は、日本が世界に誇るサマソニの復活を願ってやまない。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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