年の瀬ともなれば年末年始映画の話題で盛り上がり(今年は超大作が不作な気もする)映画館で流れる予告も来年公開のものばかりになる。映画界は早くも2019年に的を絞って動く中、オスカーの前哨戦(なんて今時言う人いるのかな?)第76回ゴールデン・グローブ賞のノミネートが発表された。
今年の目玉は何と言っても作品賞候補になった『ブラックパンサー』だろう。漫画原作のヒーロー映画としては異例中の異例となるノミネートである。黒人差別(白人警官による理不尽な暴力に端を発す)が社会的なトピックスになり、差別意識改革が高らかに叫ばれ、白人俳優至上主義なハリウッドに多様性を求める声が大きくなっていった矢先に、世界的な興行収入も特大ヒットとなり賞レースでも無視できない存在となった。もちろん、これまで非社会派である娯楽作が賞レースを勝ち取るなんて夢物語であったが、09年に映画としても高評価の『ダークナイト』が各種賞の候補から漏れたことに因る、偏った選考に疑問が噴出しはじめ、映画賞自体の権威を揺るがす事態に発展した経緯も大きく影響していると思う。
しかし、『ブラックパンサー』は抑圧されたブラック・パワー解放の象徴としての作品であり、そんな脱黒人差別という世相も反映した革新的社会派としての側面も持っているので十分に作品賞に値するとも思っている。ディズニーが『ブラックパンサー』のオスカー獲りに本腰入れて動いたという報道も8月にはされていたので可能性としては十分に大きい。
そして多様性と言うことで上げれば『クレイジー・リッチ!』のノミネートも無視できない。『ブラックパンサー』が映画史上初の黒人俳優中心のハリウッド大作だったのに対し、『クレイジー・リッチ!』は初のアジア系俳優のみの映画として北米で異例とも言える大成功を収めた。ダイバーシティ(多様性)が2018年のアメリカを象徴するワードに変わりはないだけに、この両作品の行方には注目したい。
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日本でも大ヒットを記録している『ボヘミアン・ラプソディ』や、公開が待たれる『アリー/スター誕生』など音楽がテーマの映画もノミネートされ、例年に比べて日本での公開済みだったり認知度の高い作品が多い傾向がある。『万引き家族』が外国語映画賞にノミネートされたことも嬉しい。カンヌでパルムドール受賞している実績を鑑みれば、十分に受賞の可能性はある!
あんた関係ないだろって・・・
それでも最終的に全部持っていくシェール御大。
流石はアメリカのショービズ界の唯一無二な存在。 #マンマミーアヒアウィーゴー pic.twitter.com/nReDLiB9bU— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) 2018年9月5日
そして、主演女優賞にレディ・ガガがノミネートされたことにも驚いた。これまでのアメリカ芸能史において、映画と音楽の両方の畑で成功を収めたスターは僅かしかいない。シナトラやシェールくらいなものだ。今回、ガガが今期賞レースで主演女優賞を獲るなんてことがあったら・・・・・・アメリカ芸能史に唯一無二な存在として燦然と輝くシェールに名を連ねることが出来るか注目である。多分、厳しいと思うけど。やはり彼女が、映画女優ではなくシンガーであるというイメージを覆すには、この作品だけでは事足りてないと思うからだ。
ただ、作品賞は監督賞とセットで受賞する傾向にあるため、監督賞を見ると『ブラックパンサー』も『クレイジー・リッチ!』も『ボヘミアン・ラプソディ』も監督賞の候補に挙がっておらず、これらの作品が大衆の関心を集めるだけに作品賞にノミネートさせた客寄せパンダにされている感じがしてならない。候補作が派手なほど授賞式の視聴率も上がるからだ。言っても保守的な側面が強いのはハリウッドの各映画賞である。『ブラックパンサー』旋風が吹き荒れてほしいと願うばかりだが。
ドラマ部門
■作品賞
『ブラックパンサー』
『ブラック・クランズマン』
『ボヘミアン・ラプソディ』
『ビール・ストリートの恋人たち』
『アリー/ スター誕生』
■女優賞
グレン・クローズ『天才作家の妻 -40年目の真実-』
レディー・ガガ『アリー/ スター誕生』
ニコール・キッドマン『Destroyer(原題)』
メリッサ・マッカーシー『Can You Ever Forgive Me?(原題)』
ロザムンド・パイク『A Private War(原題)』
■男優賞
ブラッドリー・クーパー『アリー/ スター誕生』
ウィレム・デフォー『永遠の門 ゴッホの見た未来』
ルーカス・ヘッジス『Boy Erased(原題)』
ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』
ジョン・デヴィッド・ワシントン『ブラック・クランズマン』
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コメディ/ミュージカル部門
■作品賞
『クレイジー・リッチ!』
『女王陛下のお気に入り』
『グリーンブック』
『メリー・ポピンズ リターンズ』
『バイス』
■女優賞
エミリー・ブラント『メリー・ポピンズ リターンズ』
オリヴィア・コールマン『女王陛下のお気に入り』
エルシー・フィッシャー『Eighth Grade(原題)』
シャーリーズ・セロン『タリーと私の秘密の時間』
コンスタンス・ウー『クレイジー・リッチ!』
■男優賞
クリスチャン・ベール『バイス』
リン=マニュエル・ミランダ『メリー・ポピンズ リターンズ』
ヴィゴ・モーテンセン『グリーンブック』
ロバート・レッドフォード『The Old Man&the Gun(原題)』
ジョン・C・ライリー『Stan&Ollie(原題)』
■助演女優賞
エイミー・アダムス『バイス』
クレア・フォイ『ファースト・マン』
レジーナ・キング『ビール・ストリートの恋人たち』
エマ・ストーン『女王陛下のお気に入り』
レイチェル・ワイズ『女王陛下のお気に入り』
■助演男優賞
マハーシャラ・アリ『グリーンブック』
ティモシー・シャラメ『Beautiful Boy(原題)』
アダム・ドライヴァー『ブラック・クランズマン』
リチャード・E・グラント『Can You Ever Forgive Me?(原題)』
サム・ロックウェル『バイス』
■監督賞
ブラッドリー・クーパー 『アリー/ スター誕生』
アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』
ピーター・ファレリー『グリーンブック』
スパイク・リー『ブラック・クランズマン』
アダム・マッケイ『バイス』
(文・ROCKinNET.com編集部)
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