映画レビュー

『ボヘミアン・ラプソディ』最高の伝記映画にして最高の音楽追体験のできる大傑作!

(C) 2018 Twentieth Century Fox


身震いがした。全身の細胞が躍動しているのが分かった。
それだけの伝記映画であり、音楽追体験のできる大傑作が生まれたことにあらゆる賛辞を贈りたい。

サマソニでQUEENを観たがやはり圧巻だった
もし、これがフレディーだったらと思うと・・・

QUEENを生で観たのは2014年のSUMMER SONICだった。もちろん、91年に他界したフレディ・マーキュリーはいない。彼の代わりにアダム・ランバートがヴォーカルを務めていた。中には「どうせカラオケでしょ」と揶揄する人もいたが、ブライアン・メイがギターを弾き、ロジャー・テイラーがドラムを叩いているだけでも貴重であったし、世界中が周知の超有名、大ヒットナンバーが持つ楽曲力と、QUEENのためにセッティングされた巨大舞台によって、圧巻のエンターテイメントが観れたと思っている。
しかし、アダムには申し訳ないが、おそらくフレディが健在なら、もっと凄いことになっていたんだろうなと言うのが想像付くような映画だった。これはQUEENの映画である以上に、希代のカリスマであるフレディが如何にカリスマだったのかを再現し、彼を知らない我々世代にも伝えた貴重な映画である。
QUEENは当初、ツェッペリンや、ディープ・パープル、KISSのような王道的なバンドと比較され、傍流と位置付けられたこともあったが、そういった余計なものは削ぎ落としたことが吉と出ている。これはあくまで、QUEEN視点の物語でしかない。劇的にするために多少の脚色もあるらしいが(フレディがバンド加入するのはもっと難航したとか、重役と争ったこともないとか)、この映画がQUEENの神話性を高める目的とすれば成功している。

役者がまるで生き写し?QUEENが憑依してた!

まず、バンドを演じた役者の4人に脱帽する。容姿からして再現性が凄い。鑑賞後にラストの「ライヴ・エイド」の本物の映像を観たが、動きはもちろんのこと、歌の間合いとか、アレンジまでも完全に再現されている。客席はCGだろうが、まさかライヴ・エイドを2010年後半で体験できるとは思わなかった。感動のあまり全身に鳥肌が立った。あの20分間は、映画を観ているのでは無くライヴを体験している、正にその通りだった。

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フレディー・マーキュリーの人間性に深く切り込む

フレディの人間性にも深く切り込んだ興味深い映画だった。アフリカの飢饉が表面化され、AIDSが猛威を振るった時代。フレディの生きた時代は正に激動であった。それとは反比例するかのように才能を開花させ、QUEENを世界的なバンドに押し上げた様を観ていると、フレディという天才が如何に異端で、革新的であったかが分かる。ロック・オペラなるジャンルも彼から誕生したが、既存の概念を打ち壊そうとする閃きが唯一無二である。常人には出来ない。
その反面、孤独にもがき、セクシャリティにも苦悩し続けた様は、今や周知の事実ではあるが、スターでない彼の表情が垣間見れたことは貴重である。映画のタイトルにもなっている「Bohemian Rhapsody」の冒頭で《Mama just killed a man》と言って、後で《Gotta leave you all behind and face the truth》と出て来るのは、まさに過去に異性愛者として繕ってきた自分からを銃で撃ったと、すなわち過去の自分からの脱却を意味してるんだろうなと、個人的には思っているけど、この映画を観て確信した。ま、個人的な妄想なので、あまり鵜呑みにしないでほしいけど。
また、フレディのソロ独立騒動に伴うバンド存続が順風満帆ではなかったことも描かれていたが、結局はバンドに戻ってきたフレディが如何にQUEENを重要視していたかが計り知れたのも良かった。

圧倒的なラスト約20分のライヴシーンに鳥肌!感動!

そして、映画からはQUEENがセルフ・プロデュース能力に異様に長けているバンドであることも窺えた。ブライアンの発想だが「We Will Rock You」の前奏で観客に手足で音を鳴らし、演奏に参加させるという発想。楽曲に聴衆も参加させるというロックは、現代を観てもなかなか無い。こういう名曲の成り立ちにおいて、どんなに巨大になろうともバンドとして機能していた事実が観れたのが嬉しい。
そして、映画として凄いなと思ったのは、QUEEN最大のキラーチューンとも言うべき「We Are The Champions」をラストのラストで流したこと。映画が完結する頃合いに、この高揚すること絶対的なロック・アンセムを初めて劇中で流し、観客をも圧倒させるテクニカルな構成には脱帽しかない。

正直世代ではないこと、物心ついた時にフロントマンであるフレディが逝去していることで、興味がイマイチ無かったバンドではあったのだが、この映画を機にQUEENをもっと深く聴きたくなった。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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