アカデミー賞

『グリーンブック』勝利!第91回アカデミー賞が示したネット配信映画の拒絶は正しい!

https://oscar.go.com/

司会者の不在や、女性・人種・移民・LGBTなど様々な方面で騒がれていた今年のアカデミー賞だったが、個人的には無難に終わったかなという印象だった。司会者いなくても大した影響はない声も多いらしいが、どこか味気なく、映画ファンとして言わせて頂くならば、オスカーは授賞式以前にエンターテイメントであり社会的影響力がある舞台であることを忘れてはならない。豪華絢爛で華麗なショーが展開される言わば娯楽の総本山のようなものであったはず。やはり司会者不在では淡々とし過ぎた感がある。

作品賞は意外にも『グリーンブック』が獲った。
大本命とされていた最多ノミネートのNetflix制作の配信映画『ROMA/ローマ』は監督賞含めた3部門に落ち着いた。少しホッとした。何故なら、ネット配信映画を、きちんと映画の最高峰である賞が拒否したからだ。ま、拒否というと少し大袈裟かもしれないが、『ROMA/ローマ』は監督賞まで獲っているわけで順当に考えれば作品賞を獲ってもおかしくはないわけで(白人製作者ばかりの『グリーンブック』が選ばれたことへの批判もあるらしいが)。これが、もし『ROMA/ローマ』が作品賞に選ばれてしまえば、映画を根底で支える興行という構造が成立し得なくなることを示唆し、従来の映画ビジネスの否定に等しかったからだ。映画は映画館でチケットを買って上映されて、その売上で興行が成り立つもの。ネット配信で済むものではない。この議論に関しては、ネット時代だとか時代の流れ云々は関係ないと思っている!

[PR]


主演男優賞に『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックが、主演女優賞に『女王陛下のお気に入り』のオリビア・コールマンが選ばれたのは番狂わせだった。単なる客寄せパンダ的な扱いだと思っていた『ボヘミアン・ラプソディ』が最多4部門(主演男優賞、音響編集賞、録音賞、編集賞)と健闘したことは驚いた。あんだけ批評家たちに不評だった映画が(「Wikipediaを映像化しただけの映画」とか「YOUTUBEでクイーンのライヴ見てたほうがマシ」とか散々な評価だったにも関わらず)大衆の支持を得て、こうも評価が変わるとは、なんとも皮肉である。自分らしさを大事に生きたゲイで移民の青年の映画を皆が祝福していることを挙げ、「自分もエジプト系アメリカ人だ」と高らかに宣言したスピーチは今回の授賞式でひと際感動を呼ぶ場面だった。


また、これまでアカデミー賞に批判的だったスパイク・リーが初めて脚色賞でオスカーを手にしたことも忘れてはならない。貧しい祖母が自分をニューヨーク大学大学院の映画学科入れてくれたことに感謝し、奴隷として黒人が連れて来られた400年間、この国を作り上げた祖先に賞賛を贈った感動的なスピーチ。続けて、2020年に正しい選択をしようと呼びかけ、トランプ大統領は後にコレを「人種差別的攻撃」と批判している。
リー監督作品はこれまで米国内では嫌われてきた。それは、彼の映画が「意見」であったからだ。アメリカの闇をえぐる作風や風刺、メッセージは、今でこそ多様的兆候を見せているが、つい十数年前までは白人至上主義であったハリウッドとしては目の上のタンコブだった。そのことを思えば、今回の受賞がどれほどの感慨深さだか自ずと身に染みるだろう。

ダイバーシティが叫ばれ始めてから、毎年何かしらが起こるようになってきたアカデミー賞であるが、それだけ映画界も変革の時期に差し掛かっているのだなと感じる。でも、これは非常に良い風潮だなと思っている。多様性とは言えども、資本で物を言わせるハリウッド映画の中国化に比べればマイノリティにスポットライトが当てられていく現状は支持するに相応しいだろう。今後の映画界の動きにも注目である。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]



 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 何故「バルス現象」は起きるのか?その理由は日本特有の国民性と風土にあった!
  2. マーベルが『ブラックパンサー』でヒーロー映画初のアカデミー作品賞を獲得するために…
  3. 安室奈美恵の引退ツアーを観る!世界中の賛美を彼女に贈りたい!
  4. ノエル兄貴「ロックが衰退したのは『フレンズ』が原因」と独自の分析を披露!
  5. 【フジから若者が消えた?】フェスの“聖地”フジロックが中高年化している問題。若者…

関連記事

  1. ハリウッド

    海外ドラマが止まらない!~年内残り寝不足決定~

    俺は海外ドラマが大好きです!なので、「昼顔」なんちゅー…

  2. ハリウッド

    『ライオン・キング』がまさかの実写化

    やめとけ・・・監督は『アイアンマン』シリーズでもお…

  3. ハリウッド

    果たしてマイティ・ソーはメタボのままなのだろうか?

    2021年公開予定の『マイティ・ソー』最新作(原題 Thor:…

  4. ハリウッド

    「フラーハウス」のステファニー、マイリー・サイラスの嫌がらせに大人の対応

    20年ぶりの奇跡的な復活を遂げ、再び世界の話題の中心になっ…

  5. ハリウッド

    the FLASH 主人公演じるのは「Glee」のあの子

    毎年スポーツの秋なんですが、今年は海外ドラマの秋になってい…

  6. ハリウッド

    フラーハウス出演者初来日フィーバー

    全世界で人気沸騰のNetflix配信ドラマ「フラーハウス」…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ニュース

    【フジから若者が消えた?】フェスの“聖地”フジロックが中高年化している問題。若者…
  2. 音楽

    【徹底考察】ビルボード1位、米英人気過熱、国連演説・・・勢いが止まらないBTS(…
  3. ハリウッド

    【SW神話崩壊?】北米で『ハン・ソロ』の興行収入が大コケ!その理由とは?
  4. ライブレポート

    【即日ライブレポ】KEYTALKの横浜アリーナ公演は到達では無く“門出”だった!…
  5. 映画レビュー

    想定外のラストに衝撃!『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』で初めてアメコ…
PAGE TOP