映画レビュー

『亜人』日本漫画の過激性という欠点をハリウッド的なアプローチで見事にカヴァー

(C) 2017映画「亜人」製作委員会 (C) 桜井画門/講談社


興味深かったのは、この映画には善悪が無かったことだ。不死身の体である「亜人」の主人公の佐藤健が人間の味方をするのも当然だろうし、日本滅亡を企む敵役の綾野剛も、20年間人体実験をされていたという想像を絶する苦痛を人間によって味わわせられたことへの復讐ならば彼が人類滅亡を企むのも理解できなくもない。このように、最近の日本の漫画ってのは(俺は全く読まないのだけれども)単純な勧善懲悪にしない奥深さや多様な価値観で構成されているのは特筆すべき点である。

ただ、原作の漫画は結構グロいと聞く。人によって感じ方は様々であろうが、ちょっと最近の漫画原作の映画を観ていても、『東京喰種』にせよ、この『亜人』にせよ、本来はサブカルの端っこにあったはずのコンテンツが注目を浴びるというのも、どこか違和感を感じずにはいられない。そんなにグロ描写が見たいのか?
この映画でも、容易く腕を切り落としたり、傷付けることを厭わない描写にはウンザリする。どうして日本映画はこうも血糊が好きか? まるで韓国映画。日本の漫画や映画の韓国化を、少し危惧している。いくら斬られても血が出ない水戸黄門に戻れといいたくなる。観たいのは過激描写でなく、ストーリーであるのだから。
こういう残虐な描写に注目が集まるのは一種の「怖いもの見たさ」に他ならないという心理学者もいるが、大概それらはカタルシスで片付けられるものが多かった。親の躾けが厳しかった幼少期を過ごした人間や、日頃は、常識的・良識的な人間ほど、そういう傾向にあるという。
しかし、漫画大国である日本においては、漫画業界も激戦区だ。その副作用として、ストーリー以前に如何に注目を浴びようかが先行し、過激な表現や内容のものが出て来る。言わずもがな、有害なものも多い。要は、それらは刺激でしかなく、王道で勝負出来ていない。私が、園●温の映画を一貫して徹底批判するのも、この非王道性でしか自己表現が出来ない邪道さへの反感である。

それらに比べれば、この映画はグロ漫画を最低限度の表現にに抑え、大衆娯楽として成立させた本広克行監督は偉い。『踊る大捜査線』で慣らした大衆を掴む作品作りの腕は衰えていないようだ。彼はハリウッド映画を目指している作家である。そんな日本の才能が、日本漫画を手掛けると、こうも凄まじいアクション大作になるものかと感心した。日本映画でアクションに感心するなど、初めてのことではないかと思うくらいだ。

特に、綾野剛が素晴らしかった。意外にマッチョなことも分かったし、華麗なアクションは肉体派としても十分な存在感だった。何よりも、やはり演技がうまい! 主演の佐藤健も決して悪い俳優ではないけど、完全に綾野剛が全て持って行っていた。主役を食ってしまう脇役というのは凄まじい。実力派を、改めて証明させていた。同世代俳優の向井理に爪の垢でも煎じて飲ませてみればいい。

細かな指摘とはなるが、印象的だったのは、その綾野剛が、スーパーマリオをやっている時に、クリボーを踏ん付ける度に(大袈裟な表現かもしれないが一種の殺戮行為とも捉えられるものを)カウントするシーン。これから東京で毒ガスを振りまく残忍なキャラクター性を、マリオで例えてしまうのが巧い。これって、如何に、我々の日常の中に、他者への攻撃する文化が当たり前のように入り交じってるかという強烈な皮肉とも捉えられる。
ネット上で他人に暴言を吐き捨てたり、戦争のシューティングゲームでヴァーチャル上で人間を撃つなど・・・・・・刺激物に支持が集まる理由は、こういう現代人の日常にあるのかなと思った。少しは、ゆったりいこうよと感じる。

(文・ROCKinNET.com)
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