笑って泣けて、本当に心が温まる映画とは、こういう作品を言うのだと思った。しかも、エンターテイメントとしても究極だ、これは世界的に大ヒットを記録した前作を素直に踏襲している。続編だからという変な片意地も張っておらず、無駄な派手さが無いのが成功の鍵だったと思う。相変わらず、冒頭から主人公パディントンのドタバタ・コメディが展開され、その姿に癒される。ドジだけど、懸命な姿に愛嬌を感じるばかりである。
何故、我々はこうも、この熊に惹かれるのか?
前作から、なんとなしに考えていたことだが、それを明確にしてくれる続編だった。パディントンが時計の歯車の隙間に挟まれるシーンがある。正しく『黄金狂時代』のチャップリンなのだ。そう考えれば、本作でも繰り広げられるパディントンのドタバタ(整髪店での失敗とか、窓ふきのバイトとか、刑務所内の洗濯・調理シーンとか)は、チャップリンの短編映画を見ているようで、隙の無い上質なコメディっぷりに拍手喝采の連続。また、刑務所内でのシーンの数々は『グランド・ブダペスト・ホテル』のような色彩豊かでポップな感じだし、隅々まで徹底して可愛い。
パディントンが歯車に挟まれてるシーンが、まんまチャップリンの『黄金狂時代』で、この映画が面白い理由は、普遍的な往年の喜劇を再現してるからだと気付く。 #パディントン2 pic.twitter.com/nrg2lOah6E
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囚人服をピンクにしちゃうセンスと世界観が好きだ☆#パディントン2 pic.twitter.com/0tW7YZD6uc
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そして、何よりもヒュー・グラントだ。もはやラブコメの帝王である。その奇抜なコメディアン・センスには舌を巻く。昔は売れっ子で、今はドッグ・フードのCMしか露出が無い俳優なんて、どこかピッタリな部分もある役どころを見事に演じきった。エンドロールでは華麗な歌とダンスも披露。本編では悪役に徹していたが、そういうの関係なく、一流のエンターテイナーぶりを見せてくれる。こういう見せ場を作った制作陣も素晴らしい。
現代の英国は混沌としている。難民過多、高齢化、EU離脱、マンチェスターのテロ。英国に限ったことでは無いが、保守化が進む中で、閉塞的な空気感で覆われている。そういう、世相と真逆を行くのが、このパディントンなのである。街の人気者だったはずのパディントンだが、雑貨店の泥棒と間違われて、刑務所に入れられてしまう。「やはり熊だから」と風評被害が広がり、徹底してバッシングを受ける。事実無根でも止まないSNSの炎上かのように。そんな誤解を解くために、ブラウン家や囚人たちが一体となって解決に挑む様に心洗われるのだが(嫌な人がほとんど出て来ないのだ)。こうした、根底に「差別」「異種受容」がテーマにあるのが良い。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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