映画レビュー

『空母いぶき』何もかも中途半端な駄作!それなら娯楽に徹していい気がしたが?

© かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ

映画は虚構であり娯楽に徹するだけでいいと感じている身としては些か息苦しい気がした。同時期に公開された同じ潜水艦が出てくるハリウッド映画『ハンターキラー 潜航せよ!』ではきっちりエンターテイメントしてたので、その潔さの方が好きだなと感じた。しかも、この映画はやたらと軍事攻撃はしなかった(最後にロシアの基地をドッカーンしちゃうけど)米露の戦艦長が協力をするという前代未聞な親和的な話で、娯楽作として後味良く、こういう感じでいいよなって思ってしまった。憲法改正について能書き垂れるなんて正直かったるい(せめて映画の時くらい娯楽で楽しませてくれよって)。

(C) 2018 Hunter Killer Productions, Inc.

公開前に総理大臣役を務めた佐藤浩市が「下痢気味でストレスに弱い」「体制側を演じることに抵抗がある」と述べて賛否を呼んでいたが、正直そこまで目くじらを立てるほどの描写があったとは思えない。
加えて、あの無意味なコンビニ店長の登場と、公開が五月だっていうのに季節はずれなクリスマス推しは何なんだ? 中井貴一レベルの役者使うから、うっとうしくて仕方なく群像劇としても失敗してたように思える(おそらくDVD発売時期が12月とか、そういうオチなんだと思うが)。

予告で西島秀俊が不敵な笑みを浮かべて「駆逐せよ」と発言するシーンにゾッとしたが、やはり軍事行動に理性は失ってはいけないと思っている。どこぞの馬鹿な衆議院議員が「ロシアと戦争する」発言をしたが、これぞ平和ボケの最たる愚見であり、それを国会議員が発言したことが情けない。「裸足のゲン」や「火垂るの墓」の教訓を学んできた我々は何だったんだろうか?

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問題となるのは、この映画のような有事が起きた際に日本はどれだけ自国防衛が許されるかだというが。既に日本が武力攻撃を受けたという事実があるのだから、個別的自衛権の行使によって、敵を発見次第攻撃することが可能のはず。それが専守防衛ってやつ。それが認められている以上は(砂川最高裁でも判決済)、果たして、佐々木蔵之介のように相手側が攻撃するまで何も出来ないとか、相手に怪我人を出してはいけないなど悠長なことを言ってることが、どうも現実的ではないと思えてくる。

せめて映画の中では、架空の多国籍テロリストとはアクション映画的なド派手なドンパチやってもいいんじゃないの? とも思うが、おそらく日本映画の予算じゃ無理なんだろう。「いてまえ~!」って無駄な関西弁がギャグっぽく聞こえて逆に虚しかった。しかも、タイミング的にも、こういう改憲議論が盛んなセンシティブな時期に「駆逐せよ」なんて軍事攻撃を命令する主人公の映画が公開されることに気味悪さは覚えるし、そもそも、この手の戦闘映画ってカタルシスが欠かせず、『ハンターキラー 潜航せよ!』のジェラルド・バトラーの格好良さのようなヒロイズムすら感じない。西島秀俊の感情を出さない薄気味悪い演技も、爽やかな彼らしさが出てなくて残念だ。『MOZU』でも同じこと感じたけど。「きのう何食べた?」での好演が勿体無い。整形鼻ばかりが気になって仕方なかった。

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ただ、どうしても、気になるのが、この映画は「アメリカの不在」である点だ。トランプ大統領のツイッター発言によって日米安保理の保障が危ぶまれると言われているがホワイトハウスも毎度のこと即時に否定。アメリカも自国のメリットでしか動かないという意見も見かけるが、完全に頭の中がアメリカ至上主義に侵されている私にとって日米安保理が何よりである。対米自立なんて絵空事。日米安保では、日米間において、日本が国防危機を迎えた時にアメリカが助けるのは「義務」であると定義付けられており、日本の後ろ盾にはアメリカがいる限りは、現実的にアメリカを敵に回しても構わないと攻撃してくる国はそういないと考える。
ただ、たられば論のマイナス思考で憲法に責任を押し付け、無理に軍拡を推進することは慎重を期すべきと思う。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

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