映画レビュー

『ザ・マミー/呪われた砂漠の女王』で感じた、映画のフランチャイズ化の難しさと、トム・クルーズのスター性

© Universal Pictures


マーベルが当たって映画業界の在り方が変化しつつある。この映画は、往年のユニバーサル・ホラーのモンスター達を現代に蘇らせ、世界観を共有しながらフランチャイズ化していく「ダーク・ユニバース」シリーズの第1弾で、本作は『ミイラ再生』のリブートに当たるという。
通常は、マーベルがそうだったように、『アイアンマン』や『マイティ・ソー』が単体で当たりました! これなら、もともと原作で共有されていた世界観を、そのまま映画化して、超大作『アベンジャーズ』を作っても平気だなというベクトルになるのが普通の考えだと思うのだが(もともとの構想はあったのかも知れないが)、DCにせよ、ダーク・ユニバースにせよ、作品単体の評価を顧みず、最初からフランチャイズ化前提で事が運ばれていくのが不自然である。

結果、成り損ないの『バイオハザード』と『ハムナプトラ』を足したような既視感ありありの新鮮味ない映画に成り下がった。トム・クルーズほどのスターを起用させたのも、配役的にではなく、今後のフランチャイズ化の一作目として失敗は出来ないがゆえの起用にしか思えない。結果、トム効果で興行的には成功しているので、彼の起用は正しいと思う。流石はトム・クルーズである。存在感だけで映画会社の一大フランチャイズ・プロジェクトを成立させてしまうのだから、彼こそ正しく真のスターと呼ぶに相応しい。けど、飛行機墜落シーンなどは、まるで『ミッション・イン・ポッシブル』で辟易とさえしたが。
『バッドマンvsスーパーマン』という世紀の大駄作で、DCもスタートダッシュから失敗をした。ダーク・ユニバースも同じ結果になった気もしないわけでもない。

映画は常に新鮮でなくてはならない。過去の「どっかで観たことあるシーン」のツギハギでは新鮮味に欠けるどころか、観てて面白くない。『ナイト・オブ・リビング・ザ・デッド』で存在自体が恐怖だったゾンビが、『28日後』で走るようになって恐怖を増し、『バイオハザード』では、その世界観と数で恐怖を増殖させたように、発展していかないと時代の鑑賞眼では耐え切れない。この映画のゾンビの陳腐さが物語っているだろう。言ってしまうと、ホーンテッドマンションのような遊園地レベルのものに抑えたいという狙いがあるとしたら成功してると言えるが、ホラー映画の金字塔たちのリブートである以上は、ディズニーランド映画じゃ示しがつかない。
呪われた女王も、ホラーの割には女優が可愛過ぎる。時折見せる上目遣いには、キュンするほどで、あれではホラーでなくラブコメだ。
それと、意外なキャスティングで、ラッセル・クロウが出演している。「ジキル博士とハイド氏」の怪人ジキルを演じている。これは、今後のダーク・ユニバースに一貫して登場する予感さえする重要な立ち位置に思える。が、ラッセル、怪人に変化しても普段と大差が無かった。『グラディエーター』で強靭な肉体を持ったヒーローというイメージが強いが、最近はめっきり太って大関化。マライア・キャリーと競えるほどだ。元から強面だから、普段から怪人顔である。ただ、肌の色が緑になったくらいで、「具合でも悪いんですか?」程度の怪物へんげには笑ってしまった。

この映画、トム・クルーズが出ていなければ絶対に観ていなかっただろう。是非とも、フランチャイズ化すると決めた以上は、旧来のユニバーサル・ホラーをリアルタイムで見ていた観客と、その時代と同じホラー感覚を味あわせて欲しいものだ。次回作『フランケンシュタインの花嫁』には期待をしたい。

(文:ROCKinNET.com編集部 よっしー)
※無断転用は固く禁ずる

 

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