映画レビュー

アメコミ映画には無い肉体を駆使するアクションに痺れる『ジョン・ウィック:チャプター2』

(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. (C) Niko Tavernise


前作は愛犬をチンピラに無残にも撃たれてしまったことから始まる大復讐劇で、犬の仇という理由付けがきちんとされており、その代償としての復讐劇としてはやり過ぎる、そのギャップが面白かった。
確かに、やり過ぎ感はあったけど、マフィアを壊滅させる理由があった。それには、特に愛犬家としては、フィクションということを自覚した上で腑に落ちる部分もあったし、初回ということでの、ジョンの異常な偏執狂的な部分が、ある意味、馬鹿げていて、面白い映画だなと思ったものだ。

この映画の魅力は、やはり「浮世離れ」にあると思う。
そういうものは、現実味が無いと片付けられがちなのだが、どうして『ジョン・ウィック』は成立するのか? それは、銃撃とカンフーを融合させた「ガン・フー」の華麗さにあると思う。『燃えよ!ドラゴン』を観ているようなとは言わないが、アクション映画には一種の非現実的なエッセンスが盛り込まれている。ヌンチャクひとつで何十人も敵を倒す“非現実性”はどうでもよくて、そのブルース・リーの姿そのものに惹かれるのと一緒。
とにかく、キアヌがカッコ良いのだ(この人は老けないね~)。アメコミ映画全盛で、映画のアクションに生身の人間の体温が失われて久しいが、近年ここまでスター本人が身体を駆使して、肉体的なアクションを懇切丁寧に作ってる映画も少ない。そういう意味では貴重な映画だが、この映画の最大の持ち味である、やり過ぎアクションも、観客の良心が共感できるレベルでの理由付けが無いと駄目だと感じた。

と言うのも、今回は、あそこまで大袈裟に逆襲する理由が無いのだ。殺し屋稼業のジョン・ウィックの宿命めいた苦悩が浮き彫りになってきたことで、続編としての面目は守られているが、誓いを結んだ昔の仲間から、とある仕事を依頼されて、それを断ったら、家をバズーカで爆破されて、頭に来たから数百人のマフィアを前作同様にやっつけまくる・・・・・・ちょっと各々のキャラクターが、各々の行動を取るまでの動機や大義が浅はかに思える。この映画の世界では、少し考えるってことをしないのか?(笑)

前作のように犬の仇という大義があるなら、マフィアが数百人とやられていく様にもカタルシスが感じられたが、今回は「自分で蒔いた種感」が払拭できず、「ガン・フー」だけは見てて完璧な分だけ、余計にやり過ぎ感を煽り立て、暴力描写にだけ関して言えば、痛快ではなく苦痛レベルに達し、シリーズと発展していくには、陳腐な暴力映画に成り下がった続編だと思わずにはいられなかった。
けど、続編が気になるのは、どうしてだろう? 一匹狼となったジョン・ウィックの追い込み方が巧みなんだろうな。

(文:ROCKinNET.com編集部 ぴよ)
※無断転載は固く禁ずる

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 13年ぶりロッキンに出演したサザンが凄かった!ROCK IN JAPAN史上最大…
  2. 遂に日本国内興収100億円突破!『ボヘミアン・ラプソディ』はアカデミー賞を獲れる…
  3. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…
  4. 『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  5. ロッキンにサザン13年ぶりの降臨!昨年の桑田ソロに引き続きフェスに出る意味とは!…

関連記事

  1. 映画レビュー

    『スプリット』多重人格を演じきったマカボイの怪演以上に驚くラストに注目!

    M・ナイト・シャマランという映像作家は不幸な作家である。20代にし…

  2. 映画レビュー

    大根キアヌが暴走するだけの荒唐無稽なSF映画の駄作『レプリカズ』!

    出来そうで出来ないがSF映画のリアリティこの手のSF映画を許容…

  3. 映画レビュー

    『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』感動も多幸感も表現しきれない薄味ミュージカル

    日本人が如何にも好きそうなミュージカル映画だなと思った。『グレーテ…

  4. 映画レビュー

    二兎追う者は一兎も得ず?『女王陛下のお気に入り』は権力に奢れる人間の愚かさを描いた愛憎劇

    アカデミー賞はこの映画の何が好きだったの?英国王室・衣装メイク…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. 音楽

    【この夏も話題独占】ジャスティン・ビーバーの恋愛遍歴を振り返り!
  2. 映画

    是枝監督『万引き家族』がカンヌで最高賞!カンヌにおける日本映画の歴史と、今回の受…
  3. 音楽

    2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
  4. ハリウッド

    アベンジャーズ最新作がコナンに負けた?世界的な流行をも度外視する日本鎖国文化は奇…
  5. ライブレポート

    SUMMER SONIC 2017 東京会場1日目ライヴレポート
PAGE TOP