映画レビュー

横浜流星と中尾暢樹の戦隊俳優が魅せる感涙の王道青春映画『チア男子!!』が熱い!

(C) 朝井リョウ/集英社・LET’S GO BREAKERS PROJECT

いい映画を観たなというのが率直な感想だ。
朝井リョウ原作の青春映画と聞いて観ない訳にはいかないと思った、その期待は裏切られることは無かった。はっきり言えば、この『チア男子!!』は王道であり予定調和である。しかし、そこにリアリティがあった。大学生活ってテレビで見るような華やかなイメージは皆無で実際は地味だったりするじゃん?

自分の大学生活を振り返っても何を成し遂げられていたかを問えば、バイトや中途半端に顔だけ出してたサークル、相応に悩みもあったけど、基本チャラけていて語るに至らない四年間だったと思う。それは壁にぶち当たらなかったから、この映画の男子たちのような熱中するものがなかったから。けど、何かを乗り越えた先に言葉では言い表すことの出来ないカタルシスがあることを、この映画は表現し、観ている自分にも青春を再び疑似体験させてくれた。

[PR]


横浜流星は強制的に柔道をやらされアイデンティティを模索していたし、中尾暢樹は認知症の祖母の介護に苦悩している。瀬戸利樹は過去にチアでの失敗で仲間を歩行困難にさせたトラウマを抱え、浅香航大は冴えない大学生活で時間を消費したことを憂いていた。関西ボーイズは表面状だけハイテンションで、実は互いの信頼関係の浅さに不満を抱き、太っちょ君は仲間から弄られていることに悩んでいた。七者七様の葛藤があり、団体競技のチアで偶然にも出会った「仲間」の絆によって克服していく様は思わず目頭が熱くなる想いだった。SNS上のいいねや既読が重要視されるような人間関係が希薄で表面上になっている現代にこそ、こういう王道青春物語の存在意義は大きい!


どこの大学にもいそうな男子学生たちが、ストレートな思いでチアに臨む姿は、セミ・ドキュメント映画の基軸を作った『ウォーターボーイズ』の如く、役者がアテレコを使わず自ら演技をすることの“ガチ感”を感じた。観ているこっちにも緊迫感や本気度が伝わり、感動も一塩だった。

同時に実際に何かに取り組むと、相応の専門的な技術や鍛錬が必要であることにも気づかされる。日頃、何気なく見ているチア。人が人を持ち上げる、そこから高く飛ぶ。チアなら当たり前なんじゃないの?が実はどれほど難しくて危険で、がゆえにどれだけ訓練が必要かを描く。だから、人の表現は馬鹿にしてはいけない。そんなんなら自分でやってみろって。
瀬戸利樹が仲間に厳しく指導していたのは、経験者だからこその競技の危険性を知っていたからだ。いろんな分野の道があって各々が奥深いのだ。そこを理解しようとしない者は浅はかだと思う。
これって今も問題になってる運動会の組体操にも言える。段数が増えれば、最下部のあるポジションだけ200kgの重荷が掛かるという。あまりに危険な行為であるから見直される。そこを教師たちは理解していなかった結果、全国で怪我人が続出した。そんなに人を積むのが好きなら、教師がピラミッドやれって思う。

[PR]


話が脱線してもうた(汗)


今をトキメク横浜流星を中心に、新進気鋭の個性的な若手俳優が勢揃い。各々が違った個性を醸し出していたのが群像劇としての深みを高めていた。みんな演技が上手い! 特に、W主演の中尾暢樹は戦隊時代から演技に定評があったが、笑ってしまったのは「ブレイカーズだ!」の叫び方が、まんま「大空の王者、ジュウオウイーグル!」だったこと(笑)『一礼してキス』ではセクシーな役どころで戦隊イメージを脱却していたが、本作では戦隊・中尾暢樹カンバックしていた。それもそれで良いと思う(ブレイカーズが横並びで歩いている時にジュウオウイーグルに変身してたし笑)。
ブレイカーズの中心を担う中尾と、主演ながら少し脇に徹する部分があった流星の構図が、(ジュウオウとトッキュウの違いはあれど)レッドとグリーンの構図にまんま当てはまってるようで興味深く面白かった。

たまには、こういう青春映画を観て涙するのも悪くない。失った青春、取り戻せない青春をブレイカーズに託し、映画の内外で青春を分かち合えたことに喜びを感じる! 是非、制作ドキュメンタリーも見たいと思う。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]



 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 何故「バルス現象」は起きるのか?その理由は日本特有の国民性と風土にあった!
  2. アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  3. ELLEGARDEN復活ライヴを観る!10年の活動休止の先にあった変わらない尊さ…
  4. THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  5. 安室奈美恵の引退への想い~安室という現象が現代の日本女性像を変えた~

関連記事

  1. 映画レビュー

    誰もビートルズを知らない世界で抜群のセンスが光る傑作『イエスタデイ』

    プロのミュージシャンに憧れ目指した人なら誰しも思ったことがある発想…

  2. 映画レビュー

    『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』飽和を恒例に変える流石のクオリティ!

    シリーズも五作目となり、いよいよ飽和期に差し掛かってもおかしくない…

  3. 映画レビュー

    『僕のワンダフル・ジャーニー』気持ち良い涙が流せた素敵な続編☆

    まさかの続編も号泣必至の心温まる感動作!続編は犬中心ではなく、…

  4. 映画レビュー

    『キングスマン ゴールデン・サークル』エグさ健在!カッコ良さ健在!続編大成功!

    アクションの描き方も相変わらずの巧さだし、それに伴う音楽の使い…

  5. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】バイオハザード:ザ・ファイナル

    この映画の存在意義は2つあると思っています。まずは、ゾ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 映画

    是枝監督『万引き家族』がカンヌで最高賞!カンヌにおける日本映画の歴史と、今回の受…
  2. ハリウッド

    世界で大ヒット中の映画『スパイダーマン:ホームカミング』の主人公トム・ホランドの…
  3. 映画

    『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている
  4. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 2日目ライヴレポート
  5. ライブレポート

    ELLEGARDEN復活ライヴを観る!10年の活動休止の先にあった変わらない尊さ…
PAGE TOP