新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい1年が経過しようとしている。特に欧米でも甚大な被害を出したパンデミックだが、思わぬ形で新たな問題が生まれてしまった。トランプ前大統領が「中国ウイルス」と呼んでいたことも関係してか、アジア系移民に対する暴力事件が多発しているのだ。特に深刻なのは、彼らにとったら、中国人も韓国人も日本人も、果てやアメリカ人でもアジア系なら同じなのである。アジア人はとにかく排除しようとするヘイトが深刻化している。
MeTooで女性の地位向上を、BLMで黒人の人権問題を問題視し、アメリカに根付く差別を乗り越えようとしている最中に、また新たな差別が生まれる。女性も黒人も加害者となり、これまで差別される側だった者が、よりマイノリティを差別する負の連鎖。(それでも、BLMよりも全体的に抗議の声が小さいのは、アジア系は勤勉で成功者が多いという思い込みからである。とはいえ、アジア人は白人が扱いやすいってだけなのだが。)
これに対して、いち早く声を上げたのがリアーナだ。
彼女はニューヨークで行われた#StopAsianHateのデモに顔を隠して参加。大きなグリーンのボードに大胆な大文字で“HATE=RACISM AGAINST GOD!”と書いている姿がインスタに投稿された。
また、『チャーリーズ・エンジェル』『キル・ビル』でお馴染みの、ルーシー・リューはCNNのインタビューに応じ、新型コロナに対するフラストレーションや怒りがアジア系に向けられていると語り、「ステレオタイプのアジア人役のオファーが多かった」と自身の体験談も交え、今こそ差別を止めるよう訴えている。
「グレイズ・アナトミー」で知られるサンドラ・オーも、ペンシルベニア州ピッツバーグで開かれたアジア系差別撤廃の集会に参加し、「私たちアジア系が恐怖と怒りの声を上げたのは初めてのこと。恐怖を乗り越える唯一の方法は、助けが必要な人たちに手を差し伸べることです」と語り、アジア人が誇らしいと声を張り上げて差別を止めるよう訴えた。
その他、世界的DJのスティーブ・アオキは「アジア系アメリカ人であることを誇りに思っている。私たちは皆んな同じコミュニティの一部です。憎しみではなく、愛を広めよう」とコメント。大人気ドラマ「LOST」で韓国人夫婦の旦那を演じたダニエル・デイ・キムは、アジア系高齢男性が殺害された事件の逃亡犯に懸賞金を出すなど捜査に協力し、下院司法委員会でおこなわれた聴聞会に出席してヘイトクライムに歯止めをかける法案を可決するよう訴えている。
また、映画『search/サーチ』で主演を務めたジョン・チョーは、ロサンゼルス・タイムズ紙に「さっきまでアメリカ人なのに、次の瞬間にはウイルスをここに持ち込んだ外国人となる現状を憂う」とコメント。タイの母親を持つ妻と結婚しているジョン・レジェンドは「本当に酷いことだ。アジア系アメリカ人の兄弟姉妹たちに向けられている脅威の増加を考慮する必要がある」とコメントしている。
昨年のアカデミー賞は『パラサイト 半地下の家族』が外国語映画で初めて作品賞を獲得し、本年度の映画賞レースでも中国系アメリカ人のジャオが監督を務める『ノマドランド』が多くの称賛を得ており、多様的な社会が実現しようとしている矢先に、このような人によって作られた憎悪が社会の空気に渦巻くのは残念極まりない。また、一度根付いた偏見や差別意識は、なかなか無くならないアメリカ社会の病巣的思想もあり、アジア人の一人としては心が痛むことだと思っている。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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