映画レビュー

『ザ・プレデター』でプレデターはコミック化した

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誰もがプレデターがどれほど無敵で恐ろしい存在か知っている。
なので、透明になるとか熱感知で獲物を見るとか、皮剥がされて宙吊りとか、お馴染みの描写も、それはもはやファンサービスの域。胴体が真っ二つにされるとか『プレデター』シリーズお馴染みのスプラッター満載のゴア描写が、如何にも80’sテイストで、どこか時代錯誤。そのチープさが逆にプレデター的で悪くはないと思うが。
人間との闘いも想定内で、通常運転のプレデターだった。シリーズを進化させるような特殊性はない。

ただ、今回斬新だったのは、プレデターに人間の遺伝子が発見されるという驚きの事実だ!
種をより強くするために異種交配を目的に地球にやって来る。
人類史上最強な人間を探すために・・・・・・
しかし、残念ながら、その最強の男は、お前と闘った後に、カリフォルニア州知事やって、ギャラが高額過ぎてハリウッドから干されて老人になっちゃったよ! 息子がイケメンだと話題だよ! なもんで、代わりに今回活躍するのが新進気鋭の俳優ボイド・ホルブルック。『ゴーン・ガール』で逃亡中のロザムンド・パイクの金を奪うカップルの彼氏、『LOGAN』で腕がサイボーグ化されてヒュー・ジャックマン達を追っかけてた兄ちゃん。悪い役ばっか(笑)今回はかっこいい。

そして、彼の息子役に、今やハリウッドNo.1の天才子役の呼び声高いジェイコブ・トレンブレイ、あの『ルーム』の坊ちゃんである。そして、アカデミー作品賞受賞作『ムーンライト』で大人になった主人公の繊細な演技が印象的だったトレヴァンテ・ローズが下品ながらも愛嬌ある相棒役を好演。ヒロインには『X-MEN アポカリプス』のオリヴィア・マンが華をそえている。

その他にも、筋肉隆々な男たちが銃ぶっぱなす様なんて『エクスペンダブル』のようで、どことなく古臭さも感じるものの、どことなくシュワちゃんと闘っていた頃の初作のアナログな作風に通じるところがあって良い。当時と比べれば、シュッとした細身の俳優が流行している昨今、それでは、プレデターとは戦えないし、嘘臭くなってしまう。画ヅラは汚いが、男臭い俳優を集めたのは正しいと思う。
また、そいつらが、先鋭部隊ではなく、ひと癖もふた癖もある“ならず者たち”、寡黙なヒーローではなく、子供に聞かせられないような下品な言動で、ギャグ映画としての側面も持ち、緊迫感しかなかった今までのプレデターではないのも新鮮だった。そんな歪なヒロイズムが痛快。何でもアリな連中なもんだから、捨て身で怪物に挑む姿が勇ましく、時にコミカルながらも、最大の見せ場であるアクション活劇としての面目は保たれている気がした。

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こめちゅういこめ人間は
この先、多少のネタバレあり。未鑑賞の方は閲覧の際十分にご注意ください!

ストーリーとは直接的には関係ないが、ラストのおまけオチではあるが、人間がプレデターの姿に似た鎧を纏ってしまうなど、何でもアリな過剰な展開には辟易とした。「ドラゴンボール」でストーリーを発展させるために、超サイヤ人が「2」「3」と青天井にパワーアップした時に唖然とした感じ。
今後は、あれでプレデターと対等に戦おうとでもいうのか?
それでは、完全にコミック。人間は狩られる対象で、プレデターは恐怖の象徴のままでいい。でないと、プレデターが安っぽくなってしまう。スーパー戦隊の怪人と大差ない感覚だ。それは避けなばならない。

それと、プレデター自身の戦闘姿のカッコ良さも物足りなかったのがイタイ。『エイリアンVSプレデター』の時には、まさかの狩り対象の人間とタッグを組んでエイリアンを駆逐した。あの映画ではとにかくエイリアンが馬鹿強かっただけに、いつも以上に華麗な戦闘姿が観れて(まるで舞踏のような)、めちゃくちゃカッコ良かった。今回はプレデターのビジュアル的なカッコ良さには重きを置かず、人間との闘いがメイン。なので、人間側のヒロイズムの方が際立っていたように思える。今後の『プレデター』シリーズを発展させるための序章に徹した気がする。ちょっと残念。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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