映画レビュー

【映画鑑賞日記】ムーンライト

(C)2016 A24 Distribution, LLC

黒人による黒人への差別と迫害・・・
アメリカでは黒人以上に同性愛が差別意識持たれているらしい。最近多い白人景観による不当な黒人への暴力ばかりが取りだたされるが、差別を受けるものが、また別のマイノリティを理不尽に差別する。LGBTへの差別意識は黒人からだけに限ったことではないが、差別の連鎖は現実世界にあるということだ。

とにかく胸の痛い映画だった。
黒人差別、同性愛、貧困、麻薬、イジメ・・・現代社会が抱える不都合な部分を全て背負った主人公の人生に胸締め付けられる。同時に、この映画を観るにあたって感じるべきなのは、「救いのない者の救済は何なのか?」だ。

マイノリティ、行き場の無い者、道から外れた者の救済は何か。
青年になり、麻薬の売人のリーダー格として、幼少期・少年期からは想像も付かないほど、厳つくなった主人公。売人仲間も恐れるほどの筋肉粒々な姿になったが、初恋の親友から電話があり、再開した後は、いじめに遭っていた少年期のように、どこか弱々しさが蘇っていた。同時に、恋心をもどかしく持った少年のような純粋な目に変わっていた。
ふとしたことで親友と性的な接触をして以来、彼の救済は初恋相手でもある親友でしかなかったのだ。親友はゲイではない、でも性的な接触をした事実が忘れられず、思い続けていた、ここにはLGBT云々関係ない普遍的な愛情を、この映画は描いている。実に切ない。

アメリカではFacebookの性別欄が50種類以上もあるという。またアメリカの14~34歳の60%が「性別の区分けは曖昧なものだ」と捉えているそうだ。
出典:http://fortune.com/2015/06/29/gender-fluid-binary-companies/

日本では神奈川県海老名市の鶴指眞澄市議による同性愛批判が堂々と行われ賛否を呼んだ、先進国の中でもLGBTの理解は遅れていることを如実に示している。この映画が受け入れられるはずも無い。ただ、LGBTでない私でさえも一定の理解を持っている人間もおり、これからの時代はそういう時代なんだという寛容性を持っていなければ、老害、原始人扱いを受けることだろう(笑)

同性愛云々を置いといても、この主人公のような人物もいるんだと、社会の隅の隅に追いやられている人物にスポットライトを当てた意味においては、この映画の存在価値は大きい。また、オスカー受賞した意義も大きい。何よりも平等を掲げなければならない。
『それでも夜は明ける』でも製作を担ったブラピが引き続き、プロデューサーとして名を連ねる。人種差別に対して積極性を見せている。それが二作もアカデミー賞に選ばれたことは快挙である。(いずれも監督賞は得られない事実はさて置き)
この映画がアカデミー賞獲ってくれて良かった。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. UVERworldの男祭り遂に東京ドーム実現!でも女性CREWからブーイング?
  2. 何故「バルス現象」は起きるのか?その理由は日本特有の国民性と風土にあった!
  3. 想定外のラストに衝撃!『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』で初めてアメコ…
  4. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…
  5. 【速報ライヴレポ】ハリー・スタイルズ初ソロ来日公演を間近で観た!彼こそ時代の寵児…

関連記事

  1. 映画レビュー

    大根キアヌが暴走するだけの荒唐無稽なSF映画の駄作『レプリカズ』!

    出来そうで出来ないがSF映画のリアリティこの手のSF映画を許容…

  2. 映画レビュー

    『デッドプール2』ブラックな笑いと過激描写が続編で増し増しで強引に続編成立

    前作で度肝を抜かされたブラック・ユーモアが続編となって何割か増し増…

  3. 映画レビュー

    『search』を観た!控えめに言っても大傑作!ここ数年で1番の大傑作と評したい!

    控えめに言っても大傑作である。素晴らしいアイディア、完璧な映画だ!…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ハリウッド

    世界で大ヒット中の映画『スパイダーマン:ホームカミング』の主人公トム・ホランドの…
  2. ハリウッド

    SW史上最大の被害者?ダース・モールその悲劇の人生を徹底解析!
  3. 音楽

    【FUJI ROCK直前特集 Part.2】音楽に政治を持ち込むのは是か?非か?…
  4. 音楽

    ジャスティン・ビーバー新曲のスペイン語が歌えず大ヒンシュクからのブーム化
  5. 音楽

    【徹底考察】ビルボード1位、米英人気過熱、国連演説・・・勢いが止まらないBTS(…
PAGE TOP