映画レビュー

驚異の技術力を示した実写版『ライオン・キング』だけど失った物もある・・・

© Disney

驚異的な再現力に脱帽としか言いようがない

オリジナルに忠実に再現された実写化は、とにかく動物やアフリカの風景のリアル加減に驚愕させられる。CGが遂に極限まで達したような気さえする。加えて、まるで本物と見間違えるほどの動物描写は、もはや動物タレントは不要とさえも思ってしまうクオリティで、毛並みの動き、鼻の濡れ具合などのディテールには脱帽する。

この驚愕の映像を実現したのが同じくジョン・ファブロー監督作の実写版『ジャングル・ブック』で使用された技術。実際にアフリカに行って撮影されたものをCGで再現して、それをVRに落とし込んで、そのVRの中で撮影をしたという常人には理解できない、なんだか物凄い技術。仮想現実の中だけに存在する世界で、そこには生身の生物は一切いない空間で映画が撮影される、本当にマトリックスやアバターの世界が浮世離れでは無くなってきた気がする。

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最先端技術によって失った有機的なもの

しかし、やはりアニメ版と比較してしまうと表現方法には限度がある。動物の表情なんかが最たる例だ。そりゃ、擬人化されたアニメは表現方法は無限大であり、リアルなライオンは人間のように笑う訳ないので表現に差があって無理もない(ザズーなんか鳥だからね、鳥は感情を顔には出さないし)。動物のリアリティ再現の代わりに、有機的な動物の感情表現は失われ、アニメ版のような感情豊かで多彩でドラマティックな物語には達していなかった。

動物は感情を表に出さないから当たり前ではあるけど・・・

例えば、アニメ版では、父親をスカーの陰謀によって亡くし絶望の淵に立たされたシンバに感情移入した後に、ティモンとプンバに出会って「ハクナマタタ」と歌いながら居場所を見つけた時の安堵感ったら無かったし、大人になったナラとの再会で「Can You Feel the Love Tonight」を歌うシーンのロマンチックな雰囲気にうっとりするのも今回の実写版では感じない。感情表現こそドラマの根幹だと思うのだが、だから無機質化された動物の表情から感じるものも少なかったことは技術の発展と相反した現象のように感じた。
どうでもいいが、ビヨンセの歌に当然の如く文句は付けられないけど、ビヨンセはライオンの声やっても自己アピール凄げぇなと思った(笑)

ブラック・パワーの象徴として成立した点は素晴らしい!

特筆したいのは技術だけではない。ビヨンセもそうだが、大人シンバの声をドナルド・グローヴァーが担当したことも嬉しい。今年2019年のグラミー賞で最優秀楽曲を受賞したチャイルディッシュ・ガンビーノだ。過激なMVで話題を呼んだ「This is America」のようにブラック・パワーに満ち溢れた人、彼のような人物に加えてビヨンセという希代のスーパー・スターを起用するなど、キャスティングでもアフリカ音楽を積極的に取り入れた音楽面でも、黒人文化とパワーが感じられたのも今っぽくて、アニメ版から現代にアップデートされたものとして定義づけても良いと感じた。

ミュージカル・シーンは何の工夫も無かったけどね?

ただ、ミュージカル・シーンは酷かった。何の工夫も無く、楽しさもない。劇団四季でも今回の実写版でも『ライオン・キング』に限ってはアニメ版が原点であり頂点なんだと思った。
要するに、優れた技術映画であり、それ以上ではないということだ。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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