アカデミー賞

【映画鑑賞日記】レヴェナント:蘇えりし者

rev(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

まずこの映画の凄まじいところは、2時間半の長尺にも関わらず、台詞が少ないのに見入ってしまったことだ。それは、仲間に裏切られた男の復讐劇というシンプルながらも誰もが共感できる本筋のテーマもさることながら、まるでネイチャードキュメントを観ているかのような、スクリーンいっぱいに映し出された大自然を圧倒的な画力を以て魅せたことにもよる。

本作で悲願のオスカーを手にしたディカプリオの演技の、まぁ凄まじいこと。これまでも彼は、多くの映画で、その才能をいかんなく発揮してきた、しかし、ここまで鬼気迫った演技を見たのは初めてかも知れない。先でも言ったように、台詞が少ないのだ。
イニャリトゥ監督が『アモーレス・ペロス』や『21g』で描いてきた<生への執着>というものを、呼吸と表情で大半を魅せる!その演技の枠を超えた演技に、身震いするほどの説得性を感じさせられた。

それと、この映画の最大のテーマである<報復>の扱い方にも注視していた。9.11以降、米国映画は報復を善としてきた。そこにカタルシスをも語ってきた。ただ、それは米国思想の基盤でもあるキリスト教の教えに反する行為であり、その矛盾をハリウッドはずっと抱えてきた。
しかし、それは、イニャリトゥというメキシコ人監督の解釈によって救われる。この映画は最終的には<委ねる>ことで、主人公の目的である報復を完結させる。実にキリスト教的なラストだと思った。
最後にディカプリオはカメラ目線で何も語らずに映画は終わる・・・『バードマン』でもそうだったが、最近のイニャリトゥは観客に映画後のことを考えさせる。個人的には結末は明確に提示して欲しい性質だが、そうすることで本作の意味について考え、語る、それは、映画が生き続けることに繋がると思った。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由
  2. THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  3. 「時代遅れのRock’nRoll Band」を聴く
  4. テレ朝スーパー戦隊の放送時間変更の暴挙は吉と出るか?
  5. 【速報ライヴレポ】ハリー・スタイルズ初ソロ来日公演を間近で観た!彼こそ時代の寵児…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】帝一の國

    漫画原作というか邦画そのものに面白みを感じない自分が絶賛したい…

  2. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】マリアンヌ

    久々にハリウッド映画を堪能できた気がした。その理由は顔にあった。古…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 音楽

    アリアナ慈善LIVE「One Love Manchester」を観て感じたこと
  2. 映画レビュー

    実写化史上最も成功していると言って過言でない『美女と野獣』に感動する
  3. 日記

    アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  4. 音楽

    PSY「江南スタイル」が持つYOUTUBE再生回数1位の記録を破ったのは!?【最…
  5. ライブレポート

    METROCK 2017 1日目完レポ
PAGE TOP