アカデミー賞

半漁人の勝利!90回目のオスカー発表!

© 2017 Twentieth Century Fox

世界の価値観がこれほど動いたと感じさせるアカデミー賞は無かった。
結果は『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞を受賞!(その他、美術賞、作曲賞も)
『スリー・ビルボード』との一騎打ちの行く末に注目されていたが、警官の暴力に対する反権力もだが、強姦を取り扱った作品なだけに、metooやTimesUpなど限定的な女性の権利向上よりも、オスカーは包括的な多様性こそ重要だと判断したということになろう。
『アメリカン・ビューティー』だとか『英国王のスピーチ』だとか訳の分からない受賞結果が長らく続いていたが、近年のオスカーは社会性を持った作品が選ばれる傾向にある。もちろん、古くは『ベン・ハー』『タイタニック』、最近では『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のような華やかな大作も、如何にもアカデミー賞らしくていいが。昨年の『ムーンライト』の受賞も、全世界に愛され、受賞間違いなしと予測されていた『ラ・ラ・ランド』よりも、今の時流にとって重要なテーマだと捉えられたからだ。本来はオスカーはそういうものだった。ベトナム戦争で傷付いたアメリカを象徴するように『地獄の黙示録』や『プラトーン』が獲ったように。アカデミー賞は、本来あるべき姿に戻ってきているのかも知れない。

反トランプの表明の象徴的作品に軍配!

もちろん、これは反トランプの表明である。デルトロ監督は受賞の際に、「私は移民です。多くの皆さんと同じように。25年間この国に暮らしてきました。私たちの業界で最も素晴らしいと思うことは、国境を消し去えるところだと思います。世界がその境目をより深く刻む今こそ、私たちは消し続けていくべきです。」と述べたように。実際に映画内でも、障害者、同性愛、有色人種とマイノリティが主要人物を占めている。明らかな悪役は白人男性。マッチョイズムな差別主義な男性像は、明らかにトランプ政権の象徴のように描かれていた。

◆主な受賞結果◆

●作品賞
『シェイプ・オブ・ウォーター』
●監督賞
ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』
●主演女優賞
フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』
●主演男優賞
ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
●助演女優賞
アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
●助演男優賞
サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』
●脚本賞
『ゲット・アウト』
●脚色賞
『君の名前で僕を呼んで』

女性陣が際立ったオスカーであった

『スリー・ビルボード』が獲れなかったとはいえ、オスカーはTimesUpを疎かにしてはいない。例年、主演女優賞のプレゼンターは前年の主演男優賞受賞俳優と決まっている。昨年受賞のケイシー・アフレックはセクハラ告発のため欠席。これまでも、諸事情でプレゼンターを欠席する俳優は多かったが、俳優賞のプレゼンターの代理を務める役者の性別は統一されていた。主演女優賞は男優が発表するものだった。しかし、今年はジョディ・フォスターとジェニファー・ローレンスと女優が務めた。異例だなと思ったと同時に、女優陣が際立つ式だったと思った。

主演女優賞フランシス・マクドーマンドのスピーチが凄かった


『スリー・ビルボード』は以前から役者映画だと言ってきた。脚本も優れているが、何よりも役者の演技力で持たせる作品だったと思う。現に、主演女優や助演男優で受賞をしており、特に、主演女優のフランシス・マクドーマンドの受賞スピーチは素晴らしいものだった。metoo運動のように女性の権利向上が叫ばれてきた今年の映画賞レースの最高峰であるオスカーの舞台で、女性の代表格である主演女優賞を獲った彼女が、会場にいる女性の候補者を起立させ、「映画に多様性を!」と高らかに言及したシーンは、紛れもなくハリウッドを変える強烈なインパクトだったと思う。
*WOWOWは「映画に多様性を」と訳したが、フランシスは実際「inclusion rider」と発言している。これは「映画に登場する人物のなかに、女性、少数民族、LGBTQコミュニティの人々、障害をもつ人々がある程度の割合で入っていること」を条件とした要項のこと。白人男性が肩で風を切って撮影現場を歩く時代はもう過去の物になるのかも知れない。

『ゲット・アウト』が脚本賞に!初の黒人受賞!

©2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

驚きは『ゲット・アウト』の脚本賞、『君の名前で僕を呼んで』の脚色賞の受賞である。前者は黒人差別を取扱い、後者はLGBTを描いている作品である。これほどまでに色濃くマイノリティ作品に光が当たることは無かった。皮肉にも、初の有色人種の大統領となったオバマ政権下では「白すぎるオスカー」と揶揄されるほど、黒人はじめとするマイノリティのノミネートは少なかったが、差別的なトランプ政権に移り変わったことで、リベラルなハリウッドが反応し、ワインシュタインのセクハラ告発の煽りも受けて、ここまで多様性が叫ばれるようになった。ハリウッドは時代を動かしてきたのだから、この変革は大きいだろう。

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その他、いろいろあったオスカーあれこれ

●ガエルの歌唱力に世界中が唖然茫然(よくオファー受けたな!)

●単独日本人としては25年ぶり辻一弘氏がメイクアップ賞を受賞!

●受賞ならずとも今回の賞レースで知名度上げたシャラメ君も得をした?

●何がどう間違えたらこうなる?

来年のオスカーはどうなるか? 世界を席巻中の『ブラック・パンサー』のノミネートはされるのか?
このアカデミー賞の結果を受けて、ハリウッドはどのような変革を遂げるのか、非常に重要な意味合いを持った一夜だったに違いない。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

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