映画レビュー

【映画レビュー】『太陽は動かない』MIの背中が少し見えた日本製アクション映画の画期的作品



©吉田修一/幻冬舎 ©2020 「太陽は動かない」製作委員会

日本映画は『ミッション・インポッシブル』は作れない。しかも、永遠に。と思っていた。それは、制作費の問題で片付けられていたが、テレ朝の日本版「24」を観ても分かるとおり、映像センスや編集センスからして足元にも及んでいないのが分かる。
しかし、ようやく日本映画もハリウッドに少し近付けたかなと感じたのが、この『太陽は動かない』である。冒頭からのド派手なアクション(爆発やカーチェイス)と、日本映画としては珍しいほどの肉弾戦が繰り広げられ、ハリウッド大作に肩を並べる迫力を醸し出していたのは驚いた。また、多国籍なスケールの大きさも近年の邦画では珍しい。ワクワク興奮した。

心臓にチップを埋め込まれた諜報員の様を描いた物語は、どこか絶望と悲哀に満ちており、胸苦しさも感じる。この手の、現実離れした理不尽な世界観といったら、この人の右に出る者はいない、藤原竜也だ! 今回も良い味を出している。ますます味のある演技をしていたのが嬉しかった。
主人公が、なぜ諜報員になったのか、その生い立ちが感傷的に描かれる。懐古シーンの多さは邦画的だなと、少しくどく感じたが、もし、これが続編だったりテレビドラマとして続くのであれば、まぁ良しとしたい。
彼の「今日を生き抜くことだけ考える」と言う台詞、この映画は上映が延期されたので、コロナ以前に制作された作品であるが、その頃の、なんとなく格差が広がり、見せかけの好景気の中でもがきながら生活を送る時代性と共感できる価値観に思えた。



旬の若手である竹内涼真の存在が些か薄かったのは勿体無い。藤原竜也にスポットライトが当たりすぎて、バディ映画としては少し物足りなさは感じる。
本作はWOWOWとの連動企画だ、羽住監督は『MOZU』でも同局のドラマと劇場版を手掛けた。海猿のヒットも記憶に新しい。どうやら、ドラマを劇場版で集約させるパターンがお得意のようだ。ただ、どうも本作は締まりが悪いというか、最終的に事件が解決するにせよ、主人公が悪の親玉を倒すとか、そういった最大の見せ場もなく、尻すぼみになった気もしてならない。アクション作品ってのは、後半にいちばんの見せ場があってこそだ(この映画は序盤がクライマックスのようで)。消化不良で終わったのは惜しいので、これは、絶対に続編を作るべきだと強く要望したい。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※当記事の著作はROCKinNET.comに帰属し、一切の無断転載・再交付は固く禁ずる。



◆関連記事◆

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. テレ朝スーパー戦隊の放送時間変更の暴挙は吉と出るか?
  2. 【全曲レビュー】桑田佳祐の最新作『がらくた』が凄過ぎた!大衆音楽ここに極まり!
  3. ポール東京ドーム初日を観た!
  4. エルレ細美が「待った!」転売野放し・・・チケットだけじゃないライヴ物販問題を考え…
  5. UVERworldの男祭り遂に東京ドーム実現!でも女性CREWからブーイング?

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】日本で一番悪い奴ら

    (C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会綾野剛の圧倒的勝…

  2. 映画レビュー

    『カメラを止めるな!』は確かに面白い!当たるべき所に陽が当たった喜び!

    ※注意※当記事はネタバレしておりますので、未鑑賞の方は絶対に読…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ジェイソン・ボーン

    (C) Universal Picturesこの映画を作る意味…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 邦楽

    【全曲レビュー】桑田佳祐の最新作『がらくた』が凄過ぎた!大衆音楽ここに極まり!
  2. 邦楽

    勝手に選ぶ素晴らしい邦楽たちTOP10 2017
  3. 邦楽

    RADWIMPS「HINOMARU」が物議!ポップ・ソングの右傾化に不自然さを感…
  4. テレビ・芸能人

    【徹底考察!】元SMAP「72時間テレビ」が大盛況!ネットはテレビに取って代わる…
  5. ハリウッド

    SW史上最大の被害者?ダース・モールその悲劇の人生を徹底解析!
PAGE TOP