映画レビュー

【映画レビュー】『クルエラ』ディズニーの実写映画化史上No.1と評したい!



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クルエラ・ド・ヴィル、ダルメシアンの毛皮に異様に固執する今までの悪女の印象を覆し、彼女の生い立ちから、ファッションに対する情熱、関わりなど人間性に踏み込んで描き、結果、「類い稀なヴィラン誕生物語!」ではなく、尊厳を駆けた復讐劇としたのが吉と出た。グレン・グローズが、この上ない完成度と名演でアニメの再現をしたのに比べ、エマ・ストーンは、一人の女性としてクルエラを演じて見せた。幼い頃『101匹わんちゃん』で観た極悪人クルエラに感情移入してしまう、大変、興味深かった。

全米のレビューで「ジョーカー meets プラダを着た悪魔」というのがあったらしいが、正に的確! 『プラダを着た悪魔』は、メリル演じる女編集長のぶっ飛び加減で成立していたキャラクター勝ちな映画だったように、本作でもクルエラ以上のヴィラン(ファッション界の頂点に君臨するエマ・トンプソン演じる傲慢な女帝)の存在が、新旧ファッション業界の新旧天才対決だったり、ミステリアスな展開などなど、映画の娯楽性を深めていた。ここでもまた芸達者な大女優によるキャラクター勝ちな部分が大きかったように思われる。



育ての母を不慮の事故で亡くしたエステラ、その事故の真相が判明していくにつれ、彼女の中のクルエラが目覚めていく。と共に、女帝への復讐としてショーをぶち壊そうとあの手この手を使って邪魔をするクルエラ。ワン・ダイレクションの曲のカヴァーを背景に、女帝が開催する品行方正なファッションショーの真横でロック・コンサート風のショーをやったり、女帝を高級車に閉じ込めては、その車の上で派手なドレスを纏い時代の移り変わりを揶揄する、表現方法が実にポップで過激がゆえに、新進気鋭のデザイナーとして注目される。また、そのセンスが良いために、どこか痛快で、爽快たるフラストレーションを醸し出していた。



芸人を目指していたアーサー、デザイナーを目指していたエステラは、生まれつきの悪人ではなかった。社会や運命に翻弄され、次第に心を蝕まれていった行く末に、ジョーカーやクルエラを名乗るようになる。健気な夢老い人が狂気に導かれていく様は何とも言えない悲哀に満ちたものでもあった。ディズニーの実写映画化は、強引な原作改編で大人も楽しめるエンタメ作に仕上げる傾向があったが、『マレフィセント』や『不思議の国のアリス』のような無骨な脚色では無く、アニメへの理屈も通した上で、真っ当なオリジナルとして成立させた、文句なしでディズニーアニメの実写化の歴代トップの出来だと評したい。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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