映画レビュー

【映画レビュー】『クルエラ』ディズニーの実写映画化史上No.1と評したい!



(C) 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

クルエラ・ド・ヴィル、ダルメシアンの毛皮に異様に固執する今までの悪女の印象を覆し、彼女の生い立ちから、ファッションに対する情熱、関わりなど人間性に踏み込んで描き、結果、「類い稀なヴィラン誕生物語!」ではなく、尊厳を駆けた復讐劇としたのが吉と出た。グレン・グローズが、この上ない完成度と名演でアニメの再現をしたのに比べ、エマ・ストーンは、一人の女性としてクルエラを演じて見せた。幼い頃『101匹わんちゃん』で観た極悪人クルエラに感情移入してしまう、大変、興味深かった。

全米のレビューで「ジョーカー meets プラダを着た悪魔」というのがあったらしいが、正に的確! 『プラダを着た悪魔』は、メリル演じる女編集長のぶっ飛び加減で成立していたキャラクター勝ちな映画だったように、本作でもクルエラ以上のヴィラン(ファッション界の頂点に君臨するエマ・トンプソン演じる傲慢な女帝)の存在が、新旧ファッション業界の新旧天才対決だったり、ミステリアスな展開などなど、映画の娯楽性を深めていた。ここでもまた芸達者な大女優によるキャラクター勝ちな部分が大きかったように思われる。



育ての母を不慮の事故で亡くしたエステラ、その事故の真相が判明していくにつれ、彼女の中のクルエラが目覚めていく。と共に、女帝への復讐としてショーをぶち壊そうとあの手この手を使って邪魔をするクルエラ。ワン・ダイレクションの曲のカヴァーを背景に、女帝が開催する品行方正なファッションショーの真横でロック・コンサート風のショーをやったり、女帝を高級車に閉じ込めては、その車の上で派手なドレスを纏い時代の移り変わりを揶揄する、表現方法が実にポップで過激がゆえに、新進気鋭のデザイナーとして注目される。また、そのセンスが良いために、どこか痛快で、爽快たるフラストレーションを醸し出していた。



芸人を目指していたアーサー、デザイナーを目指していたエステラは、生まれつきの悪人ではなかった。社会や運命に翻弄され、次第に心を蝕まれていった行く末に、ジョーカーやクルエラを名乗るようになる。健気な夢老い人が狂気に導かれていく様は何とも言えない悲哀に満ちたものでもあった。ディズニーの実写映画化は、強引な原作改編で大人も楽しめるエンタメ作に仕上げる傾向があったが、『マレフィセント』や『不思議の国のアリス』のような無骨な脚色では無く、アニメへの理屈も通した上で、真っ当なオリジナルとして成立させた、文句なしでディズニーアニメの実写化の歴代トップの出来だと評したい。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※当記事の著作はROCKinNET.comに帰属し、一切の無断転載・再交付は固く禁ずる。


 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 遂にNYタイムズ誌まで?ガキ使の黒塗りメイク批判は行き過ぎだと思う理由!
  2. 『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  3. 【速報レポ】My Hair is Badの初武道館公演を観る!椎木が提示した正し…
  4. 安室奈美恵の引退ツアーを観る!世界中の賛美を彼女に贈りたい!
  5. 【大混戦】#TimesUp運動の影響で本年度オスカー主演男優賞はティモシー・シャ…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】日本で一番悪い奴ら

    (C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会綾野剛の圧倒的勝…

  2. 映画レビュー

    『キングスマン ゴールデン・サークル』エグさ健在!カッコ良さ健在!続編大成功!

    アクションの描き方も相変わらずの巧さだし、それに伴う音楽の使い…

  3. 映画レビュー

    人種差別を逆手に取った今までにない恐怖『ゲット・アウト』に身の毛がよだつ!

    ※ネタバレ注意※ この記事は映画の内容に触れていますので、閲覧…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ハリウッド

    【追悼】アメコミ界の巨匠スタン・リー逝去~映画カメオ出演を振り返る~
  2. 音楽

    【FUJI ROCK直前特集 Part.2】音楽に政治を持ち込むのは是か?非か?…
  3. 邦楽

    RADWIMPS「HINOMARU」が物議!ポップ・ソングの右傾化に不自然さを感…
  4. 音楽

    【徹底考察】ビルボード1位、米英人気過熱、国連演説・・・勢いが止まらないBTS(…
  5. 邦楽

    実は失敗していたサザンの紅白!ユーミンとの奇跡の共演に助けられ拍手喝采!
PAGE TOP