映画レビュー

実写版『ダンボ』大衆娯楽施設が悪者って・・・よく許可が降りたなと思う

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耳が大きいという外見的なハンディを負った小象は正しく『シザーハンズ』などで描かれてきた異質者であり、多くの作品で異質者や弱者にスポットライトを当ててきたバートン監督ならではの実写版になっていたことに賞賛を贈りたい。『ダンボ』こそバートン映画の根源的なテーマ性を持った話であると改めて感じた。同時にダイバーシティが叫ばれる現代において、これほど時代性にマッチした話もない。


オリジナルのアニメ版では動物の視点で物語は進んでいたが、実写版は人間視点で物語が進む。オリジナルで描かれた耳が大きいことの克服とハンディを逆手に取って空を飛んで人気者に成り上がるエピソードは、最初の30分程度でまとめらる。それ以降は、バートン監督独自の話が展開される。
世界的ヒットとなった『美女と野獣』はオリジナルに忠実だったことで異論も出なかったが、実はディズニーの実写化は大半が原作とは異なった話になっている。悪者であるはずの『マレフィセント』に母性を持たせるとか。この『ダンボ』も然りで、人気者になったダンボを大衆娯楽としての見世物にしようと、マイケル・キートンが暗躍し、物語は綺麗事なファンタジーでは語り尽くされない、意表突いた展開を見せる。
このようなオリジナルの解釈を加えることは冒険でもあるが、時には物語に深みを与えたり、何十年も昔のアニメを現代に通じるように脚色させるために必要に感じる。


ダンボを大衆娯楽化させるためにサーカスは買収され、団員たちは巨大な娯楽施設に招かれるも、経費削減であっさり裏切られてしまう。こんなこと言ったら怒ら得れるかも知れないが、キャストが非正規雇用で成り立っている本家テーマパークを皮肉ってるように思えて面白い。バートンが意図してるとは思えないが、大衆娯楽施設がヴィランになっていることを、よく本家は許可したなと感じた。


最後にダンボ母子は解放されるわけだが、故郷が山奥の象の群れというのは些か夢が無いなと感じてしまった。いや、ダンボは耳が大きいだけで立派な象に変わりないんだけど、果たして大自然に帰ることが母子にとって本当の望みだったのかな? 人間側の善意の押し付けにも感じたし、サーカスで一緒に皆で楽しく過ごしましたで良かったんじゃ?

(文・ROCKinNET.com編集部)
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