アカデミー賞

【映画鑑賞日記】メッセージ

出典:http://www.imdb.com/title/tt2543164/mediaviewer/rm922159104

宇宙人襲来映画は腐るほどあるが、その中でも群を抜いて素晴らしい!
この映画の醍醐味は他ならない、異文化との対峙だ。“YOUは何しに地球へ?”を探る物語である。
言語も文字も分からない存在(そもそも言語があるのか、意思伝達という概念があるのかさえ不明。しかも、容姿や造形もグロテスクな(タコ?)異性物)とコミュ―ニケーションをどうやって取るのかという無謀とも言える様子を描いているのだから興味惹かれないわけがない。
これまでは、こういった異星物との対峙の詳細は映画では描かれて来なかった、『ET』のように人差し指合わせて仲良しとか、『インディペンデンスデイ』のように有無言わさず攻撃とか……そういう単純なものでなく、フィクションだからと逃げないのが凄まじいところだ。

しかし、この物語に惹かれる理由は、この行為そのものが人間的であるからだと気付く。我々人類には、遠い過去に、先住民と開拓者が言語も通じずに対話した史実がある。同じ人間にせよ、文化も言語も風習も違う民族同士が対話をしてきたのだから。

特に、彼らが出す丸い煙状の黒い歪な円が文字(正確には文章である)と分かって、その読解を試みる様が面白い。たとえば、私は英語も中国語も喋れないが、英語の長文を読んだ時に、知らない単語ばかりだとサッパリである。しかし、中国語の文章は漢字があるので意味が何となく分かる時がある。それは文字が造形的だからだ。この造形を理解する回路というのは、この映画で言う宇宙人が出す煙の造形を分析する行為に近いと思った。
「私の名前は佐藤だ」と理解させ、相手が煙の円を出せば、それが「お前の名前は佐藤」であることを表している造形であるということになる。
仮に私が中国の文章で、「更」「多」「的」「被」「料」「可」という漢字が文中にあれば、「あ、ここからは有料ページだな」(例がアダルトサイトかい!)と思うのと同じ、そういう漢字の理解に近いもの。東洋的な発想だなと思った。ま、その描写は些か雑なんだけど、言語学の発祥とはこういうものなのかと思った。

この映画は、言語とは何か、コミュニケーションとは何かの根本を描き、相手に対して理解しようとする“意思”が全てだと結論付ける。
主演の言語学者のエイミー・アダムスが賢明なのである。未曽有の汚染が心配される宇宙船内で宇宙服を脱いでしまうくらい、グロイ宇宙人に対して信頼を寄せるのだ。
誠意だとか、信頼だとか、双方の言語文化を理解した上で初めて良好な関係性が成立するという、根底的なコミュニケーション論に納得させられる。
これらのコミュニケーションの結果は、当たり前のかも知れないが、昨今の世界情勢において、それが成されていないではないか? アメリカは分断され、英国はEU離脱する、北朝鮮は相変わらずミサイルを撃つ、性別間、世代間、国家間で、十分な対話が成されいない結果にほかならない。自国の愛国の行き過ぎた閉塞的な世界情勢に批判的なメッセージ性に唸る。

加えて、冒頭で主人公のエイミー・アダムスの娘が逝去するが、これが意外な伏線としてラストに回収される様が見事だ。
異性物にとって、時間は流動的なものではないという。あまり言うと単なるネタバレになってしまうので、言わないが、アカデミー脚本賞ノミネートも納得だ。と言うよりも、ここ10年でここまで緻密なものは無かったくらいの最高のシナリオに身震いする! 宇宙人映画の傑作が増えたと言って過言でない。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. パリピが日常悩んでる嫌なことって何?ストレス溜めない極意がULTRA JAPAN…
  2. RADWIMPS「HINOMARU」が物議!ポップ・ソングの右傾化に不自然さを感…
  3. 映画『アントマン』では味方だった猛毒蟻“ヒアリ”について徹底解説!
  4. 安室奈美恵の引退への想い~安室という現象が現代の日本女性像を変えた~
  5. 実写化史上最も成功していると言って過言でない『美女と野獣』に感動する

関連記事

  1. 映画レビュー

    米国保守の象徴が自省を込めた『運び屋』はイーストウッドの贖罪映画である!

    御年88歳で監督主演、90歳を演じる超人イーストウッドイースト…

  2. 映画レビュー

    『メリー・ポピンズ リターンズ』は果たして本当に必要な続編だったのだろうか?

    王者ディズニーに禁句なし。名作アニメの実写化すれば軒並みヒットさせ…

  3. アカデミー賞

    今年のオスカーの主役、実はマット・デイモンだったんじゃないか説

    司会がジミー・キンメルと聞けば、自ずと頭をよぎるのがマット…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】パッセンジャー

    誰かに求められること、他人を意識した言動が意味を成す。対象があ…

  5. 映画レビュー

    驚異の技術力を示した実写版『ライオン・キング』だけど失った物もある・・・

    驚異的な再現力に脱帽としか言いようがないオリジナルに忠実に再現…

  6. 映画レビュー

    『デス・ウィッシュ』ヘイヘイドクター!ヘイドクター!ブルース・ウィルス外科医に見えない!

    本当にメスよりも銃の方が断然似合う男だ。逆にブルース・ウイルス…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ハリウッド

    【勝手に大予想】ダニエル・クレイグ007卒業で次のボンドは誰になる?
  2. 音楽

    PSY「江南スタイル」が持つYOUTUBE再生回数1位の記録を破ったのは!?【最…
  3. 邦楽

    毎年恒例の大発表!俺が勝手に選ぶ素晴らしき邦楽たち2016!
  4. ライブレポート

    【速報レポ】My Hair is Badの初武道館公演を観る!椎木が提示した正し…
  5. ハリウッド

    『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由
PAGE TOP