映画レビュー

【映画鑑賞日記】ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

fantasticbeast(C) 2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C) JKR.

経済不況、世界情勢が不安定になるとファンタジー映画が売れると言われますが、今も魔法が必要な時代になったのか。ハリポタを超える傑作を予感させる新シリーズ開幕のファンファーレに胸躍るばかりです。

主人公にオスカー俳優として上昇気流なエディ・レッドメインを起用したのが、まず良いですね!魔法動物を愛する、動物愛護者のような優しさと、学者としての知性も感じる主人公を見事に体現させていました。

この映画の脚本は原作者J.K.ローリングご本人の書き下ろしだそうなんですが、ハリポタとは違って、時代設定の精密さ、単純なファンタジー映画で終わらない奥深さまでを踏まえた傑作に昇華させていました。
によって、ハリポタの焼き直しでない、スピンオフとしての失速を感じさせないものに出来上がっていました。
禁酒法などにより「狂騒の20年代」と言われるNYの価値観を基盤に、伏線も張り巡らせてミステリーとして上出来です。

時世と照らし合わせても、この映画は2016年に必要なメッセージであることに気付きます。
舞台は、1920年のNY。多数派である人間「ノーマジ(マジックが使えない=NO MAGIC)」からの根強い偏見と差別によって、魔法使いが抑圧されている時代。それは、EU離脱やトランプ大統領の誕生など、排斥主義が横行している今現在そのもの。
劇中で行われる「魔法使いの弾圧」は時代設定で言う所の「魔女狩り」。1694年にマサチューセッツで起きたキリスト教の異端者であるとされる女性が妖術を使うと危険視され有罪判決(私刑)を受けた「セーレム魔女裁判」という有名な事件がありますが、異端者を徹底的に排除する「魔女狩り」は、現代の移民やマイノリティーを取り巻く環境に何処か通じるものがあります。ローリング氏による一種の警告とも捉えていいかも知れない。

しかし、その抑圧された憎悪感は「オブスキュリアル」という黒いモヤのような怪物となって表現されています。
(社会現象にもなったドラマ「LOST」然り、どうして欧米では強力な怪物っていうのは、こういう無形物なんでしょうかね?ハリウッドは、こういう得体のしれない物の造形制作に弱いのかなと思いますね。)
この「オブスキュリアル」が街を破壊する様子などはハリポタ以上の迫力でビジュアル面で圧倒されます。ライトノベルよりもお子様の絵本的な印象だったハリポタよりも、もっと娯楽性が増していました。老若男女の鑑賞に堪えうるファンタジー映画と位置付けていいかもしれません。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている
  2. 『茅ヶ崎物語 ~MY LITTLE HOMETOWN~』からサザンがエロスを歌う…
  3. 今年2018年のサマソニがガラガラの異常事態!~その原因を探ってみた
  4. 『ブラック・パンサー』を観た!社会風刺と娯楽性が融合したマーベルの新傑作が誕生し…
  5. パリピが日常悩んでる嫌なことって何?ストレス溜めない極意がULTRA JAPAN…

関連記事

  1. 映画レビュー

    『ボヘミアン・ラプソディ』最高の伝記映画にして最高の音楽追体験のできる大傑作!

    身震いがした。全身の細胞が躍動しているのが分かった。それだけの…

  2. 映画レビュー

    『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』こそ民生を理解していない

    薄っぺらい映画だった。奥田民生に憧れる理由は凄く共感できる。自由奔…

  3. 映画レビュー

    『search』を観た!控えめに言っても大傑作!ここ数年で1番の大傑作と評したい!

    控えめに言っても大傑作である。素晴らしいアイディア、完璧な映画だ!…

  4. 映画レビュー

    果たして労働は悪なのか?『ちょっと今から仕事やめてくる』に見る現代社会の新価値観とは。

    いつから人々は“働くこと”をネガティブに捉えはじめたのだろうか? …

  5. 映画レビュー

    映画は権力の腐敗を許さない!『新聞記者』は風刺精神を捨てない映画の鑑だ!

    最近のネット界隈に疲れている。狂信的に現政党を支持するネトウヨ…

  6. 映画レビュー

    『ミスター・ガラス』シャマラン監督流のこじんまりしたアクションが愛おしい

    全身の骨がガラスのように脆いサミュエル・L・ジャクソン、24人…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ニュース

    【歌姫から伝説へ】安室奈美恵に25年分の感謝を!さよなら、ありがとう安室ちゃん!…
  2. 邦楽

    月曜から夜遊びでマツコから「非イケメン宣言」受けたMy Hair is Bad椎…
  3. 映画レビュー

    想定外のラストに衝撃!『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』で初めてアメコ…
  4. ニュース

    原爆シャツ騒動でMステ出演中止になったBTSが犯した罪とは?
  5. ハリウッド

    『マイティー・ソー バトルロイヤル』を楽しむための豆知識をちょこっとだけ紹介!
PAGE TOP