映画レビュー

もはや設定だけの違い?『トレイン・ミッション』はリーアム・ニーソンというジャンル映画だと開き直って観ると十分に楽しい!




© STUDIOCANAL S.A.S.


10年間、勤めた保険会社から突然解雇され、いつもの通勤電車で帰宅中のリーアム・ニーソンのもとに、面識のない女性が現れ、僅かなヒントを頼りに乗客の中から、とある荷物を持った人物を捜し出せば報酬を払うと話を持ちかける。断るニーソンだったが、自分の家族が人質に捉えられたと知り、仕方なく人物探しに奮闘するが、犠牲者が出るなど、危機的状況がニーソンを襲う!

『フライト・ゲーム』の電車版だった。おそらく脚本の飛行機という文字を電車に書き換えただけだろう(笑)とさえ思えるような映画。家族が人質になるのは『96時間』でも済んでいる。隅から隅まで既視感満載! 正しくニーソン映画の焼き直し映画だった。
この『トレイン・ミッション』と、他のニーソン映画との共通項を挙げてみる。

・密室である
・口外してはならない
・乗客が狙われる
・犯人の姿が見えない
・けど、ニーソンの言動はすっかりマークされている
・周囲からはニーソンが不審者だと思われる
・怪しいと思っている奴は大概犯人ではない
・素人であるはずのニーソンがやたらと強い

ここまで似通っていると、もはや開き直りの境地で、許せてくる。しかも、なかなか手の込んだサスペンスが娯楽性高く、毎回、期待を裏切らない。面白い映画とは、こういう映画だと言わんばかりのニーソン・シリーズである。毎回「そんな馬鹿な!」という非現実的で理不尽な条件ではあるが、一気に主人公と観客を不条理な世界に引きづり込み、矛盾も理屈も感じさせる猶予も与えない程のスピード感で物語は展開していく。

ただ、この作品の犯人が警察官であることは特筆すべきだろう。堕ちた国家権力を描くというのは、昨今のアメリカ警官による理不尽な黒人への暴力などへの抗いとも言えよう。非常にパンクな反骨精神に基づいた作品だと思った。



ニーソンという俳優も不思議な俳優である。もともとはアクション俳優では無かったはず。『シンドラーのリスト』に代表されるように、演技派俳優として名を馳せていたが、還暦前後から、『96時間』のヒットを受けてか、アクション映画に次々と出演。御年65歳にも関わらず、本作でも現役感バリバリなのが、格好良い。190cmの高身長も手伝ってか、迫力ある超絶アクションを見せてくれる。もっと早く若いうちにやっとけば良かったのにと思ったりもするが。「これでアクション作品は最後」だと本人は言っているらしいが、思わず新作も期待してしまう。次の作品の舞台は船か? 最終的にはロケットか?(笑)



(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。


 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている
  2. RADWIMPS「HINOMARU」が物議!ポップ・ソングの右傾化に不自然さを感…
  3. アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  4. ロック・イン・ジャパン2017 2日目ライヴレポート
  5. 「時代遅れのRock’nRoll Band」を聴く

関連記事

  1. 映画レビュー

    キュウレンジャーは読売巨人軍だと思った『宇宙戦隊キュウレンジャーTHE MOVIE ゲース・インダベ…

    この夏はハリウッドがスーパー戦隊を本域で映画化した『パワーレンジャ…

  2. 映画レビュー

    実はディスでなく埼玉愛の映画『翔んで埼玉』は理想の多虐ギャグだ!

    なぜ埼玉は「ダサい」のか?埼玉のイメージを下落させた真犯人…

  3. 映画レビュー

    人種差別の本質を鋭くエグるリー監督最高傑作『ブラック・クランズマン』

    時たま衝撃を得る映画を観ることがある。自分が理解していると勘違いし…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】素晴らしきかな、人生

    やりたいことは『シックス・センス』だったのかと思うと脚本の妙を称え…

  5. 映画レビュー

    アニメ革命を起こした大傑作『スパイダーマン:スパイダーバース』に拍手喝采!

    とんでもない傑作アニメ映画を観た歓喜で震えている。アニメ界…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
  2. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 4日目ライヴレポート
  3. ハリウッド

    もはや超人!『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』の撮影舞台裏を知ればト…
  4. ライブレポート

    ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 3日目ライヴレポート
  5. 邦楽

    松任谷由実「恋人がサンタクロース」がクリスマスは恋人と過ごす日という社会的呪縛を…
PAGE TOP