今年で五年目を迎える「ビクターロック祭り」に今年も行った。
特定のレコード会社の音楽イベントではあるけど、ビクターという「色」がないからいい。そもそも、個人的に好きなミュージシャンが多く属しているのがビクターなのである。CD棚を見るとビクターのロゴが並んでいることに驚いたことがあった。本当に素晴らしいミュージシャンが多い。それだけ、スタッフの千里眼やプロモート力が優れている証なのかな。
今年のラインナップを見て気付いたことがあった。
出ているミュージシャンが、大半、三十路後半に差し掛かるおっさんな俺よりも年上なのである。どういうわけか(とりわけ邦楽特有の)フェスは年々、参加者の若年化が目立つ。バンドも世代交代されているから仕方ないだろうが、邦楽フェスがキッズだけのものというのも寂しいだろうと思っていた。
しかし、この日のバンドはベテラン揃いである。自然と観客の年齢層も上がっていた。モッシュも起きない。刺激を求める俺的には物足りなさも感じたんだけど、邦楽フェスはキッズだけのものではない。幅広い年齢層にも受け入れられるフェスの在り方を考えれば、この光景は良いものだなと感じた。
●never young beach
細野晴臣や大滝詠一など大御所から、くるりや、最近ではsuchmosと、脈々と受け継がれているシティ・ポップの系譜を2010年代に感じたことの安堵感があった。良い具合の脱力感が瑞々しくて朝イチに見るステージとしては心地良かった。彼らがこうして今の聴衆に受けるというのは、やはり、いつの時代にも都会ロックの快適な中流の無気力を人は求めているんだろうと思った。
●ORANGE RANGE
大衆バンドからライヴバンドへと方向転換して久しい。新曲「チラチラリズム」をきちんと際立たせて見せたのが偉い。ただ、やはり懐メロになりつつある。新曲ではリアクションが薄いのに「上海ハニー」「イケナイ太陽」では大盛り上がりになってしまう。レンジの本気は、この程度ではないと彼らの将来を見据えると少し惜しい気もしたけどね。
●サンボマスター
このフェスは売れっ子でも持ち時間は30分程度とフェスの中でも特に短い。そんな限られた時間内でもサンボは全力で手を抜かない。いつもの温度感で、愛と平和を訴え、ロックを届ける。熱気と感動を詰め込む。人を励まし、未来を明るく照らす。流石としか言いようがない熱さに感動しか覚えない。最新曲「YES」に涙腺緩みながら、今年もたくさん会おう!と心に決める。
●竹原ピストル
いきなりリハが始まる。ビートたけしの「浅草キッド」吉田拓郎「落陽」と名曲中の名曲を歌う。しかも、絶叫し既に本域だ。この男にはリハも本番も無いのか。しょっぱなで披露した「よー、そこの若いの」の途中で噛んだので、“悔しくて今日寝れない”と、最後に再披露。会場の拍手も温かかった。アコギ一本で、あそこまでの熱量を発する・・・・・・本物だと改めて感じた。
●KICK THE CAN CREW
昨年はフリースタイルダンジョンが流行したり、Creepy NutsやSKY-HIなど、閉塞的な時代に強烈な風刺ラップを発するラッパー達が登場したりする中、14年ぶりに復活したキックは相変わらずの大衆ポップに徹していた!“らしさ”で勝負したことの潔さと、フェスで見るには調度いい軽薄さが愉快だった。下がってんのだったら、上がってぇ~る!方がいいに決まってるもんね。
●レキシ
正直だいぶ前から時間が押していたんだよね。会場中の巻け巻けオーラが半端なく、けど、それに反比例して増える稲穂。レキシの人気が、いよいよ凄いことになってきているのを肌で感じる。少し危機感もある。もっと片隅で馬鹿げたことをしてる方が性に合ってると思うから。ボケも巻き目。お得意の脱線も抑え気味。ちょっと今日の池ちゃんは物足りなかった(笑)
●Dragon Ash
DAがやはり凄いなと思うのは楽曲の質、演奏力の高さは言うまでもなく、「百合の咲く場所で」や「Fantasista」等の往年の人気曲の中で新曲が聴き劣りしないところだと思った。「Mix It Up」最高にカッコ良かったなぁ。20年前に自分達をスカウトした逝去されているビクターのディレクターの思い出話を語るkjの姿を見て、ビクター愛してるんだなと少し感動した。
ビクターには本当に素晴らしいアーティストがまだまだいる。今日出演しながらも見れなかったアーティストもいる。個人的にはフェス始めが毎年これになっているのだが、準備運動と言ったら言葉が悪いが、年明けで眠っている身体とロック魂を呼び起こすには、このくらいの規模感と温度感が調度良かったりもする。来年もタイミングが合ったら来たいと思ったフェスだった。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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