映画レビュー

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ハリウッドと日本映画の差を感じざるを得ない圧倒的娯楽作!

(C) 2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.


日本のゴジラが人形劇に思えるくらいに力の差を見せつけられた気がした。凄いのひと言。大スクリーンで見ることを想定して計算された怪獣のサイズの描き方には、本当に観たかった怪獣の姿が見れて何よりも嬉しかった。


最近の日本製ゴジラの傑作である『シンゴジラ』がポリティカル・ムービーに徹して終わったのに比べて、この『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は開き直ったくらいに娯楽作としてド派手なハリウッド映画しちゃってるのが気持ち良く、「ハリウッドが本気出してゴジラを作ると、こうまですごい迫力になる!」というのをマジマジと見せられ、ぐうの音も出ない感じだ。その圧倒的迫力は『シンゴジラ』が公開された際に、自衛隊の武力うんたらかんたら並べられた御託が馬鹿馬鹿しくなるほどだ。これ以上の怪獣映画が、この先出て来るとも思えない。ゴジラとギドラの二大怪獣のバトルは、怪獣映画が目指すべき頂点とも言える迫力で、正に怪獣映画の理想形が見事に再現されていたと言って過言ではない。街は破壊されるだけ破壊され、ディザスター映画のような終末感だけが残り、もはや脱力感に苛まれるほどの、良い意味で見疲れした。

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例えば、これに匹敵する映画として、ギレルモの『パシフィック・リム』なんかで怪獣が大暴れする様は見てきたはずだが、本作の方が優れていると思えるのは先述のような描写の妙と、形態にあると思った。ハリウッドは空想生物の創造に乏しいと思ったのは、14年の前作『GODZILLA』でゴジラに対抗する怪獣がダサすぎたのを見てから。本作でも名もなき怪獣がちょこっと出て来るがどれもダサい。ゴジラをはじめギドラやモスラ、ラドンなどの見た目が圧倒的にカッコイイのだ。

例えば、ギドラが翼広げてから光線を放つ姿は、己の恐怖と威圧感を体現させてたし、成虫になったモスラが羽を広げた姿は壮大で美しかった。海面すれすれのところでラドンが体位を回転させながら戦闘機を次々と駆逐していくスピード感ある姿も秀逸だった。数億ドルをかけて日本から輸入したキャラをこうもアップデートされちゃ本国の我々も何も言えない。また、「♪モスラ~や」などの日本版の音楽を引用して怪獣たちが登場するという、シリーズ伝統をしっかり踏襲していることも歓喜の想いに拍車をかけた(そういえば、ザ・ピーナッツ的な存在は出て来なかったなぁ)。


主人公家族の家庭内のゴダゴダも邪魔で(確かに怪獣の行動原理に関わっているにせよ)、怪獣の存在理由が人間の欲望の果てに起こった環境汚染や戦争を浄化させるものというのが些か既視感ある安っぽい設定だなと思った。人間ドラマが器質的に機能しておらず、中だるみも正直あったと思える。渡辺謙の勇姿だけは印象深かったが。
ゴジラをあくまで守護神とし、ギドラは侵略者であるという善悪を付けたところも、日本の『怪獣大戦争』シリーズを踏襲しながら、ゴジラの英雄性を維持させたこと、勧善懲悪で終結できたのも良かった。
同時に米国にはゴジラのような愛され怪獣としてキングコングがいる。20年に遂にゴジラはコングと対決するようである。いわば国を代表する日米怪獣対決。どうなることか今から楽しみで仕方ない。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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