映画レビュー

『アド・アストラ』映画的醍醐味も希望も描けないスッカスカな駄作

(C) 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation


くっそつまらない!

大概の映画は表現の存在として認める性質だが、この『アド・アストラ』は全く意味を持たないスッカスカな映画で、久々に時間を無駄にしたと思わずにいられない超ド級の駄作だった。こんな映画に希代のスターであるブラピが、よく出演OKしたなと思う。ブラピの無駄遣い。

人類が踏み入れたことの無い宇宙の領域(海王星)で消息不明となった父親を探すためにブラッド・ピットが宇宙に旅立つ話。余計な演出はなく、登場人物の感情も出来るだけ抑えられ、淡々と叙事的に語られるシナリオは、例えば『ゼロ・グラビティ』のような娯楽性に乏しく、果てしない壮大な旅である『インタースティラー』のような奇抜性にも及んでいない、非常に退屈なものだった。

[PR]


宇宙に旅立つ際に映画が描く姿勢としては、未知との出会いへの好奇心か、不安感のいずれか。
この映画は明らかに後者で、登場人物の感情どころか、BGMも廃された物静かなストーリーテリングは、どことなく不気味さを覚えさせる。ミステリアスな雰囲気の末に主人公は何を見出すのか? この映画は何を提示するのか? だけを期待して観ていたが、親父を説得して連れ戻そうとしただけ。その過程も、根暗な中年男の愚痴を聞いてるだけで、ドラマ性も娯楽的盛り上がりも無く、ただただ時間が経過するのを耐える苦行に近い2時間であった。

[PR]


未知なる宇宙への開拓は、人類の未来が無くてはならないと思っている。この監督がオマージュしたと言われる(出来てないけど)『21世紀宇宙への旅』で語られたAIとのやり取りのように、たとえ、恐怖でも絶望でも人類の進歩が感じられないと意味を持たない。

「海王星の壮観な景色の下には何も無い」ってされるだけでは、宇宙に希望は無いということになる。人間の科学では判明できない部分には何も無いよって、映画としては夢もヘッタクレもない結論ということになる。
確かに主人公のブラピは、略奪を繰り返す人類に辟易としているようなことを言っていたし、「宇宙の探索は現実逃避」だとジャック・バウアーの実の父親も言っていた。しかし、それでは映画としては味気ない。宇宙には無限の可能性があると思わせるのが虚構の出来る業である。その放棄の行く末に、希望はなく、単に宇宙の隅で親子愛を叫ばれても何の感情も突き動かせられなかった。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]



[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 【ヒットの勝算はネット戦略にあり?】恐怖のピエロ映画『IT』が公開第三週で興収首…
  2. マーベルが『ブラックパンサー』でヒーロー映画初のアカデミー作品賞を獲得するために…
  3. アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  4. ノエル兄貴「ロックが衰退したのは『フレンズ』が原因」と独自の分析を披露!
  5. ポール東京ドーム初日を観た!

関連記事

  1. 映画レビュー

    【報道とは何か?】映画という名のワイドショーだった『フロントマン』

    アメリカの大統領選は完全にエンターテイメントなんだなと思っている。…

  2. 映画レビュー

    『ハンターキラー 潜航せよ』もはや映画で米露が争う時代は過ぎた

    ロシアとアメリカの軍潜水艦が爆撃される事件が発生と聞けば「20…

  3. 映画レビュー

    【ファン・関係者御免!】これほど共感できない作品も珍しい『東京喰種』を徹底批判!

    漫画原作を読んでいない者が、たった二時間程度の実写化を観て批判する…

  4. 映画レビュー

    大根キアヌが暴走するだけの荒唐無稽なSF映画の駄作『レプリカズ』!

    出来そうで出来ないがSF映画のリアリティこの手のSF映画を許容…

  5. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】素晴らしきかな、人生

    やりたいことは『シックス・センス』だったのかと思うと脚本の妙を称え…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ライブレポート

    【即日ライブレポ】KEYTALKの横浜アリーナ公演は到達では無く“門出”だった!…
  2. ニュース

    アリアナ・グランデのライヴ会場で起こった爆発テロについて
  3. 映画

    是枝監督『万引き家族』がカンヌで最高賞!カンヌにおける日本映画の歴史と、今回の受…
  4. ニュース

    今年2018年のサマソニがガラガラの異常事態!~その原因を探ってみた
  5. ハリウッド

    【ヒットの勝算はネット戦略にあり?】恐怖のピエロ映画『IT』が公開第三週で興収首…
PAGE TOP