アカデミー賞

単なる恋愛ミュージカルをも超えた人生賛歌!それが『ラ・ラ・ランド』!

(C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

もう、言いたいことが山ほどあるくらいの興奮を貰った、人間愛、映画愛、音楽愛、夢追い人愛、LA愛・・・全てのものを肯定し、愛する、とびっきりポジティブで、観ていて自然と笑顔になれる大傑作!『セッション』に続き、度肝を抜かせたデミアン監督の若き才能に、心から拍手を贈りたい!

惜しくもアカデミー賞を逃したわけだが、ミュージカル映画の傑作が生まれる時代背景には、必ずと言っていいほど、混沌とした世界情勢がある。
『マイ・フェア・レディ』や『サウンド・オブ・ミュージック』が誕生した1964~65年は、第二次大戦後の経済が急成長に伴い、核戦争の脅威が世界中を覆った時代だし、『シカゴ』が誕生した2002年は9.11後の傷付いたアメリカと、イラク戦争が始まる狭間だし、『ヘアスプレー』が誕生した2007年はサブプライムローン問題を発端としたアメリカの住宅バブル崩壊の頃だ。

確かに、『ムーンライト』は人種差別、貧困、DV、ドラッグ、LGBTなど現代が抱える様々な問題を集約したような映画で、オスカーとは時代性と共にあるべきだと思っている、古株映画ファンとしては、同作が作品賞に輝いたことは大変うれしいのだが、それでも『ラ・ラ・ランド』がこうも世界的ヒットを記録し、話題となり、評判も上々な背景には、欧州各国のナショナリズムの台頭、トランプ政権発足後の排他主義の横行など、キナ臭い現代というバックグラウンドがあるからこそだろう。

そんな時、人々は映画に華やかさを求める。豪華絢爛、煌びやかな、非現実を劇場に見出す。実際に、OPの高速道路の渋滞シーンから、いつの間にかブロードウェイかのような華々しいミュージカル・シーン=シュールレアリスムへの移行をさり気なく行う。このリアル世界から、非現実=シュールレアリスムの違和感ない移り変わりこそが、優れたミュージカルと定義づけるに重要なファクターとなる。個人的に名作と思ってる『マイ・フェア・レディ』『美女と野獣』『シカゴ』のように。

それと、同作は<夢追い人>の応援映画でもある。
来日時にライアン・ゴズリングは「時に才能があっても運に恵まれずに花開かない人もいる、残念なことなんだ」と話した。
劇中のエマもライアンもガムシャラだった。夢の実現に恥もかいた。虚しい時間をたくさん過ごし、悔しい思いもたくさんした。決して、楽しい場面ではない、けど、この姿こそ美しく愛おしく思えた。若い頃に何かになろうとした経験があれば、共感できるだろう。
デミアン監督も映画監督を目指す前には、ジャズ・ドラマーを目指してた、理想的な現実ではない。ラ・ラ・ランドという語源がLAを指すと同時に、現実離れした世界を意味する。理想の世界だ。それが、エマとライアンが空白の数年後に再開したと同時に走馬灯のように映し出される。出会った瞬間にキスを交わし、お互いの夢もトントン拍子で叶い、結婚し、子供にも恵まれる。カラフルな美しい色彩と、心安らぐBGMと共に、正しく夢心地な非現実の、ラ・ラ・ランドを観客に味わわせてくれる。素敵な映画体験だ。

結局、二人は別の道を歩むことになるが、それでも、その道を生きていくという結論に達する。デミアン監督がジャズ・ドラマーでなく、監督としてオスカーを手に入れたように、理想でなくても人生は美しい。そう、この映画は、全ての夢追い人を肯定する人生賛歌なのだ。

(文・ROCKinNET.com)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. またもコンサート会場が狙われる「米国史上最悪の銃乱射事件」から音楽ライヴ運営の将…
  2. 『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬…
  3. 『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている
  4. パリピが日常悩んでる嫌なことって何?ストレス溜めない極意がULTRA JAPAN…
  5. 『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由

関連記事

  1. 映画レビュー

    俺が勝手に選ぶBEST映画2016

    今年も残りわずか!早いですね!毎年恒例の大発表!俺が勝手に選ぶ映画…

  2. アカデミー賞

    【映画鑑賞日記】メッセージ

    宇宙人襲来映画は腐るほどあるが、その中でも群を抜いて素晴らしい…

  3. 映画レビュー

    俺が勝手に選ぶBest映画2013

    こうなったら毎年言ってやろうと思うのですが、俺も大学で映画を専攻してい…

  4. 映画レビュー

    『インクレディブル・ファミリー』14年ぶりの続編でも衰えぬ娯楽性と2010年代に通じる#metoo精…

    前作が14年前だというから嫌になる。しかも、ついこの前感があるから…

  5. 映画レビュー

    『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』こそ民生を理解していない

    薄っぺらい映画だった。奥田民生に憧れる理由は凄く共感できる。自由奔…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 邦楽

    サザン40周年ライヴをLVで観る!~親近感こそサザン最大の魅力だと再確認する~
  2. グラミー賞

    今年のグラミー賞で明確になった黒人音楽(RAP/HIPHOP)劣勢の事実と、ブル…
  3. 映画レビュー

    『ブラック・パンサー』を観た!社会風刺と娯楽性が融合したマーベルの新傑作が誕生し…
  4. 映画レビュー

    俺が勝手に選ぶBEST映画2016
  5. ライブレポート

    METROCK 2017 1日目完レポ
PAGE TOP