映画レビュー

時代と逆行する想定内のキムタク映画『無限の住人』

(C) 沙村広明/講談社 (C) 2017映画「無限の住人」製作委員会

黒澤明の『椿三十郎』のラストシーンを思い出した。三船敏郎と仲代達矢のいきをもつかせない緊迫した瞬秒の決闘シーンである。(織田裕二のリメイクで散々なことしたのも覚えているが)何が言いたいかと言うと、この『椿三十郎』で、三船は刀をさほど抜かない。だからこそ、ラストのあの名シーンが際立ったと思っている。
それに対し、この映画、年中、刀を振り回してるのは見っとも無いこと、この上ない。殺陣の美学に反する、あまりに酷い時代劇に、久々に観疲れをしたことで、黒澤映画のような優れた時代劇を否応にも思い出したのだ。
グロテスクとも捉えていい過剰な“見せ過ぎな”チャンバラの連続は、やかましさと、うざったさが際立つだけで、迫力が飽和化して娯楽性も欠如する悪いパターン。

三池作品ということで、ある程度の覚悟はしていたが。まるで『キル・ビル』のような低俗な暴力映画と大差の無い、手足が飛んでいく描写には辟易とするだけだった。
今の時代、チャンバラは求められていないのだ。『花よりもなほ』『武士の家計簿』『殿、利息でござる』など、2000年後半から刀不要な時代劇映画が多く作られている時代性に背いたが、決してその冒険が成功していない。
そもそもが、血糊は不要なのである。日本人は、血など見たくないのだ。何よりも「水戸黄門」や「大岡越前」など、斬られても無傷な時代劇が長年に渡って支持されていることに表れているではないか。

三池監督は、もう映画撮るな!

タレントパワーが急落した木村拓哉にして、この内容で、誰が観たいと思うのか?
代わるようにして、福士蒼汰、市川海老蔵、戸田恵梨香、満島真之介・・・と、脇役が旬で豪華なのも頷ける。けど、それも力不足だったようだ。同時期公開の若手俳優総出演の菅田将暉主演『帝一の國』(初登場4位)にも負け(初登場6位)、公開初週で2週目の『映画クレヨンしんちゃん 襲来! 宇宙人シリリ』(5位)にすら惨敗しているありようである。キムタク神話崩壊もいいところだ。やはりSMAP解散時の、自分を育ててくれたマネージャーへの恩義を通さずに、裏切ったイメージを自ら植え付けたのが良くない。恩や義理も通せないのに、侍役をやるというのも妙に合点がいかない。

これさ、福士蒼汰を主演にしてキムタクを悪役にした方が、よっぽど話題になったんじゃないかと思うのだが?(笑)

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 13年ぶりロッキンに出演したサザンが凄かった!ROCK IN JAPAN史上最大…
  2. サンボマスター vs My Hair is Bad 男どアホウ夏の陣!日本ロック…
  3. 2018年も大活躍間違いなし“次世代イケメン俳優”を青田刈り!
  4. 半漁人の勝利!90回目のオスカー発表!
  5. UVERworldの男祭り遂に東京ドーム実現!でも女性CREWからブーイング?

関連記事

  1. 映画レビュー

    横浜流星と中尾暢樹の戦隊俳優が魅せる感涙の王道青春映画『チア男子!!』が熱い!

    いい映画を観たなというのが率直な感想だ。朝井リョウ原作の青…

  2. 映画レビュー

    何故か『ヴェノム』が可愛く見える不可思議?最恐で最高のダーク・ヒーロー誕生!

    ヴェノムは既に2007年の『スパイダーマン3』に登場済みヴェノ…

  3. 映画レビュー

    愛され系映画キャラの理想形『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』

    今回はシリーズ中でも最も笑えると思うくらい、下ネタ、社会風刺、毒舌…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. テレビ・芸能人

    テレ朝スーパー戦隊の放送時間変更の暴挙は吉と出るか?
  2. 映画レビュー

    『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬…
  3. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 2日目ライヴレポート
  4. 映画レビュー

    俺が勝手に選ぶBEST映画2016
  5. ライブレポート

    【速報レポ】My Hair is Badの初武道館公演を観る!椎木が提示した正し…
PAGE TOP