ハリウッド

スコセッシ監督のMCU批判は映画業界の行く末を案じた愛情表現だと思う

Axelle / Bauer-Griffin / FilmMagic / Getty Images

スコセッシのマーベル映画に対する「映画じゃない」発言は衝撃的であり画期的な出来事だった。しかし、その発言は多くのマーベルファン(主にキッズ)によって批判が湾曲され違う意味合いとなって、一人歩きしたようにも思える。ここで簡単にスコセッシの発言と、その真意を振り返ってみたい。

スコセッシがマーベルを映画じゃ無いと言ったのは、マーベル作品はテーマパークであり、他者の感情や心に訴えかけようとする映画ではないからだとする理由が最も大きい。しかも、『エンドゲーム』が歴代トップとなるなど、興収的にも、その勢いが拡大化しており、ベテラン新人関係なく、その類いの映画に出演することがステータス化している。そうなれば、若手の監督がオリジナルの脚本を書いて許容される隙間が無くなり、業界全体が似通ったコミック映画のフランチャイズ関連作に埋もれることを危惧した発言であることは明白だ。

映画館がアミューズメントパークになりつつあります。それは素敵なことだと思いますが、すべてが飲み込まれてしまってはいけない。(マーベル映画の制作者たちに対して)彼らの仕事はすごいと思いますが、私の仕事ではない。「映画とはああいうもの」と観客に思わせてしまっている。

後者は「映画は他者の心に訴えかける」発言にあるように、心情を丁寧に描いてきたスコセッシならではの理屈と言えよう。実際に、スコセッシはDC映画『ジョーカー』が自身の監督作『タクシー・ドライバー』に感化されていることを知り制作段階からアドバイスを求められている、結果、『ジョーカー』は観客に強いインパクトを残し世界的ヒットを記録している。

[PR]


では前半の「映画館がアミューズメントパークになりつつあり、すべてが飲み込まれてしまってはいけない」は、何を意味するか? なぜ、希代の巨匠がここまで言ったのか、それを紐解くには、スコセッシの最新作『アイリッシュマン』を取り巻く映画業界の実情環境の厳しさを理解すれば容易になる。
『アイリッシュマン』は、なぜNetflix作品となり、大規模な劇場公開をしなかったのか。
理由はこうだ。

・スコセッシの前作『沈黙』の低興収の影響で映画が作れない
・ハリウッドも従来の映画スタジオが経営難で閉鎖されている
・映画制作が出来る場と資金の提供をNetflixが受け持ってくれた
・それが原因で、特殊メイクやCGの予算に簡単にYESが出なかった
・スピルバーグがNetflixはオスカー候補じゃ無いと憤慨
・なので仕方なく劇場公開を小規模でやった
・これじゃ映画制作の場が無く、若手のクリエーターが育たない

要は、映画業界がドル箱を探し過ぎており、映画をアートとして扱っていないことが垣間見える。産業である以上は仕方ないことなのかも知れないが、多様性を失うなどあってはならない。オリジナルの脚本での映画が作られ、新進気鋭の才能が生み出されなければならない。そういったベクトルとは違った将来像に向かってるハリウッドへの警笛だったと思えば、スコセッシの発言は映画愛に満ちあふれていると言えないか?

にも関わらず、スコセッシを「二流監督」呼ばわりする。マーベルキッズの見苦しさは頂けなかった。世代じゃないから知らないは、要するに知識の無さを露呈してるだけで、自らを情報収集能力がない・映画の歴史を知らないアホだと認めてるようなもの。先代に敬意を払えなどと説教じみたことは思わないが、スコセッシは現役の映画監督であり表現者である。ここは冷静に発言の真意を理解しなければならない。ちなみに、最後に断りを入れておくが、そんな私も部屋中マーベルグッズだらけのマーベルオタクである。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]




[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…
  2. 何故「バルス現象」は起きるのか?その理由は日本特有の国民性と風土にあった!
  3. ELLEGARDEN復活ライヴを観る!10年の活動休止の先にあった変わらない尊さ…
  4. ロック・イン・ジャパン2017 2日目ライヴレポート
  5. またもコンサート会場が狙われる「米国史上最悪の銃乱射事件」から音楽ライヴ運営の将…

関連記事

  1. ハリウッド

    『アナ雪』続編のエルサ役はテイラーかリアーナ説浮上!?

    2014年に世界的大ヒットした『アナと雪の女王』。昨年に続…

  2. ハリウッド

    世界各国で空前の大ヒットを記録中の『ブラック・パンサー』が歴代5位の初週末記録を達成!

    既に本国アメリカでは公開されているマーベル映画『ブラック・パンサー…

  3. アカデミー賞

    ジョディ・フォスターが遂にカミングアウト

    先日のゴールデン・グローブ賞で話題をかっさらったのは他でも…

  4. 映画

    SWが妖怪ウォッチに負ける?日本という国は奇っ怪なり!

    先週末に封を切った『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が全…

  5. ハリウッド

    実写版『美女と野獣』が異例の大ヒットを記録中!

    エマ・ワトソン主演、名作アニメの実写版『美女と野獣』が異例…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ハリウッド

    『マイティー・ソー バトルロイヤル』を楽しむための豆知識をちょこっとだけ紹介!
  2. 映画レビュー

    実写化史上最も成功していると言って過言でない『美女と野獣』に感動する
  3. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 2日目ライヴレポート
  4. 音楽

    アリアナ慈善LIVE「One Love Manchester」を観て感じたこと
  5. ライブレポート

    【ライヴレポ】ワンオク初の東京ドーム公演で見た“世界基準のバンドの風格”に圧倒さ…
PAGE TOP