韓国映画『パラサイト』ナイトだった今年のオスカー
大番狂わせの作品賞を密かに期待してた映画ファンも多かった?
前日に思った。明日のアカデミー賞は『1917 命をかけた伝令』が作品賞を獲って、トントンで終わるんだろうな。けど、『パラサイト 半地下の家族』が獲る大番狂わせが起こったら面白いのにな、と。まさか、それが実現するとは夢にも思っていなかった。アカデミー賞の92年の歴史で史上初めてアメリカ制作以外の作品が作品賞に輝いた! 作品賞の発表に近づくにつれ、脚本、監督と主要賞に選ばれるのを見ていて「あ、今夜はポン・ジュノのための授賞式だ」と感じるようになる。結果、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞と獲るべき賞は、全部かっさらった。
言ったらオスカーなんてさ、ハリウッドの映画職人の投票合戦なので技術的に優れた『1917』が獲るに決まってる。けど、作品賞の投票は順位ポイント制なので、『 #パラサイト 』が逆転する可能性も十分にあって、この大番狂わせが見たくて明日が楽しみなんですよね(笑)#アカデミー賞 #Oscars pic.twitter.com/SeZZk0kOzG
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) February 9, 2020
なぜ『パラサイト』は作品賞が獲れたのか?
「白過ぎるオスカー」と批判されるようになり、アカデミー賞の白人至上主義打開のため、国籍や年齢など多様な会員を増やした。つい最近まで約6000人だった会員数は現在8000人程までに増え、外国人の比重も大きくなった。北野武や渡辺謙なども資格を持つ。アカデミー賞は本来ハリウッドの職人が同僚を褒め称える内輪宴会だったが(そもそものオスカーの発祥が映画界における大手制作会社と労働組合の調停をする機関が今のアカデミー賞であり、それが組合に賞を与えることに起因する)、ハリウッド映画をさほど観ないという会員も存在するのだ。このダイバーシティの変革がようやく結果として芽が出たのが今回の結果だと思う。
2000年には『グリーン・デスティニー』が作品賞含む10部門にノミネートされたが、あの映画は台湾・中国・香港・アメリカの合作でアメリカの資本が入ってるので、純粋な外国映画と言いがたい。それと比べると韓国独自の制作である『パラサイト』が作品賞を獲得したことが、どれだけ快挙か分かるだろう。
多様な会員と誰もが好む娯楽作が決めてだったか?
作品賞の投票は、この作品!と作品を限定するのでは無く、順位を付けるポイント制なので、票が割れても最後まで結果は分からない。『グリーン・ブック』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ムーンライト』と、ここ最近の作品賞がどんでん返しであることが物語っている。加えて、先のアカデミー会員が多様的になったことで、『パラサイト』にポイントが加算されたと分析する。それなら、昨年の『ローマ/ROMA』が獲ってもいいじゃないかと思われるだろうが、正直あの淡々とした作風に対し好みが分かれる映画だった。『パラサイト』は娯楽として純粋に面白いのもポイントが集まった理由ではあろう。
スコセッシに対する敬意を忘れないスピーチに拍手喝采
私の大切な言葉「最も個人的なことは、最もクリエイティブなことだ」この言葉は偉大なマーティン・スコセッシの言葉です。私はスコセッシから映画を学んだ。
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会場総立ちでスコセッシに拍手!落ち目と罵ったMCUキッズ、これがスコセッシに対する世界の評判です#アカデミー賞 #Oscars #パラサイト pic.twitter.com/THAy44Rvvh
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) February 10, 2020
また、監督賞を受賞した際のポン・ジュノのスピーチが感動的だった。
ありがとうございます。まだ若くて映画を勉強していた頃に大事にしていた言葉があります。「最もパーソナルなことが最もクリエイティブだ」。この言葉は、偉大なマーティン・スコセッシの言葉です。私はスコセッシ監督の作品で映画を学んだのです。同じ賞にノミネートされただけでも誇りなのに受賞するとは。
スコセッシに会場中の視線が向き、自然とスタンディング・オベーションが沸き起こる。スコセッシも涙ぐんで、ポン・ジュノに礼を贈っていた。今年のオスカーのスポットライトは、このシーンだったと思う。
ちなみに、スコセッシ監督作の『アイリッシュマン』は作品賞候補のうち、唯一受賞無しという結果に終わったのが意外だった。やはりNetflixに対する業界の視線はまだ冷たいと言うことか。
【その他の雑記】役者賞は順当、松たか子もビリーも良かった!
レニー・ゼルウィガーは相変わらずスピーチがつまらん!
役者の賞は想定内だったので特筆すべきことはないが、ホアキン・フェニックスも行儀良いスピーチで安心したし(動物愛護などの的発言もあったが、それは彼の信条であるので想定内だと思う)、ブラッド・ピットの助演男優賞は嬉しいし(こっちは思いっきりトランプ大統領の弾丸裁判を皮肉ったが)、レニー・ゼルウィガーは相変わらずスピーチが下手だった(笑)ローラ・ダーンは助演女優賞だということも忘れるだろうってほど存在感なかった(逆にだからこそ助演として優れてる?)。
また、松たか子が日本エルサとして日本人で初めてアカデミー賞の舞台で歌唱した姿も凜として格好良かったし、追悼コーナーでビートルズの「イエスタデイ」を歌ったビリー・アイリッシュの歌声も心に染み入った。
今後のアカデミー賞は変化するのか?
歴史的な受賞結果となったアカデミー賞。来年以降の結果に注目したい。意外にハリウッド至上主義に戻ったりするんだよな~(ハル・ベリーが主演女優賞を獲って以来、一人も有色人種の女優が主演女優を獲ってないとか、あるんだよ・・・・・・)
(文・ROCKinNET.com編集部)
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