映画レビュー

調和が乱れた現代に何を信じるかを示した『天気の子』はアニメを超えた大傑作映画だ!(※ネタバレ有)

©『天気の子』製作委員会

※注意※
この記事は映画の内容に触れております。
ネタバレになりますので、未鑑賞の方は絶対に当記事を読まぬようにお願い致します。
ご判断は読者様に委ねますが、何卒ご留意の程よろしくお願い致します。

新海節炸裂の新しい感動超大作が誕生したようだ!

梅雨が長引く2019年初夏にマッチする内容

バケツ5杯分の涙を流し?、今目が腫れぼったくなっている(笑)
前作『君の名は。』のプレッシャーを見事に押し退け、評価に臆することなく完成させた傑作『天気の子』に、ただただ素晴らしいと世界中の称讃の言葉を新海監督に贈りたい、そう思った!
2019年、梅雨が異常に長引き、現実世界でも夏らしさや青空を求める7月下旬。僕らはスクリーンで天気にまつわる不可思議ながらも愛しい物語を目にする。この感動を胸に、これから新しい季節を迎えられる喜びを噛み締め、全身が浄化され、正に心が晴れた気分だ。

悩める少年少女の奮闘する姿が現代的だ

雨が降り続ける東京は混沌とし、街は薄暗く、まるで生気を失ったような表情を見せていた。その中で、主人公の陽菜は、祈れば必ず天気が晴れる能力を身に付け「100%の晴れ女」となる。偶然にも家出少年の帆高と出会い少女の運命は数奇な方向に転がっていく。両親に許可も得ずに家出し路上生活ギリギリで過ごす少年、幼い弟と二人暮らしの少女、彼らは決して生活に困窮した表情を見せなかったが、決して恵まれない少年少女が薄暗い東京を舞台に奮闘する様は、実は若者を取り巻く深刻な社会性を含んでいるように見える。しかし、モテモテ弟の使い方が絶妙だったなぁ(笑)

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人力を超えた調和が崩れた時に何を信じるか?

©『天気の子』製作委員会

2018年の西日本豪雨で甚大な被害を被ったりと、日本だけでなく異常気象が世界各国で起き、地球の天候は完全に狂っている。劇中で帆高も言っていたが「人の感情は天気で決まる」。日照時間の少ない北欧の人は精神疾患に掛かり易いし、逆の南半球の国々は音楽の発祥の地でもあってか、歌って踊って愉快な民族が多い。如何に天候が人を左右するかが分かる。しかし、だからと言って科学が発展しようが天候を前にすると人間は無力で、どうすることも出来ない。ただ、黙って対峙しなければならない対象。

混沌の中で「愛にできることはまだあるか」が問われる

そんな大きな力が調和を失った時に、人はどうするのか? “何を信じて生きていくか?” そんなシリアスなテーマ性を、こんなにも切なくもロマンチックな恋愛映画に昇華させるのだから、新海誠の発想というのは凄まじい。まさにRADWIMPSの主題歌「愛にできることはまだあるかい」なのだ。天気と恋を天秤にかけた時に帆高が出した答え。彼が信じる愛こそが正解だと結論付ける姿勢は、混沌とする現代の中で「生きていく時間の中で何に光を見出すべきか?」悩む現代人への生き方のひとつの回答を示しているように思える。

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『君の名は。』と似た部分もあるがセルフ・カヴァーになっていない!

3年前の『君の名は。』でも同じく自然災害が描かれたが、そんなシリアスな設定を青春期の淡い恋と融合させ、日本のポップ・カルチャーの象徴として成立させた手腕に感動を覚えた。決して『君の名は。』の公式をなぞるに陥らず、全く新しい創造を成し遂げ成功させた新海監督に脱帽だ! RADWIMPSの新曲が流れ、まるでMVかのような演出がされているのも「前前前世」で既に観たものだったが、今回は「愛にできることはまだあるかい」「グランドエスケープ」「風たちの声」と三曲あった。少し多いかなという印象。MV集ではないのだから匙加減は必要ではある。しかし、劇中の売店でサントラを買っていく人が行列作ってて驚いた。

現実と日本伝統を模倣したファンタジーの調和が見事!

『君の名は。』では口噛み酒、『天気の子』では(空と地上を結ぶ)人柱。日本伝統を模倣としたファンタジーを物語に絡める独自性には目を見張る。今回も脱帽な着眼点だ。陽菜はいわゆる雨を止ませる力を引き換えに己の存在を犠牲にする「人身御供」の対象となってしまった。帆高の淡い恋心が募った矢先に、かけがえのない存在の喪失を少年は知る・・・・・・緩急の付け方が本当に上手い。涙なしでは語れないシーン。そこから、主要登場人物が総出で難題に立ち向かう展開も『君の名は。』を彷彿とさせるが、エンターテイメントに徹する脚本・展開が超大作として恥じないだけの重量感を与えている。

『天気の子』は生き辛さの中で、それでも生きるために信じるものの尊さとかけがえのなさを伝え、現代人が前を向くために世に贈られるべくして贈られた、希望の映画だった。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

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