映画レビュー

実はディスでなく埼玉愛の映画『翔んで埼玉』は理想の多虐ギャグだ!

(C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

なぜ埼玉は「ダサい」のか?
埼玉のイメージを下落させた真犯人はタモリに他ならない。「ダさいたま」という言葉は流行語にもなるくらい話題となった。80年代初頭、当時、流行していた派手派手しい衣装を身に纏った竹の子族に埼玉や千葉県出身者が多いことから、その容姿や(わざと都会人ぶる)背伸び感に懐疑的なタモリが「ダサい」と感じたことから「笑っていいとも」などで「ださいたま」と発言、一躍、埼玉はださいというネガティブ・イメージは全国区になった。

ま、埼玉出身者から言わせて頂くと、「ダさいたま」のイメージは脈々と受け継がれていることは身を以て実感している。大学進学時や、会社入社時に。埼玉以上にド田舎な地方出身の上京組(いわゆるエセ都会人)は口を揃えて埼玉を田舎だと馬鹿にする。海が無い、埼玉行くのは小旅行に等しい、冬は東京より気温が5度は低い、名所が何も無い、アーバンパークラインがださいなど、お決まりのディスりは幾度となく経験した。長野とか岐阜など地方出身のお前に言われたくねえんだよ!と内心思いながらも、そうなんですよぉ~と満面の笑みで返す。面倒臭い。

[PR]


けど、この『跳んで埼玉』を観て、そういった不快感は皆無に等しかった。「埼玉県民にはそこらの草でも食わしとけばいい」「埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になる」などと振り切ったディスが展開されるも、結局は埼玉愛を感じたからである。好きの反対は嫌いではなく無関心だと言われるように、敢えて埼玉をピックアップするのは愛である。
日本埼玉化計画を発表した際に使われたダムも春日部にある日本一大きな地下建造物だし、山田うどんの看板が映されながら映画の幕が閉じるように、徹底して埼玉色が出されていた。ショッピングモールの多さ、埼玉発祥のファミマの全国展開などにも触れ、きちんと埼玉文化が賞賛されていた。それを愛といわず何と言えようか。

こういう悪戯なディスは受け手の器が試される。想定外のヒットとなった本作であるが、特に埼玉県内での興収が高いそうだ。埼玉人の受けも良いらしい。実際に埼玉の某劇場で観たのだが、実際にご当地ネタで笑いが巻き起こっていたし。埼玉の反応は寛容だった。出身地で馬鹿にされるのは埼玉人の特権だもんねくらいドッシリ構えていたほうが良い。
本当に酷い描かれ方がされているのが群馬である。プテラノドンが飛んでたし、アマゾンの奥地のような描かれ方だった。茨城は日本の僻地扱いだし、千葉(野田あたり)なんかはヌーの大群が川を渡っているから電車が止まるなんて描かれ方も。これは飛び火でしかなく、おふざけの延長でしかない。

そして、埼玉とは無縁なビジュアル系バンド的「BL要素」を織り交ぜるカオスな設定も手伝ってかシュールさが際立っていたことで、独特な世界観の構築にも成功していた。GACKTに恋する男を二階堂ふみが演じていたから、ホモセクシャル的な空気感は中和されていた感じがするが、GACKTと伊勢谷友介の濃厚なキスには驚いた、プロだなぁ~と。それと、久々に京本政樹を見たが、年齢の割には肌艶がいいと思った。そのライバルが「月曜から夜更かし」でお馴染みのジャガーさんだったのもウケた。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. サザン40周年ライヴをLVで観る!~親近感こそサザン最大の魅力だと再確認する~
  2. 【ライヴレポ】ワンオク初の東京ドーム公演で見た“世界基準のバンドの風格”に圧倒さ…
  3. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…
  4. エルレ細美が「待った!」転売野放し・・・チケットだけじゃないライヴ物販問題を考え…
  5. KEYTALKの八木氏はナゼ愛されるのか?その無敵な愛嬌の謎と八木氏のドラムテク…

関連記事

  1. 映画レビュー

    実写版『ダンボ』大衆娯楽施設が悪者って・・・よく許可が降りたなと思う

    耳が大きいという外見的なハンディを負った小象は正しく『シザーハ…

  2. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】モアナと伝説の海

    冒険活劇として一級品だった。まるで『マッドマックス 怒りのデスロー…

  3. 映画レビュー

    『ジョーカー』現代社会の理不尽さと歪みを叩き出す衝撃作にして大傑作!

    初めて映画で恐怖を感じた。ホラー映画の娯楽テイストの恐怖で…

  4. 映画レビュー

    『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』こそ民生を理解していない

    薄っぺらい映画だった。奥田民生に憧れる理由は凄く共感できる。自由奔…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. 邦楽

    THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  2. ニュース

    【徹底考察】『カメラを止めるな!』は何故ここまでヒットしたのか?を真剣に妄想する…
  3. 日記

    アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  4. 邦楽

    毎年恒例の大発表!俺が勝手に選ぶ素晴らしき邦楽たち2016!
  5. 映画レビュー

    『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』の功績は神話をオリジナリティをもって進展させ…
PAGE TOP