映画レビュー

皮肉たっぷり!Mr.ビーン健在!『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』に報復絶倒だった!

(C) 2018 Universal Studios and Studiocanal SAS


Mr.ビーンが日本含め世界的に大流行したのが97年頃。当時、高校生だった僕は相当ハマった。嫌味っぽいが何故か愛くるしい変なおじさん。毒々しさに笑いを見出す手法は当時の片田舎で道徳的な高校生だった自分にとって、斬新過ぎたのだ。深夜にNHKで放映されていたのをVHSに録画してテープが擦り切れるくらい何度も見返していたっけなぁ(そんな俺も変な高校生ではあるが・・・・・・)。コント中は言葉を極力廃し、緻密なシナリオ展開と、アトキンソンによる顔芸や独特な動作が絶妙で、自分の中では衝撃だった。
ロンドン五輪の開会式では登場しただけで世界が大爆笑。そんな芸人、世界広しといえど彼しかいないだろう。あれを以て、ビーンは卒業するとのことで少し寂しい気もしていた矢先の『ジョニー・イングリッシュ』最新作である。

アトキンソン自身、実は医者並みの知能を有した天才であることは周知の事実であるが、実に計算尽くされた、けどベタで面白い笑いの連続で、高校時代にMr.ビーンで大笑いしていた時と同じ感性とテンションで大笑いできていた自分に安堵する。
1作目が03年、2作目が11年、そして満を持しての続編は18年。時代は否応にも様変わりする。すっかりデジタル化されたわけだが、デジタルの進化は過剰になり複雑怪奇になりすぎた。デジタルを駆使して世界を混乱に貶める悪役にアナログで対峙する逆転の発想が痛快だ! 

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時代を逆手に取った発想が見事である。誰しもデジタルの罠にハマっていくことを、一歩引いて嘲笑うアトキンソンの姿勢が観ていて気持ちが良い。風刺的なんだよね。アナログで対峙する割には失敗ばかり、そんなドジなオヤジでも最終的にはデジタルに勝っちゃうって究極のディスりだと思う。特にVRのシーンなんかは抱腹絶倒。あれこそアトキンソンの真骨頂だと思う。007のオマージュ?も忘れないが、007のように華麗に決めないところにも皮肉を感じるわけだ。

笑いは一種の毒を含んでいるから面白い。どこぞの芸能事務所の社長が社員に対して「面白いことしろ」と、鍋に顔を突っ込ませた事件があったが、ああいう胸糞悪いだけの悪ふざけにはしゃぐ感性も幼稚で愚かだし、熱湯風呂の影響なのかもしれないけど、実際にやってしまうのが下衆以下。
劇中でもイングリッシュは、競輪学生にミサイル撃ったり、老女や近眼などの人にも容赦ない仕打ちをする。コンプライアンスなんてどこ吹く風。そんな毒々しいビーンイズムは健在である。けど、それを良しとする寛容性が受け手にもあるところに、アトキンソンへの信頼を感じる。


芸人はいつまでケツ出せるかが勝負だと思っているが、アトキンソンまだまだ現役だってことが垣間見れたのが何よりも嬉しかった。7~8年周期で忘れた頃に続編が公開されるが、次は25年? いやいや流石に待てない。アトキンソンも老人になっちまう。是非とも、3~4年後にまたお目にかかりたい。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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