邦楽

桑田佳祐「SMILE~晴れ渡る空のように~」五輪が開催され混乱が続く今だからこそ改めてその凄さに気付く

@sasfannet

民放テレビ5系列114局による共同プロジェクト「一緒にやろう2020」の応援ソングとして桑田佳祐が楽曲を提供した「SMILE~晴れ渡る空のように~」が五輪中継で流れまくっている。1年半以上前に発表され、Youtubeでもフルで公開されているにも関わらず、先日の満を持しての配信リリースでもチャート首位を獲得するなど、キャリア43年でも衰えないアーティストパワーの凄みを実証している。



思えば、同曲が発表されたのは2020年1月下旬のことだった。民放全局が同番組を流すという初の試みに心躍ったのを覚えている。その頃は、まだ新型コロナが日本国内で確認されておらず、まさかこんな未来が待ち受けているとは誰しもが思っていない頃だった。東京五輪のために街がどんどん進化し、激動の時代の動きを感じていた頃、本当に新しい時代がやって来るんだという実感と共に聞いた「SMILE~晴れ渡る空のように~」は、冒頭から重厚なシンセやシーケンサーが現代的で、今までの桑田サウンドに無い表現で一気に引き込まれた。応援ソングとして振り切った希望の歌詞と、涙腺を刺激する勇ましくもどこか切ないメロディが壮大だった。

この「SMILE~晴れ渡る空のように~」もだが「希望の轍」や「波乗りジョニー」など、桑田佳祐の作曲には、希望を感じる歌詞なのに何故か切なくなる曲が多い、そこが桑田楽曲が人々の琴線に触れる最大の理由かも知れない。我々の中にくすぶるバイタリティを呼び起こすような、国民ソングとなる宿命を予め約束されたプレッシャーを見事にクリアしたような。ポップ・ソングが成すべき責任を果たし、新時代の到来に、東京五輪ムードを盛り上げるのに、十分過ぎるほどの説得性を持っていた。



奇しくも人類の歴史上類を見ない最悪のパンデミックの影響で、五輪は延期され、この楽曲だけ取り残される結果となった。しかし、それ以降も、未曽有の危機の中でも希望は失ってはいけないという拠り所としてテレビやラジオで流れ続けた。《愛情に満ちた神の魔法も/悪戯な運命(さだめ)にも/心折れないで/でなきゃ勝利は無いじゃん!!》という歌詞がまるでコロナを予言していたかのように現代人の心にピッタリ突き刺さる。桑田佳祐の楽曲が持つ普遍性という魔法には脱帽する。

そして、不安の中で開催された東京五輪。多くの国民は「五輪をやるなら」と緊急事態宣言を無視して行動し、感染者は過去最高を超える勢いで急増の一途を辿っている。新国立競技場の外では反対派が連日デモを行っている。世論では五輪賛成派と反対派がいがみ合っている。それは、コロナに対する意見の衝突、ワクチンの賛否の衝突も同様で、ますます日本は分断される一方だ。こんな時に音楽は何の力も発揮できない。しかし、《栄光に満ちた者の陰で/夢追う人達がいる/いつも側(そば)に居て/共にゴール目指して》とアスリートだけではなく、我々にも共通の目標を掲げるこの歌は、正しく分断時代の解決の糸口であり、困難を共に克服しようとする現代人へのメッセージソングとして存在して然るべき楽曲であるとも言えよう。希代のポップ・スター桑田佳祐は多分そんなことも願って、この曲に想いを込めたと信じたい。感染拡大が極力抑えられワクチン接種も順調に進み、五輪が安全なままに終わることを願ってやまない。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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