映画レビュー

【映画鑑賞日記】ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

(C) 2016 Twentieth Century Fox


ティム・バートンという映画監督をどういう作家性と位置付けるかにもよると思うが、個人的には「ちょっとダークなおとぎ話」の天才だと思っている。
最近では、糞退屈だった世紀のディズニー実写の大失敗作『アリス・イン・ワンダーランド』や、らしさを表現するために空回った感のある『ダーク・シャドウ』など、バートン自身が自分の<らしさ>を見失っていたように思える。彼は商業監督であると同時に、常人には達成することのできない奇抜な作風の作家なのだから。

原作(ランサム・リグズの小説「ハヤブサが守る家」)があるらしい物語は、まるでバートンに映画化されるために書かれたような奇抜な設定、且つキャラクターがたくさん出て来るもので、本作も空気より軽い少女、植物を操る幼女、生命のないものを動かす青年、後頭部に鮫のような第2の口がある幼女、体が透明の少年など、ホーンテッド・マンションのような、調度いいホラー感で、観ているだけでも十分に面白い。
彼らが、エバ・グリーン演じる、ミス・ペレグリンにかくまわれて生活しているところに人間世界ではパッとしない主人公の少年がやってくるところから、すったもんだが始まる。

バートンの映画には、この子供たち同様に、現実世界では虐げられる特異な者達の葛藤というものが一貫としてある。
これはバートンの普遍性であり、彼の映画は時代関係なくマイノリティへスポットを当ててるのだ。
なので、敵の怪物がやってきた時に、この虐げられ、弱い立場に押し込められていた特異な子供たちが、各々の特異性を十分に発揮して戦う様の爽快感と言ったらない。
こういうシーンを見ていると、通常でないからこその居場所の無い者への救済をバートンはしているように思える。結局は、どんな子供の特異性でも受け入れる寛容的なメッセージが、この映画には描かれているのだ。そう思うと、バートンが童話作家であることを再確認できたような気がする。久々にバートンらしい、バートンだからこそ達することの出来る作品に出会えた喜びを感じる。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 【フジから若者が消えた?】フェスの“聖地”フジロックが中高年化している問題。若者…
  2. 13年ぶりロッキンに出演したサザンが凄かった!ROCK IN JAPAN史上最大…
  3. THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  4. 年収50億のジョニー・デップが破産寸前な理由とは!~お金について考える
  5. ロッキンにサザン13年ぶりの降臨!昨年の桑田ソロに引き続きフェスに出る意味とは!…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ゴースト・イン・ザ・シェル

    囲碁の名人が人工知能に負けたというニュースを見て、人類はこのま…

  2. 映画レビュー

    『ミスター・ガラス』シャマラン監督流のこじんまりしたアクションが愛おしい

    全身の骨がガラスのように脆いサミュエル・L・ジャクソン、24人…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

    冒頭から巨大な海洋的な異性物が落下してきて、お馴染みの駄目駄目…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!

    ©2016劇場版「ゴースト・ジュウオウジャー」製作委員会 ©2016 …

  5. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】アーロと少年

    (C) 2016 Disney / Pixar. All Rights…

  6. 映画レビュー

    『search』を観た!控えめに言っても大傑作!ここ数年で1番の大傑作と評したい!

    控えめに言っても大傑作である。素晴らしいアイディア、完璧な映画だ!…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ハリウッド

    『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  2. ハリウッド

    年収50億のジョニー・デップが破産寸前な理由とは!~お金について考える
  3. 映画レビュー

    勝手に選ぶ今年良かった映画TOP10 2017大発表!
  4. ニュース

    遂にNYタイムズ誌まで?ガキ使の黒塗りメイク批判は行き過ぎだと思う理由!
  5. ライブレポート

    ロック・イン・ジャパン2017 2日目ライヴレポート
PAGE TOP