映画レビュー

【映画鑑賞日記】この世界の片隅に

konosekainokatasumini

 

日本という国が、この映画が口コミで好評を呼びヒットしてる国で良かったと思いました。
次第に戦争を語ることのできる戦争体験者のご年配の方々が少なくなってきた昨今、こういう映画で、戦時中の姿というものを語り紡いでいく重要性を感じずにはいられませんでした。
戦争体験者が少なくなり、安保法制も行われようとしている昨今に、この映画が誕生し、クラウドファンディングで徐々に拡大上映する事実の意義。
2016年に誕生して然るべき映画だと思いました。

この映画は『火垂るの墓』とは対極にポップさも併せ持った特異な戦争映画で、戦時中の日常に、哀しみばかりでなく、笑いを描きました。
個人的には、敵国軍の戦闘機が爆撃される様を、パステル調の絵の具で絵画のように表現したのは些か不謹慎さを感じましたが、そのくらい深刻な状況下でも、喜怒哀楽すべての感情があって豊かな日常を送ろうとしていたに違いない、それこそリアルなのかなと思ったんですね。戦時中だって民間人は笑ってて当然だと。
しかし、そのポップさが逆に、徐々に見えてくる戦争の実像、爆弾降ってきた時とのギャップで、余計に戦争の恐ろしさを感じることになります。
和やかな雰囲気や笑いから入って、最終的には戦争の恐怖を覚える、理不尽さと憤りを感じる・・・こういう唯一無二のリアルな戦争時の感情追体験ができた時点で脱帽です。
何気ない描写の中で急に、スクリーンが白くなる恐怖。言わずもがな、1945年8月6日のシーンなど。

高畑勲が『火垂るの墓』が反戦に繋がらないという旨について、こう言ったそうです。
「為政者が次なる戦争を始める時は『そういう目に遭わないために戦争をするのだ』と言うに決まっているからです。自衛のための戦争だ」と。「そのために、どういう経緯で戦争が起きたのかを知っている必要がある。」
正しくです。
『火垂る』も『この世界の片隅』もテイストが違うだけで同じことをやっています。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 実は失敗していたサザンの紅白!ユーミンとの奇跡の共演に助けられ拍手喝采!
  2. 13年ぶりロッキンに出演したサザンが凄かった!ROCK IN JAPAN史上最大…
  3. サンボマスター vs My Hair is Bad 男どアホウ夏の陣!日本ロック…
  4. ノエル兄貴「ロックが衰退したのは『フレンズ』が原因」と独自の分析を披露!
  5. 『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由

関連記事

  1. 映画レビュー

    マーベルの二番煎じとは言わせない!『ジャスティス・リーグ』世界中がこういうDC映画を待っていた!

    何でコレを最初から出来なかったのかと問いたくなった。これまでの『マ…

  2. 映画レビュー

    実写化史上最も成功していると言って過言でない『美女と野獣』に感動する

    まず私が小学生高学年の時に親にアニメのVHSを買って貰ったのが20…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ヒロイン失格

    (C) 2015 映画「ヒロイン失格」製作委員会 (C) 幸田もも子/…

  4. 映画レビュー

    【時間の無駄】スマホを落とす前に眠気に落ちそうな『スマホを落としただけなのに』

    映画を観に行っただけなのに時間を無駄にした。今や大半の現代人は…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ライブレポート

    安室奈美恵の引退ツアーを観る!世界中の賛美を彼女に贈りたい!
  2. 映画

    何故「バルス現象」は起きるのか?その理由は日本特有の国民性と風土にあった!
  3. ハリウッド

    【ジャスティス・リーグ公開記念】いま最もホットなハリウッド俳優“エズラ・ミラー”…
  4. ハリウッド

    『君の名は。』のハリウッド実写化が失敗すると断言したい理由
  5. ニュース

    遂にNYタイムズ誌まで?ガキ使の黒塗りメイク批判は行き過ぎだと思う理由!
PAGE TOP