本当の意味で音楽が好きと公言するなら、人気が出た後追いで応援するミーハー的な行動よりも、デビュー間もない頃から追いかけるアーティストがいてもおかしくないだろうが、個人的には、このTHE BAWDIESがそれに当たるだろう。彼らを知ったのは音楽専門チャンネルSPACESHOWER TV(通称・スペシャ)の番組だった。司会を務めるROYを若手の芸人と勘違いしていたのだが、どうやらバンドマンだと聴き、早速ネットで調べる。そして、驚く。オールディーズなロックンロール風味ながらも、何故か感じる新鮮味。これは大発見だとウキウキしたのを覚えている。
それから2009年、スペシャ主催の山梨で催される野外フェス「SWEET LOVE SHOWER」の会場でROYを目の前で見る。ステージじゃなく普通の道端で。「お~!ROYだぁ~!」と当然なったわけだが、当時は知名度も低く周囲は「誰?」状態で人もまばらにしか集まっていなかったのを覚えている。(関係ない話だが、同日、andumoriの小山田が普通に通路に座ってるのに気付かず、足を踏んでしまって「スミマセン」と言ったら、小山田と分かって焦って二度見したりと、今じゃ考えられないような、身近にロック・スターが会場中に普通にいた。)
そんなこんなでフェスにも出始め、次第にバンドが有名になっていき、大きくなるのを共に歩んで行った。初のロッキン出演時も、初のサマソニ出演時も、初の武道館公演も観たし、スペシャでのレギュラー番組「BAWDIES A GO!GO!」も一度も欠かさずに観て、DVDに保存したり、ずっと応援し続けてきた。そして、一時的にバンドから離れる(これもよくある話)。しかし、再度「やっぱ良い」と戻ってくる。そんなこんなを繰り返して10年が経過したらしい。もちろん、10年間の長い時間だ、特に彼らと同世代の20~30代を過ごしてきた者にとっては体調を崩したりとか、叔父になったりとか、日常生活でもいろいろと変化が起きる。リーマンショックがあったり、政権交代もあったり、東日本大震災があったりと、世の中も激動でもあった。
その中で変わらぬものが「音楽」であることを証明してくれたのがTHE BAWDIESだった。何年も前からメンバーたちは「おじいちゃんになるまで、好きな仲間と好きな音楽をやっていく」という発言をしていた。実際に10年経っても、変わらぬテンションで、それをやってのけた彼らに感動した。何も変わってないというのは凄いことだ。体型も、テンションの高さも、演奏力・MC等、その全てが楽しいところも。それらを、変わらぬ仲間で貫く美学を見せつけられたような気がした。
冒頭「SOUL MAN」が流れると同時に、一気に会場の温度が上がる。間髪入れずに「HOT DOG」「IT’S TOO LATE」「ROCK ME BABY」「JUST BE COOL」「NO WAY」代表曲が連投される。ベスト盤を出したこと、メジャー・デビュー10周年記念にも起因すると思うが、自分たちを総括するような選曲。余韻や哀愁に浸る暇もないほどに、盛り上がって行く観客席。10年前は自分を含めキッズ?だったオーディエンスが大人になって同じ場所で彼らのグルーヴにノッテいる光景は流石に感慨深さを覚えた。
この日もROYは、よく喋る。喋る。BAWDIESの良心ことJIMが「昔はさ、こんな一人『すべらない話』みたいな感じじゃなくて、皆で絡んでたよな」という強烈な指摘したり、「自分とJIMとMARCYが幼稚園からずっと一緒で、TAXMANだけが高校から一緒」と必ず紹介するROYに対して「そろそろ、そういうのやめない?」と愚痴るTAXMANなど、通常、壊れかけのレディオ並みにしゃべくりセブンなROYの不平不満が出たのも面白かった。それに結構ガチ目にショックを受けているROYもウケた。そして、相変わらず我関せずのクールなMARCY。
とにかく仲が良い。古典ロックを踏襲しながらも現代風に昇華させるという技は彼らにしか出来なかった。現に似たバンドが存在しない。ROYのハスキーなヴォーカルも日本のロック・シーンでは唯一無二だ。
バンドの産業化もそれはそれでいい、「武道館の次はアリーナだ!」なんて熱量も大切だ。でも、そういうのって栄枯盛衰で必ず何年後かに飽きがくるもの。けど、変な向上心さえも持たずに本当に好きな音楽をやっているTHE BAWDIESの姿はバンドマンの理想郷の姿に見える。変わらずに好きな仲間と好きな音楽を続ける――時が経てばたつほど円熟味を感じる、その言葉に、自分も彼らと一緒に爺になってもライヴハウスで音楽を楽しめる人生が送れたらいいなと思った。THE BAWDIESこそ真のロックンロールを継承し体現しているバンドだと思った。
2018/04/22(Sun)@新木場STUDIO COAST
(文・ROCKinNET.com編集部)
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