映画

【考察】『ミッドサマー』は、なぜ想定外のヒットを飛ばしながらも悪評高いのか?



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アリアスター監督の『ミッドサマー』が思わぬヒットを飛ばしている(コロナ禍で新作映画が公開延期になっているという理由もあるが)。想定通りの、二度と見たくないと断言したい胸クソ映画だったが、これまで多くのホラー映画を観てきた身としては、『SAW』とか『ハンニバル』のような全身の毛が逆立つほどのインパクトも何も無かった。自分の倫理観に無い気味悪い文化を見せつけられただけの苦行であり、おそらく来年には忘れてるほど内容も無かった。
各映画レビューサイトのクチコミには、「トラウマ映画」だとか、「カウンセリングが必要」「食欲が無くなる」「三日三晩寝れない」などという感想をチラホラ見かけたが、いちいちがオーバーである。

んな、たいしたことはない!

けど、思い起こせば今年のアカデミー賞のオープニングで、ジャネール・モネイが、この祝祭の衣装を纏って登場したり、大学の出し物で頭に花飾りを被るなど衣装を真似したり、人気ゲーム「あつまれ動物の森」でミッドサマーの世界観を作ろうとしたり、ミッドサマー現象がチラホラではあるが起こった。では、何故この『ミッドサマー』は話題となりつつも悪評が高いと相反する現象が起きたのか? 通常、悪評高ければ、継続的なヒットはしないもんで、少し考えたくなった。



日本の映画興収は、邦高洋低と言われて何年も経つ。
テレビ局が映画界に乗り出し、映画撮影所で無く漫画原作やアイドル映画のような、毒にも薬にもならない映画が増えた。その中でも血糊を多様した若手俳優の登竜門でしかない表面的なグロ映画もあるが(最近では『十二人の死にたい子供たち』とか『シグナル100』とか)、ここまで精神的に苦痛を与える映画は無い。

アリ・アスター監督と言えば、自慰行為を覚えた少年がいて、それを母親が責めたのだが、父親が「年頃の男の子は皆そうだ」と諭し、一家団欒になったかと思えば、その自慰のオカズが父親の写真だったことで家族に亀裂が生じていくという短編を撮る程の変質者である。我々の常識で語れるほどの良識的な人間じゃ無い。
そんな「映画秘宝」で特集されるような、常軌を逸した映画、本来は場末のミニシアターでひっそりと上映されるべき作品なのに、超娯楽作と大差ないほどの公開館数でやってしまったのが、そもそもの間違えだった。前作『ヘレディタリー/継承』がホラー映画として一部のぶっ飛んでる映画ファンから評判を得て、それに調子づいた配給が頑張って公開館数をMCU映画ばりに増やしちゃった。
で、予告も何となくアートチックで面白そうと観に行ったら、「思ってたのと全然ちゃ~う!」と、クチコミで変に話題となり、本来はこの手の映画のターゲットでは無い層が続々と騙されるという誤算があったと見る。本格的な変態映画の耐性はないんだ、日本人の特に若い世代は! 『進撃の巨人』『東京喰種』程度の漫画でさえグロイと言うのだから。



中には背伸びして、趣味の悪い者を受け入れてる俺って格好良くね?って人もいるかも知れないけど、この映画を受け入れるのは相応に変質者だ。←表面的には褒め言葉で言ってるけど、ごめん、ほぼ本心だ。
このように、怖いもの見たさで客を惹き付け、見事に一般層まで拡大させて、且つ嫌な思いをさせた配給の作戦勝ちこそ、悪評ながらもヒットするミッドサマー現象に他ならない。騙された方は迷惑な話ではあるが、今回でウンザリした方に朗報だ、次のアリ・アスター監督作は4時間にも及ぶ、コメディだそうだ。けど、この人の笑いのツボって絶対に一般的な良識を持つ我々とは異なるんだろうな、以後、気を付けて下さい。今回のヒットで公開館数がまた増えると思うから。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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