映画レビュー

【ご都合主義で旧作と繋がってない】『猿の惑星:聖戦記』は、なぜ失敗に終わったのか?

(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

※ネタバレ注意※
この記事には映画の内容に触れております。
まだ未鑑賞の方、内容を知りたくない方の閲覧はご遠慮願います。

そもそも1968年の第一作と繋がってない

映画単体の立ち位置をしっかりして欲しいとしか言いようがない。
「創世記」から始まった今回の新三部作が、1968年の第一作目『猿の惑星』に繋がる前日譚であると断言し、これ以降は続きが無いとするならば、この三作目は大失敗である。リブート版という逃げ道は許さない。あと、旧作の続編に登場した時系列がゴチャゴチャになる“パラレルワールド”という言い訳は問答無用だ。

20thCenturyFox/Photofest/MediaVastJapan

口の利けない少女ノバの幼少期や、旧作で主要の猿であったコーネリアの赤ん坊を登場させたのは、シリーズファンへのサービスとしても、前日譚としても及第点の要素になろうが、確か、地球で人間が滅んで、猿の惑星になった理由は“核戦争”の結果だったはずであり、それが描けていないことが、ひたすら混乱をきたす。

そもそもが、この映画では地球規模の戦いが描けていない。人間の文明が衰退したのは、猿ウイルスに因るものとして前作で説得されたけど、ひとつの種が滅んで、新たな種に支配される(言ってみれば恐竜から類人猿級の変化なわけで※進化ではない)、地球という星全体の問題であって、只事ではない。この映画のように、人間同士が争って、猿はあくまで争いに巻き込まれた付属品でしかなく、挙句の果てには、雪崩で人類滅亡などという、小さなスケールを“ご都合主義”で描いて済む話ではない。雑にも程がある。

猿の惑星になった理由「核戦争」はどこにいった?

前作のように徐々に人間vs猿の構図が如実に表面化してくるような、危機感の煽りも無い。そういう意味では、この三作目の期待は、前作が優れていたからに他ならないが、その期待を見事に裏切ったのが、この「聖戦記」だった。
そもそも、この作品の意義は、“どうして地球が猿の惑星になったか”を提示することだ。しかも、核戦争でそうなったという事前知識もある。
言ってみれば、旧作含めて、全関連作9作品中で最も知りたい部分である。それを、疎かにした罪は重い。
噂によれば、三部作でなく五部作になり、まだ続きがあると聞いているが、もし無ければ、1968年の第一作目には繋がっていない。ここは意地でも繋げるべきだ。でないと、わざわざ前日譚を制作した理由が成立しない。

解決すべき謎

20thCenturyFox/Photofest/MediaVastJapan

チャールトン・ヘストンが乗った宇宙船は西暦2673年に、猿の惑星(地球)に到着したとされている。もし、その宇宙船が本当に宇宙を彷徨っていたのだとすれば、約660年もの時差がある。その時差はどう処理するのか。コーネリアスがそんなに長生きするわけもない。
また、宇宙船は、地球から結局は地球に到着したわけで、その宇宙船はどういう事情で地球にカンバックしたのか。
その間に、地球で何が起き、核戦争にまで発展したのか、そもそも核戦争の設定は無視なのか・・・・・・依然としてハッキリしていないのである。

VFXに因る猿の再現は素晴らしかった

どうも、この監督は本作では脚本も手掛けたらしい。それが仇となった気がしている。前作「新世紀」が素晴らしかっただけに惜しいと言わざるを得ない。
一貫して新三部作で素晴らしかったのは、猿の実写化の再現である。「指輪物語」でゴラムを演じたCG名優のアンディ・サーキスのモーション・ピクチャー慣れの功名か、デジタル・テクノロジーの技術進歩と相まって、「猿の再現化、ここに極まり!」といった出来に大満足だった。三次元空間における人間の 動作に加え、表情の変化もデジタルデータとしてコンピューターに取り込むパフォーマンス・キャプチャーという手法により、大自然の中で違和感なく、シーザーが飛び回っていたのは圧巻だったし、「創世記」から数十年後の時の経過を、皺や白髪など細部まで拘って表現したのには唸るしか無い。

絶対に続編を!
これで終わりなど言語道断である!!!

(文・ROCKinNET.com)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。
引用の際はURLとリンク記述必須。


 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  2. 【速報レポ】My Hair is Badの初武道館公演を観る!椎木が提示した正し…
  3. 【フジから若者が消えた?】フェスの“聖地”フジロックが中高年化している問題。若者…
  4. RADWIMPS「HINOMARU」が物議!ポップ・ソングの右傾化に不自然さを感…
  5. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…

関連記事

  1. 映画レビュー

    『ジョーカー』現代社会の理不尽さと歪みを叩き出す衝撃作にして大傑作!

    初めて映画で恐怖を感じた。ホラー映画の娯楽テイストの恐怖で…

  2. 映画レビュー

    『LION ~25年目のただいま~』母を訪ねて三千里もGoogleがあればお茶の子さいさい?

    ベンジャミン・バトンをも凌駕する、なんとも数奇な人生である。幼少期…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】帝一の國

    漫画原作というか邦画そのものに面白みを感じない自分が絶賛したい…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ゴースト・イン・ザ・シェル

    囲碁の名人が人工知能に負けたというニュースを見て、人類はこのま…

  5. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】素晴らしきかな、人生

    やりたいことは『シックス・センス』だったのかと思うと脚本の妙を称え…

  6. 映画レビュー

    『ザ・プレデター』でプレデターはコミック化した

    誰もがプレデターがどれほど無敵で恐ろしい存在か知っている。…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. 映画

    『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている
  2. 音楽

    ジャスティン・ビーバー新曲のスペイン語が歌えず大ヒンシュクからのブーム化
  3. 日記

    アナタが行くヤツ、それ本当にフェス?フジロックが世界の最重要フェス3位に選出!
  4. ニュース

    今年2018年のサマソニがガラガラの異常事態!~その原因を探ってみた
  5. ハリウッド

    『マイティー・ソー バトルロイヤル』を楽しむための豆知識をちょこっとだけ紹介!
PAGE TOP