映画レビュー

【映画鑑賞日記】素晴らしきかな、人生

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC


やりたいことは『シックス・センス』だったのかと思うと脚本の妙を称えたくなりもするが、こういう人生肯定映画に果たしてそれが必要なのかと問われれば甚だ疑問にもなるが、妻である女性をまるで他人のように描いたのは、あざとかったし、真実味や説得性に欠けてしまう。
精神疾患で片付けてしまうには乱暴であるし、そもそも妻をも認識できないのは、もはや脳疾患のレベルになる。適応障害などの精神疾患は、症状として、現実逃避(特に仕事回避において)の傾向があり、会社や上司を非難し、社会参加への努力を放棄する傾向があるという。主人公が正しくこの状態だった。

この映画は、そんな辛い現実と対峙しない表現として、超常現象・精神現象を描いている。三人の役者が演じる「愛」「時間」「死」の抽象概念がウィルの目の前に現れる、それは、仕事仲間による救済行為であったが、この映画はそれらを否定した。非現実に心の傷の回復の道は無いとした。
結局は、主人公は現実を直視することで再度人生を歩み始めた。けど、傷は癒えてはいないだろう。厳しい選択である、けど、それも人生なのか。人生が持つビターな側面を描きながらも最終的にはすべてを肯定する、フランケル監督の優しさの表現なのだろう。

しかし、正直、人生の素晴らしさを歌い上げるにしては些か浅い気がした。『プラダを着た悪魔』で一躍脚光を浴びたフランケル監督は、この先オスカーを手に入れるかもしれない監督と言っていいだろう。彼は一貫として映画を通して人生肯定を行ってきた。そんな崇高なレベルにいる才人にしては、綿密なキャラクター描写・心理描写に劣っていた気がする。
それに、映画自体の時間も短かった、豪華俳優人のギャランティーでフィルム代が無くなったのだろうか?あくまで妄想でしかないが、実にリアリティがある(笑)主役のウィル・スミスに留まらず、E・ノートン、K・ウィンスレット、H・ミレン、K・ナイトレイなど、そんなに必要か?と思えるほどのスターが勢揃いだったからね。
ラストのどんでん返しなんか不要、それ以上に、人生賛歌に徹底して欲しかった。話も十分過ぎるほど素晴らしいものだったのだから。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 『ブラック・パンサー』を観た!社会風刺と娯楽性が融合したマーベルの新傑作が誕生し…
  2. テレ朝スーパー戦隊の放送時間変更の暴挙は吉と出るか?
  3. 半漁人の勝利!90回目のオスカー発表!
  4. 【速報ライヴレポ】ハリー・スタイルズ初ソロ来日公演を間近で観た!彼こそ時代の寵児…
  5. ポール東京ドーム初日を観た!

関連記事

  1. 映画レビュー

    マーベル史上最高傑作更新!『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』が面白すぎる!

    最近のコミックヒーローは大変だ。単純に悪者を倒して、めでた…

  2. 映画レビュー

    実写版『ダンボ』大衆娯楽施設が悪者って・・・よく許可が降りたなと思う

    耳が大きいという外見的なハンディを負った小象は正しく『シザーハ…

  3. 映画レビュー

    成功と反比例して深まる孤独『ロケットマン』で人間の幸せは何かを考える

    『ボヘミアン・ラプソディ』の成功で製作者たちが次に目を向けたの…

  4. 映画レビュー

    アメコミ映画には無い肉体を駆使するアクションに痺れる『ジョン・ウィック:チャプター2』

    前作は愛犬をチンピラに無残にも撃たれてしまったことから始まる大復讐…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ニュース

    原爆シャツ騒動でMステ出演中止になったBTSが犯した罪とは?
  2. 邦楽

    CDJ1819で大量発生した「あいみょん地蔵」で垣間見えた若いマナー違反客の現実…
  3. 映画レビュー

    『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬…
  4. 音楽

    【この夏も話題独占】ジャスティン・ビーバーの恋愛遍歴を振り返り!
  5. 映画レビュー

    実写化史上最も成功していると言って過言でない『美女と野獣』に感動する
PAGE TOP