映画レビュー

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』ファンタジー映画として少し違和感・・・

(C) 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C) J.K. Rowling


冒頭から個人的な事情を述べることに些か恐縮ではあるのだが、公私共に2018年は気苦労の多い年だった。そんな時に魔法世界に身を委ねる心地良さが、どれだけ快感かを味わいたくて、『ファンタスティック・ビースト』の続編に臨んだが、少し想像していたのとは違う趣で驚いた。

前作は完結したはずのハリポタの世界観を改めて体感できる喜びと、主人公が自分の鞄から逃げ出した魔法動物を探し出すチャーミングな話であることに加え、エズラ・ミラー演じる病み系少年クリーデンスを巡るミステリアスな展開と、黒い煙状のオブスキュラスが街を破壊する迫力あるアクション映画としても楽しめた。要は隙の無さが素晴らしかった。

しかし、この続編は様子が違う。
とにかく全体的にトーンが暗い! 

ハリポタの後半戦に近いような辛気臭さだ。『ファンタスティック・ビースト』プロデューサーのデヴィッド・ハイマンは、この傾向を「観客が求めるものではない」と明言しており、「原作がそうである以上はこうなんだ」と開き直りのような断言をしている。
ファンタジー映画に現実逃避や夢を求める者としては少し「思ってたのと違う」感がありありだが(もうちょっと能天気なファミリー映画でいいと思ってしまう)、どうも脚本が原作者のJ・K・ローリングが担当したらしく、彼女の政治観や善悪思想が如実に表れていたことが印象的だった。

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その是非は人それぞれだろうが、トランプ大統領に明確な不支持を表明しているローリングだけに、悪役のジョニー・デップが支持者の前で演説する様子が如何にも独裁者を描いているようで、今の世界情勢や政治的な批判姿勢を感じずにはいられない。


その際、デップはノーマジ(No Magic=人間)は違う種族であるがゆえ存在を否定するつもりもないが、あまりに傲慢であると批判し、戦争を起こす人間の姿や遂には原爆が大爆発するビジュアルを見せつける。確かに、戦争批判は正しい。人間の最たる愚かな行為である主張も正しい。だから、勧善懲悪とは言い難いところはあるものの(それが物語に深みを与えていると理解も出来るけども)、果たしてそれがファンタジーに必要であるかは意見が分かれるだろう。個人的には不要だと思う。こういう描写は、魔法というよりもリアルで、ローリングの主張過多を感じたから。誰も彼女に「NO」とは言えないのは理解できるけど・・・・・・
物語の起伏も無い分、ただでさえ上映時間の長いシリーズだけに娯楽作としての盛り上がりに欠けていた気がした。プロの脚本家が担当すべきだったかと思う。

けどね、よく考えれば、ジョニー・デップやジュード・ロウなどの大スターが惜しみも無く出ていることを考えれば画ヅラ的には贅沢な映画だと心底思う。ただ、デップもそこまで大暴れする訳じゃない。彼って本来なら数々のバートン作品のように、イっちゃってる演技を得意とするだけに演出面では、デップの無駄遣い感は否めない。


しかしながら、エディ・レッドメインの相変わらず母性本能をくすぐる(だろう?)草食系男子を見事に演じる空気感や、前作でもお馴染みの愛くるしい動物たちの意外な活躍など、前作を良きとする立場としても楽しめる場面は多くあるし、何より、ジュード・ロウが若き日のダンブルドアを演じ、お馴染みのハリポタのテーマ曲と共に古き時代のホグワーツ魔法魔術学校が出て来るサービス精神がたまらず、ニンマリであった。ただね、独特なキャラクター名が多いので、まどろっこしいぶっちゃけ。「誰が誰だっけ?」みたいなのは常にあった。ハリポタ時代からそうだが。
とりあえずは、今後の展開と続編に期待ですかね?

(文・ROCKinNET.com編集部)
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