映画レビュー

【時間の無駄】スマホを落とす前に眠気に落ちそうな『スマホを落としただけなのに』

(C) 2018映画「スマホを落としただけなのに」製作委員会


映画を観に行っただけなのに時間を無駄にした。
今や大半の現代人はスマホに支配されていると言っても過言ではない。個人情報はもちろん、クレジット番号などの機密情報、閲覧サイト履歴でどんな人間かも窺い知れる、もはや持ち主の分身のようだ。そんなスマホを落としたら困るよねという現代人ならではの不安を、少し大袈裟に描いたのが、この映画だった。原作は文学賞「このミステリーがすごい!」大賞で隠し玉作品に選ばれたというから、その賞自体がすごくもなんともないんだろう。

監督は『リング』で世界を恐怖に陥れた中田秀夫監督。「ジャパニーズ・ホラー」というブランド力も大きかったが、ハリウッド映画制作経験もある監督である。恐怖描写には定評があるはずだが、恐怖心を掻き立てられない、こんなもので喜ぶのはせいぜい10代の高校生までが限界だろう。それ以上の大人の鑑賞に耐え得るものではない。
そもそも、追い詰められた主人公(北川景子)が不明通知の着信に怯えて、家の外に誰かいるのか勘違いするまで疲弊した時に「誰!誰かそこにいるの?」なんて台詞、高校の学芸会じゃあるまいしプロなら書いちゃ駄目。かくれんぼしてて「誰かいる?」と聞いて「いる」と答える訳ないレベルの有り得ない台詞だからな。シナリオが駄目過ぎる。


確かに、個人情報の漏えいは深刻な問題ではあるものの、展開に現実味が微塵も無い。スマホを落としただけなのに事件に巻き込まれるなんて、火曜サスペンス程度のフィクションに終始している。なんとかスマホを落とした先に想像を絶する恐怖や意表性を描きたかったのだろうが、犯人とか先読みできるくらいのチープな展開で、片平なぎさならものの10分で解決できるだろう安直なミステリーだった。

そもそもご都合主義すぎるからだ。犯人が婚約者である田中圭の携帯から、北川景子を特定して、彼女のSNSの中身までを閲覧できることは通常ではあり得ない。それが、この映画では実現してしまう、パスワードが簡単だからだ。今時、誕生日や車のナンバーなど身近な数字をパスワードにしている人間いるか? それに、身に覚えのないメールを気に留めなかったり、見知らぬ人間からのSNSの申請を易々と受け入れる、主人公たちのITリテラシーの低さも都合がいい。

[PR]


確かに個人情報の漏えいは怖い。しかも、自分がスマホを落として、この映画の如く、頭がトチ狂った野郎に拾われるなんて確率は現実にも起こり得ることだろうが、その時にどう対処するかだ。クレジットカードがそうであるように、万が一の時の暴走を止めらえないものに対しては事後対策が重要。だって、そもそも、これって早々にスマホを解約しちゃえば良かったんじゃないの?なんて言ったら、映画にならないか(^皿^;)>

同じくネットを題材に取り上げた映画で『search』というアメリカ映画が今話題になっている。この映画は本当によく出来ていて、ネットでなければならない必然性が時代とマッチし、ネットだからこそ陥る功罪と、ネットだから辿り着く解決法と絶妙に描いていて、完璧な映画だった。同じネット環境の題材を扱ったものとして比較すれば、やはり日本映画の限界はこの程度か・・・・・・と、思わずにはいられない残念な映画だった。北川景子がいつ見ても美しいから終わりまで観れたけど、中途半端な女優がやってたら途中で席を立っていたと思う。また、おっさんをも愛し、今年2018年最も飛躍した役者・田中圭が格好良かっただけの映画だった。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. ロッキンにサザン13年ぶりの降臨!昨年の桑田ソロに引き続きフェスに出る意味とは!…
  2. 遂に日本国内興収100億円突破!『ボヘミアン・ラプソディ』はアカデミー賞を獲れる…
  3. ポール東京ドーム初日を観た!
  4. 初の武道館公演を控えるマイヘア椎木ってナゼ好かれるのか?彼の魅力を挙げてみる!
  5. マーベルが『ブラックパンサー』でヒーロー映画初のアカデミー作品賞を獲得するために…

関連記事

  1. 映画レビュー

    何故か『ヴェノム』が可愛く見える不可思議?最恐で最高のダーク・ヒーロー誕生!

    ヴェノムは既に2007年の『スパイダーマン3』に登場済みヴェノ…

  2. 映画レビュー

    『僕のワンダフル・ジャーニー』気持ち良い涙が流せた素敵な続編☆

    まさかの続編も号泣必至の心温まる感動作!続編は犬中心ではなく、…

  3. 映画レビュー

    誰もビートルズを知らない世界で抜群のセンスが光る傑作『イエスタデイ』

    プロのミュージシャンに憧れ目指した人なら誰しも思ったことがある発想…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

    ティム・バートンという映画監督をどういう作家性と位置付けるかにもよ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. ハリウッド

    『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  2. 邦楽

    勝手に選ぶ素晴らしい邦楽たちTOP10 2017
  3. ハリウッド

    【勝手に大予想】ダニエル・クレイグ007卒業で次のボンドは誰になる?
  4. ライブレポート

    【速報レポ】My Hair is Badの初武道館公演を観る!椎木が提示した正し…
  5. グラミー賞

    今年のグラミー賞で明確になった黒人音楽(RAP/HIPHOP)劣勢の事実と、ブル…
PAGE TOP