グラミー賞

今年のグラミー賞で明確になった黒人音楽(RAP/HIPHOP)劣勢の事実と、ブルーノが勝った理由を徹底分析!

出典:YOUTUBE



ケンドリック・ラマーがU2とコラボし、風刺の効いた衝撃的なパフォーマンスで幕を開けた今年のグラミー賞。ノミネートされた時から、その“黒人優位”な傾向が如実に表れ、アメリカの音楽界も劇的な変化を見せる、そんな歴史的な意味合いを持ったアワードになるだろうと思っていたが、実際はどうにもむず痒い結果で終わったように感じる。

ブルーノ圧勝!主要部門から独占状態!

まずは、ブルーノ・マーズが新人賞を除く主要部門を独占。ノミネートされていた全6部門すべてに於いて受賞、正に“ブルーノ・ナイト”となった。
しかし、これは今年最大の番狂わせでもあった。ほとんどの米音楽媒体や評論家たちは、ケンドリック・ラマーの傑作『DAMN.』が受賞すると予想していたからだ。もしくは、昨年の主要メディアが選出する「ベスト・アルバム」で、そのケンドリックと人気を二分していた、ロードの『Melodrama』も(「#metoo」など女性のステータス向上運動の後押しもあり)十分に最優秀アルバムを獲得する可能性があった。その二作品を押しのけてまで、ブルーノの『24K magic』が受賞するのは意外中の意外だった。




2017年はケンドリックとロードの一年だった!

先でも述べたように、昨年2017年に評価されたアルバムはケンドリックとロードだった。
米英の主要音楽メディアが昨年末に発表した「ベスト・アルバム」のランキングは下記の通り。

【米Rolling Stone】ケンドリック1位。ロード2位。ブルーノ圏外。
【米SPIN誌】   ケンドリック1位。ロード4位。ブルーノ圏外。
【英Q誌】     ケンドリック1位。ロード4位。ブルーノ圏外。
【英Uncut誌】   ケンドリック3位。ロード18位。ブルーノ圏外。
【英Mojo誌】    ケンドリック7位。ロード圏外。ブルーノ圏外。
【米ピッチフォーク】ケンドリック1位。ロード2位。ブルーノ圏外。
【英ガーディアン紙】ケンドリック2位。ロード4位。ブルーノ圏外。
【米Stereogum】 ケンドリック2位。ロード1位。ブルーノ圏外。
【Consequence Of Sound】ケンドリック2位。ロード1位。ブルーノ圏外。

上記のように各主要媒体が行った年末のベスト・アルバム選出で『DAMN.』を1位に選んだ媒体は、この他にも合計48もあり、ぶっちぎりのトップであること。2位でも28以上あったとのこと。米評論家たちの点数を平均化しても、1位はケンドリックで、2位はロードであった。
音楽界の最高権威と言われているグラミーだけが異なる評価を下した。
どうやら、音楽性や芸術性よりも、大衆受けR&Bに会員たちの票は偏向したようだ。
しかし同時に、グラミーが異質な賞であることを自ら証明しているような、そんな気がしている。

dヒッツ

2017年最も売れたのもケンドリックであった

このように、ほぼケンドリックとロードが独占した年だった。ブルーノは箸にも棒にも掛かってない。
また、ケンドリック・ラマーが所属するレーベルのTwitterによれば、ストリーミングも合わせた計算によると2017年のアルバム売り上げは以下の通りである(12月25日現在)。

Damn

1位 ケンドリック・ラマー『DAMN.』2,603,000
2位 エド・シーラン『÷』 2,448,000
3位 ドレイク『More Life』2,161,000
4位 テイラー・スウィフト『Reputation』1,897,000
5位 ブルーノ・マーズ『24K Magic』1,546,000

旬のブルーノ・マーズも売れているのも当然だが、それ以上にケンドリックは売れていた。大衆性という点でもケンドリックも該当するだろうが、彼の音楽は風刺であり、単なる大衆ポップではないことが重要なポイントである。音楽性と時代性に富んでいる作品であることを忘れてはならない。


視聴率低下に悩むグラミーの混迷が如実に見える

今から約10年前から、グラミーは視聴率低下に悩んでいた。しかし、それでも大衆の支持以上に、楽曲の芸術性や音楽性を重視することで自らの権威を守ってきた賞である。それでも、歯止めが効かない視聴率と若者からの関心度の低下を危惧し、次第にヒット曲をノミネートさせていくようになる。今回で言う「デスパシート」みたいなもんだ。しかし、その大衆に媚びた姿勢が変な方向に偏っている。

今や米国のヒット・チャートは、断然HIPHOPが強い。それでも、グラミーの投票はRAPやHIPHOPに集まらない。どこか保守的なのである。HIPHOPは風刺が根ざした反社会的な音楽である。グラミー会員の中にも、白人至上主義者は多くいるだろうし、共和党員も多いだろう。そうなると、票を独占するのは困難である。そういう意味においては、ブルーノは当たり障りないR&Bとして調度いいのではないか。しかも、大衆性も備えているし。

大衆の興味を引くにはブルーノが適していた?

何も、ブルーノ批判をしたいわけではない。むしろ、筆者は彼の大ファンであるが、あれだけ大衆ポップに手厳しかったグラミーが、こうも世間の評価から逸脱して、社会性に富んだケンドリックの『DAMN.』よりも、ブルーノのようなポップ性を優先したのに非常にむず痒い思いがする。昨年のビヨンセが受賞を逃した時と同じ感覚である。
この違和感たるや、むしろ、グラミー会員の多くが黒人音楽(RAP/HIPHOP)を評価対象として捉えていないことの証明をした結果なのではないかとさえ思えるのだ。白人じゃない有色人種のブルーノに受賞させても何の変革もされていない。HIPHOPやRAPなど黒人音楽そのものに光を当てないと意味はないではないか?

ケンドリックが最優秀アルバムのトロフィーを掲げた光景が幻に終わったことに、ある種の幻滅をせざるを得ない。こういうことを繰り返していると、グラミー賞そのものの権威が揺らいでいくのではないかと思うのだが・・・・・・




(文・川鍋良章)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。



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コメント

    • hana
    • 2018年 2月 15日

    いろいろと誤解されていると思います。

    まずアルバム「24k magic」は2016年11月18日に発売されています。メディアや批評家の評価は2016年に出てます。
    だから2017年のランキングにはあがってきません。

    売上に関しても、2017年1/1~12/31で区切ればケンドリックのほうが売上がかなり高く見えますが、
    「24k magic」は2016年11月18日発売です。

    ビルボードの年間チャートは12/1~11/30で区切るため、ビルボードのチャートだとケンドリック1位、ブルーノ2位
    https://www.billboard.com/charts/year-end/2017/top-billboard-200-albums
    売上の差はわずかです。

    またアルバムからのシングルカットは、「24k magic」400万超え、「That’s what I like」600万超えてます(アメリカで)
    ケンドリックは「Humble」がヒットしましたが、ブルーノには及びません。

    アルバム、シングル各チャートを総合したビルボードのアーティストランキングだと、ブルーノがケンドリックを上回ります
    https://www.billboard.com/charts/year-end/2017/top-artists
    2.Bruno Mars
    4.Kendrick Lamar

    それにロードの年なんかじゃありません。アルバムは批評家の評価こそかったけど、売れなかったし。
    1位をとったというだけで、すぐチャートから消えました。累計はさっぱり。

    対照的にブルーノ「24k magic」は1位こそ取っていませんが、6か月以上もTOP10内にとどまり続け累計を伸ばしました。
    長く売れ続けているほうが印象はいいですよね。

      • ROCKinNET.com編集部
      • 2018年 2月 16日

      hana様

      ROCKinNET.comをご覧頂きありがとうございます。
      また、コメント頂きましてありがとうございます。
      こういった音楽の議論が出来ることに喜びと感謝を申し上げます。

      そうですね、hanaさんがおっしゃってるように、ブルーノの最新作は大ヒットしました。私も即買いし、何百回も鬼リピしております!来日公演にも行きます!ブルーノは大好きです!しかしながら、グラミーの歴史をご覧頂ければ分かると思うのですが、グラミーは売上が高いことで評されるようなビルボードの賞ではありません。現に、売上には箸にも棒にも掛からない様な、2008年のハービー・ハンコック、2009年のロバート・プラントのジャズ作品などが獲っている背景があるように。
      また、ここで議論したいのは、ブルーノが劣っているとはひと言も言及してないことに加えて、作品の売上の問題ではなく、社会性や時代性、音楽のクオリティ(各人に因りますが)と、グラミーの黒人音楽(RAP&HIPHOP)が最高権威であるアルバム賞を獲れないことへの問題点であります。
      今世の中を騒がせている「#Metoo」問題を象徴するアーティストがロードだったと仮定すれば、ブラック・ライブズ・マターを象徴していたのはケンドリック・ラマーです。この両者が獲っても、シンボリックな意味を持つ状況だったと思われます。ブルーノは素晴らしい才能ですが、2018年のグラミー賞を受賞する必然性や意味合い、何かの象徴性があったかと言えば「ない」と感じました。実際、名前を呼ばれた瞬間は本人も困惑した表情でしたよね?批評面で見ても、各サイトのレビューを集積・数値化しているメタクリティックでは、ブルーノ・マーズ「24K Magic」(70点)、ロード「Melodrama」(91点)、ケンドリック・ラマー「DAMN.」(95点)である事実もあると。現に、今回の結果を受けて、大手有力誌ローリングストーン誌は「ブルーノ・マーズがケンドリック・ラマーを破ったことにショックを受けてはいけないワケ」という見出しで、優れたロックバンドが多く出現した年にでも、シナトラが獲ったような過去の事例を踏まえながら「グラミーが如何に世俗と掛け離れているか」と皮肉たっぷりに伝えていますが、私はこの意見に賛同できます。要は、個人の意見なので、何が正論ということは無いと思いますが、根源的な問題を解決しないと、グラミーも大物歌手のボイコットが続き、徐々に権威から価値のない物へと日本レコード大賞化しているので、グラミーを権威としたい私は問題視したまでなのです。ご理解ください。

      また、貴重なご意見を頂けたことには心より御礼申し上げます。音楽や映画のディスカッションをする場なので、光栄です。

    • hana
    • 2018年 2月 16日

    メディアや批評家の評価が一番高かったアルバムや曲が受賞すれば、グラミーの権威は保たれるのでしょうかね?

    それなら13,000人以上いるグラミー会員による投票は必要ないし
    メディアや批評家の評価が一番高かったアルバムや曲に自動的に賞をあげればいいだけの話です。
    映画賞にあるようにメディア・批評家協会賞みたいなの作ればいいんじゃないでしょうか。

    それにボイコット問題はたとえケンドリック・ラマーが受賞したことろで解決しません。

    今回は売上だけ見れば文句なく№1だったエド・シーランが主要賞にノミネートされなかったことを理由に
    ボイコットしました。
    テイラー・スイフトも「Look what you made me do」がノミネートされなかったのでボイコットしたと
    報道されてます。

    自分がノミネートされなければボイコット、自分が支持してる人が受賞できなければ抗議してボイコット
    それぞれが自分の主張を通そうとしてるだけです。

      • ROCKinNET.com編集部
      • 2018年 2月 16日

      ええ、だからグラミーって独自だねって記事なのです。
      何も攻撃してないし、目くじら立てる意見でもないとおもいますよ?

    • hana
    • 2018年 2月 16日

    アメリカで音楽賞「AMA」が開催 ブルーノ・マーズが7部門で受賞
    http://news.livedoor.com/article/detail/13920119/

    ブルーノ・マーズ、ソウル・トレイン・ミュージック・アワードを席巻
    http://top.tsite.jp/news/celebrity/o/37785496/index

    ブルーノはいろいろな音楽賞を受賞してますよ。別にグラミーだけが独自ということはありません。

      • ROCKinNET.com編集部
      • 2018年 2月 16日

      そうですね。ブルーノは素晴らしいアーティストです。私も大ファンです。CDも全て持ってますし、数年前の幕張メッセでの初公演、あれもチケット争奪戦になりましたが行きました。素晴らしいシンガーだと再確認できました。追加席でギリギリ獲れた感じです(笑)今回の来日公演も行きます、楽しみです。本当に素敵なアーティストだなと思ってます。
      ただ、この議論は本記事の真意と内容から少し逸脱した方向に向いているように思えます。当記事は、ブルーノが獲ったこと自体の疑問と批判ではなく、音楽界最高権威であるグラミー賞そのものが、その歴史を見ても、黒人音楽(RAPやHIPHOP)が主要部門から外れることへの議論を呈したものです。乱暴な言い方になりますが、ブルーノ云々はどうでも良く、主題は米国音楽界における人種間の評価の差を議論した内容となります。
      これにて、当方からの全回答とさせて頂きます。お好きなアーティストを批判された気がされたかもしれませんが、お読みになれば分かるとは思うのですが、ブルーノ批判は一切しておりません。よろしくお願い致します。

      また、このようなディスカッションの場を提供いただけましたhanaさんには心より感謝申し上げます。
      再来月のブルーノの来日公演は行かれますか?よろしければお会いしましょう!行かれるなら、一緒に楽しみましょう!
      今後とも、当サイトを何卒よろしくお願い致します。

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