映画レビュー

【映画鑑賞日記】ドクター・ストレンジ

(C) 2016MARVEL

いろんな映画を観ていると時に、その映像に驚愕する時がある。
なかなか、体験できないものではあるが、最初は小学生の時に見た『ターミネーター2』、中学生の時に見た『ジュラシック・パーク』、そして大学生の時に見た『インビジブル』(ケビン・ベーコンが透明人間を演じたホラー)と『ロード・オブ・ザ・リング』、そして社会人20代半ばの時に3D革命を受けた『アバター』・・・どんな映像にも目が肥えてしまった現代で、これらに並ぶ映像革命が私の中で起こった。

街中が立体パズルのように柔軟に変化する次元を超えた描写。
ビルが曲がり、重力に逆らったようにビルの側面を走る主人公。
現実で起こってるものでなく、幻想的な別次元でそれらがなされているという、魔術的リアリズムな作品なのである。だからと言って、フロイトの精神分析や無意識というような、個人の思想観に関連するようなものでもなく、伝承や神話や非合理性など、あくまで非現実的なものが作品の基軸で、超自然主義のようなオカルトとは違う点は、マーベルのメンツにかけて断言しておきたい。

マーベルの作品は物理主義の世界で成立している。『アベンジャーズ』で巨大な怪物船が出て来たように、時には物質の大きさの迫力を表現するように。がゆえに、街中を壊すこともあり得た。それが『シヴィル・ウォー』で問題視されるわけだが(笑)

しかし、この『ドクター・ストレンジ』はそれらの次元と異なる。先でも言ったように幻想的、魔術的、自然主義なのである。
主人公の天才脳外科医師であるカンバーバッチが不慮の事故で両手の機能を失うが、それを治すために藁をも掴む思いで、ベトナムにおもむく、そこで教え込まれるのは、<手の治療=神経を繋ぎ、細胞を修復するということでなく、治ると思うこと、時間や自然を受け入れる東洋思想めいたもの>だった。なんとなくヨガの思想に似てるなと思った。
その発想をマーベルがやるのだから面白い。科学優先の医師に、自然主義と言う相反する設定を織り込んで、調和させるうまさ。いろんな切り口でヒーローを誕生させ、観客を飽きさせない、流石はマーベルである。

ただ、ラストが些か漫画過ぎたのが幻滅だった。
最後の怪物の造形が、あまりにアニメ過ぎたのもあるが、『アベンジャーズ』が巨大な怪物船を力で持って倒したように、そこは単純で良かった。四次元的なことを云々言っていたけど、ああいう理屈はいらない、マーベルなので。にせよ、今後アベンジャーズとの絡みも期待したいし、続編も楽しみな映画であることには変わらない。是非とも、久々にマーベルの新シリーズでオススメな映画だと思う。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. マーベルが『ブラックパンサー』でヒーロー映画初のアカデミー作品賞を獲得するために…
  2. ELLEGARDEN復活ライヴを観る!10年の活動休止の先にあった変わらない尊さ…
  3. 【速報レポ】My Hair is Badの初武道館公演を観る!椎木が提示した正し…
  4. 「時代遅れのRock’nRoll Band」を聴く
  5. 『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】パッセンジャー

    誰かに求められること、他人を意識した言動が意味を成す。対象があ…

  2. 映画レビュー

    先進国ニッポンの歪みを見事にえぐった今観るべき傑作『万引き家族』

    是枝監督作品は優しさに満ち溢れている。絆や愛情とは何かという根本テ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. 映画レビュー

    『ブラック・パンサー』を観た!社会風刺と娯楽性が融合したマーベルの新傑作が誕生し…
  2. ライブレポート

    ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 4日目ライヴレポート
  3. 映画レビュー

    『アベンジャーズ/エンドゲーム』 映画史に残る大傑作にして娯楽の頂点だ!
  4. テレビ・芸能人

    テレ朝スーパー戦隊の放送時間変更の暴挙は吉と出るか?
  5. ハリウッド

    アベンジャーズ最新作がコナンに負けた?世界的な流行をも度外視する日本鎖国文化は奇…
PAGE TOP